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毒舌少女のために帰宅部辞めました  作者: 水埜アテルイ
第2章 あなたに囁く少女たちの物語
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どうすればいい

 俺は生徒会に興味を持ったことはない。


 どこに魅力を感じて挙手するのだろう。晒し者になりたいのだろうか。

 とにかく生徒会は眼中にない。

 彼らは本当に学校を変えれると思って入るのか? それとも内申点の為か? 後者なら計画的で尊敬できるが正直なところ前者の場合は夢見がちだ。

 生徒会長になれたからといって特別な権力を得るわけでもなく、改革をできるわけでもない。あくまで本当に些細なことに変更を加えるだけだ。教師たちの支配下から抜け出すことはできないし、試みても検閲のようにストップがかかる。


 という俺の考えを鶴に伝えたらどんな反応をするのか興味がある。意地悪する気はないが明らかに面倒だし目立ちたがり屋しかやりたくなさそうな委員会を選んだ理由を知りたいのだ。

 この好奇心は抑えられない。出そう。


「鶴ってなんで生徒会入ったんだ?」

「立候補させられたから。他にいなくてね。会長なんて絶対やりたくないから書記係での立候補という条件でのんだ。結果として本当に書記係になっちゃった」

「なる気なかったのか。意外だ」

「みんなよく言うよ。学力だけを基準にして生徒会に相応しいか相応しくないかを決めるとかはっきり言って馬鹿だと思う。どうするのよ、私が精神異常者で快楽殺人マニアだったら。人の中身を知ろうともせずに数値で推し量るなんて、評価される側も不快。もっと心に触れてこいって言いたいね」


 面白いことを喋るんだなと思った。流石学年トップ、と言ったら嫌な顔されるのかな?


「やる気満々で生徒会に入ったのかと思ってた」

「もちろん意気揚々と立候補する人もいるよ。現生徒会長がその例」


 俺はアリナにちゃちゃを入れてみた。


「アリナ。生徒会に立候補しないのか?」

「私が当選したら一つの国ができるわ」

「独裁だろうなぁ……」

「見せしめにあんたを吊るすところから始まるの。あんたの血で国境を引くの」

「恐怖政治はやめなさい」


 鶴に向き直る。


「本題だ。鶴は俺たちに何を手伝って欲しいんだ?」

「文化祭に向けて各部活動の情報伝達をメインにやってもらって、幹部的役割を担ってもらうと思ってる」


 そういやそんな季節か。部活に入っていない俺はクラスの手伝いをしていたくらいで、基本的に客側の立ち位置だった。まさか企画の中枢に入り込めだなんて。


「文化祭実行委員に加われっていう隠語か?」

「違う違う。生徒会と文化祭実行委員会って独立してるの。私は生徒会に彗とアリナさんの手を借りたいわけで実行委員会とは無縁だよ。生徒会では動きにくい部分を二人に動いてほしいの」

「なるほどな。大凡想像はできる。元生徒会に所属していたというアリナ先生はどうですかね」

「別に構わないわ」


 アリナの承諾を得たということで、


「手伝うことにしよう」

「わー! ありがとう! よろしくね!」


 鶴は俺の左手とアリナの右手を握って笑顔を振りまいた。

 中々でかい任務になりそうだ。





 鶴が薔薇園を訪れてから二日後。

 鶴からお呼び出しが来た。


 真琴と昼飯を食っていると鶴が来て「放課後アリナさんを連れて生徒会に来てね」とお願いされた。

 傍でそれを聞いていた真琴は「彗、次は何を企んでるんだ? 生徒会に潜り込んで何をやらかすつもりだ!?」と迫真の台詞を俺にぶつけた。彼は俺とアリナが組んで恐ろしいことを企んでいると思っているらしく、最近俺を気にかけている。

 ありがたい気遣いだが安心してほしいものだ。俺は紳士だし、正義感に溢れている。アリナは――知りません。


 そんなわけで真琴との食事会を終えた後、アリナのクラスに赴き、事を伝えた。相変わらず興味なさそうに「そ」と返事をする。こんな態度だが嘘をついたり約束を破るようなやつではないのでしつこく確認を取るようなことはしなかった。

 

 振り向きざまに白奈と目が合ってしまった。

 

 実は私も彗が好きでした――


 あの時の言葉が蘇ってくる。何秒間かはわからない。俺は鉛みたいに硬直した。

 どうしよう、何か言わなきゃ。そう言い聞かせて何かが喉から出かかるもすぐ引っ込んだ。


「ちょっとあんた。いつまで銅像化してるつもり?」


 アリナの一言で現実が戻る。


「いやなんでもない。放課後な」


 ダメだ。気まずい。白奈と喋れる自信がない。あれ以来一度も喋ってないのだ。

 そろそろ焦れったいから一歩踏み出そうとはしている。でもなんて言えばいいかわからない。

 どうすりゃいいんだ。


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【リメイク版・毒舌少女のために帰宅部辞めました】
わたしの愛した彗星

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JKマンガ家の津布楽さんは俺がいないとラブコメが描けない

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