魔族たち
鮫島さんをつれて集落に戻ると、入り口のところまで来ていたリィルや福原さんと鉢合わせになった。
「見つかったのですね、よかったです」
胸をなでおろしたリィルの、頭にとぐろを巻く角を見て、鮫島さんは頬をげっそりとさせる。
「重傷だな」と思いつつも、ぼくは鮫島さんの頭をつかんで、下げさせる。
「ご迷惑をかけました、だろ」
「う、うぐっ……ご、ご迷惑をおかけしました……」
ぼくらがここで暮らしていけること。食べることや眠る場所に困らないですむことの意味は重々承知したようで、彼女はぼくに対するよりも素直に謝罪した。
「いえ、我々には何ひとつ迷惑はかかっていませんから。頭を上げてください」
「そのわりには……にらまれている気がするんだけど」
朝の営みを開始し、忙しなく動きまわる魔族たち。
その中には、こちらに奇異の視線をむける者もいる。とくに、リザードマン系が多い。
居心地悪い気分で集落の中を横切っていくと、その中の一匹が寄ってきた。
「どうしましたか、ラーゴ」
リィルが尋ねる。
リザードマンはどいつもこいつも同じ顔に見えるので気がつかなかったが、昨夜、ぼくを支持するといってくれたラーゴらしい。
魔王になる以上、こいつらの区別もつけられるようにならないといけないわけか……。
これは骨が折れそうだ。
「先ほドの、あのグレートドラゴンは……」
「ラピスのスキルによるものだが、それがどうかしたか?」
「やはり……」と竜人族のリーダーは肩をすくめた。
「竜人族にとって、グレートドラゴンは英雄デあり、崇拝と畏怖の対象デス。その姿を怨敵タるスライムが使っタことに、みなは怒りを覚えているのデス」
なるほど、そういう可能性もあるのか……。
「竜人族は信心深い種族ダ。フォローはしておくが、今のデ、カナト殿に敵愾心を抱いた仲間は多いダろう」
「そうか。面倒をかけてしまってすまない……ラーゴも、傷ついたのか?」
竜人族の長は、首を左右にふった。
「いや、むしろワタシは感動しタ。これカらの魔王は、グレートドラゴンさえも従える存在デなければならないのダカら」
彼らが信奉していた巨大竜は、スライムに敗れたのだろう。
その時のことを思い出してか、ラーゴの口調は重かった。
「人間ドもと争っていタころの魔族軍は離合集散を繰り返していタ。グレートドラゴンは魔王にも劣らぬ存在と信じ、竜人族は時に人間に与して王に反旗を翻すことがあっタほドダ……しカし、これカらはカナト殿のもとに、まとまらねばならない」
「前途多難だな……」
「これだけ多種多様の魔族が一カ所に集まっていること自体、本来は異例のことですからね。魔族は、ずっとそれぞれの土地で、お互いの縄張りを守って暮らしていましたから」
リィルは深いため息をついた。
その横顔には、これまでにあったであろう様々な苦労が垣間見えた。
「流れ流れてこの集落にたどり着いたのは三年前ですが、この一、二年でようやく、協力してやっていくためには、妥協することも必要だとおぼえてくれました」
「リィルちゃんも頑張ったんだねぇ」
「ですが、カナト殿という希望に出会えて、すべて報われた気分ですよ」
銀髪の少女はぼくの手を握って、朗らかに笑った。
「全力でカナト殿をサポートします。何卒、お力をお貸しください」
もちろん、そのつもりだ。
単細胞どもが幅を利かせる世の中を終わらせる。
そこまでの最短の道を摸索する。
利用できるものは、なんでも使おう。
「朝食の前に、カナト殿をみなに紹介しようと思います。挨拶の言葉など、用意しますか?」
さっそくといった調子で、リィルは張り切っていた。
「いや、ぼくの言葉で話そう。リィルのやり方をぼくが真似しても、うまくいかないだろう」
古河奏人のスキル……11個




