幕間 遺燼祭壇
教会に戻ると、朔が青い蛍のそばに立っていた。
彼女は手を伸ばして触れてみたが、蛍は揺れて、飛び去った。
「やっぱり入れないみたい。」彼女は小さく言った。
「たぶん祭壇は生きてる人を入れないんだろう。」と俺。
朔は何も言わず、蛍が飛び去った方を見ていた。
しばらくして、彼女が振り返った。
「リリィ、ちょっと試させてくれますか?」
「え……いいよ。」
俺は【コロティアの遺燼】を手渡した。
朔が受け取ったが、青い蛍はやはり反応しなかった。空中に止まったまま、微動だにしない。
「ダメみたいね。」
彼女は遺燼を返した。
「私は教会を安定させに戻ります。」
【すごく落ち込んでるみたい……でも何て言っていいかわからない。】
「うん。よろしく頼む。」
——
遺燼祭壇に入り、二つ目の空き場所に【コロティアの遺燼】を置いた。
木の部屋が突然広がった。
フラグはぼんやりしていたが、壁が動いたので意識が戻った。
彼女の斜め向かいに、もう一つベッドが増えていた。
【個室とかにしてくれないかな。みんな一緒に寝るのかよ?】
ベッドのそばで、コロティアがゆっくりと姿を現した。少し緊張した様子で立っている。
「おもちゃちゃん、また誰か連れてきたの……」
フラグが声をかけてきた。
「別の世界の英雄だよ。あなたと同じで。」
コロティアは私たちを見て、慌てて手話をした。
「みなさん……初めまして……コロティアです……」
「つまらない、何をそんなに手を動かしてるの?」
フラグはやっぱり辛辣だった。
コロティアは肩を縮め、鉄の枠をマフラーの奥に隠した。
「彼女はコロティア。これから仲良くしてね。」
すぐにフラグに言った。
フラグの視線がコロティアの首の鉄枠に落ちる——もう真新しいものになっていた。
「喋れないの? それはいいね。少なくとも騒がしくはない。」
「私……迷惑は……かけません……」
コロティアは慌てて手話した。
「はいはい。お前の手話はわからない。私はフラグって呼べばいい。」
「フラグ……覚えた……」
コロティアは本当に「フラグ」の三文字を手話で示した。
「友達作るのとか、めんどくさい。」
フラグはもう相手にするのをやめて、ぼんやりし始めた。
「コロティア、ちゃんと紹介するね。私、リリィっていうの。」
「耳……もう……大丈夫ですか?」
彼女は俺の耳を見ている。
「うん、大丈夫だよ。」
「ありがとう……あなたは……自分を顧みずに……近づいてくれた……お礼をあげたい……もっと近くに……来てくれますか?」
「もちろん。」
近づく。
コロティアはそっと俺を抱き上げた——
え?
ええええええ?!
顔に……何の感触? 頬、ちゅっされた?! こんなインタラクションありなのか?!
【—システム通知:好感度——コロティア、現在の好感度:100%。—】
【助けただけでもう半分? ちょっと助けただけなのに……】
コロティアは笑って、俺を地面に下ろした。
もう立っていられなくて、その場に座り込んだ。
「これは……とても役に立つものです……どうぞ受け取ってください……」
【—システム通知:絶品魔法——腐蝕術を獲得しました。敵に命中させると、75%の防御力を15秒間低下させます。—】
【この効果、すごすぎるだろ……】
「ありがとう、コロティア。大事に使うよ。」
でも顔はまだ熱くて、足はまだふらふらしてる。
フラグが立ち上がって、俺の前に来た。
見下ろしてくるその目は、ものすごく嫌そうだった。
それから俺の胸に何かを放り投げた。
「これ何?」
拾い上げる。
「まあ装飾品だ。暇だったから、力で彫ってみた。」
高く掲げて見る。
一輪の花。とても綺麗だった。
【—システム通知:フラグの飾り。武器に装着すると、「砕」効果が35%上昇します。—】
【水晶の大剣がまだあればな……これがあればもうチート武器だよな。】
「綺麗に……彫れてますね……」
コロティアも近づいてきた。
「褒め言葉は結構。」
フラグは顔をそらした。
「久しぶりに花を見て、記憶の中にあったのをひとつ適当に作っただけ。」
【そういえば……フラグ、どうしてコロティアが自分を褒めてるってわかったんだ? 手話わかんないって言ってなかったか?】
「フラグ、お前……コロティアの言ってることわかるの?」
「つまらない。」
【でも——飾りを受け取ったら、フラグの好感度が50%まで上がってた……】
「ありがとう、フラグ。大事にするよ。」
「いいから、さっさと出てけ。私たちの休憩を邪魔しないで。」
「じゃあ行くね。また来るよ。」
「またね……」
コロティアは手を振って、体をベッドの方に少し縮めた。
フラグはもうベッドに寝転がり、こっちに背を向けている。眠っているようだった。
——
祭壇を出ると、朔が篝火のそばで待っていた。
「片付いたの?」
「うん。」
「リリィ……その顔、何かついてますよ?」
触ってみた。コロティアにキスされたところだ。どうも……何か残ってる。
【まさかキスマークじゃないよな?!】
慌てて拭いてみた。でも落ちない。錆びた感覚が残っている。
「これは……コロティアがくれた魔法なんだ。」
「魔法? 符文学の焼印ですか?」
「そうそう。感謝の気持ちでくれたんだ。」
「そうですか……コロティア様も優しい方ですね。ただ、その焼印……頬にあるのが、ちょっと珍しいですけど。」
「朔は何に見える?」
【絶対にキスマークって言わないでくれ……】
「ちょっと笑顔みたいですね。でもリリィに似合ってますよ。」
「おう……笑顔か。それは……よかった。」
【はあ……キスマークに見えなくてよかった。びっくりした。】




