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毒舌少女のために帰宅部辞めました  作者: 水埜アテルイ
第1章 あなたの時間の物語
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帰宅部所属情報工作員

 今日は新聞部の手伝いとなった。

 新聞部の人手不足は深刻で部員が5人という状態である。彼らは部活の性質上情報をとても欲しているらしい。校内の委員会や部活動の情報、流行り物、行事、などなどあらゆる情報を発信するのが彼らの役目だ。

 そんな彼らの情報収集に欠かせない「人員」が不足しているため彼らの記事に募集要項が端的に記載されていた。


『新聞部にネタをください! もしくは人!』


 本当に偶然廊下に貼られていた新聞部のチラシにそう書かれていた。

 特にアリナ更生プロジェクトに現在混みいった予定はないため俺は新聞部に乗り込むことにした。

 放課後、薔薇園に来たアリナに早速「新聞部に行くぞ」と声をかけて二人で向かった。


「とうとうマスコミに自分の醜態を晒すことを決意したのね」

「新聞部の情報発信能力は校内だけだ。仮に俺がエゲツないアダルトサイト閲覧がバレたとして新聞を発行しようが社会的には死なない。なぜかわかるか?」

「学校内でしか広まらないからでしょ」

「はい違います。正解は『男子高校生なら普通なのだから別段驚くことない』だからでした。このご時世、スマホの閲覧履歴が美しい奴なんかいない」


 そうどや顔で言った。そして俺は腹を蹴られた。弁当が出てくるところだった。本当に酷い話だ。俺はその衝撃で全内臓が縮こまるのを感じ、廊下に倒れこんだ。

 意識が霧のように薄れる。瞼が俺の視界の一部を黒く染め上げ、暗闇へと導こうとする。

 これが、死か。恐怖はなかった。ただひたすら息を吸うたびに気持ちがいい。最後に見えたのはアリナのゴキブリでも見るかのような目つき。そうして俺は目を閉じた。


「起きなさい。恥を知りなさい」


 勿論、俺は死なない。殺人要素はR18指定だからな。


 新聞部に到着し、俺は丁寧にノックをして許可をもらってから入室した。


「えーっと、人手が足りないという事で新聞部に来たんですが」


 とある新聞部の男子生徒がぱっと明るい表情で立ち上がる。


「え、ホント!? 書いたかいがあったー!」


 両手を挙げて天を仰ぐ彼は、戦争映画のとある表紙のようだった。ベトナム戦争のアレだ。

 そして俺はアリナを召喚した。


「あとこいつも協力する。よろしく」


 案の定全員目を丸くして驚いていた。この反応はもう見慣れたので俺は言葉を続けた。


「で、新聞部はどういった手助けが必要なんだ?」

 

 新聞部部長、麻倉斗真は意気揚々と答えた。


「新聞部は見ての通り、部員が少ない。だから情報を持ってくる人が必要なんだ! つまりネタとかインタビューとかをしてほしいんだ!」

「俺らでも役に立てそうか?」

「大丈夫。誰でもできるよ!」

「よかった。だとよ、アリナ」

「そ」

「じゃあ、説明するぞ!」


 麻倉斗真は俺らにしてほしいことを語り始めた。

 まず部活動へのインタビュー。オープンスクールが迫っているということで、訪問する人たち向けに校内の部活動を紹介する記事を書きたいそうだ。でも少ない部員の中、たくさんの部活動を訪れて一つ一つ記事にするとなると相当大変な作業になるという。そのためインタビューを手伝ってほしいということだ。

 次に、校内の流行り物。

 急ぎではないがローカルニュース的なジャンルとして掲載するために校内の流行等を見つけて来てほしいのだそうだ。

 最後に憧れる職業。受験を控えている、もしくは就職活動中の人が将来の道を広げるきっかけとなるような意味合いで、みんなの憧れの職をランキング形式で集計したいらしい。

 この3つを俺たちに要望した。当然彼ら新聞部も動く。補助者として俺たちは動くことになった。


「なるほど。大体わかった。期限とかはあるか?」

「うーん。まぁ2週間くらいかな? この期間中にちょこちょこクラスメイトでもいいから訊いてくれると助かる! 都合とか大丈夫?」

「問題ないぞ。俺とアリナは帰宅部だからな」

「一緒にしないで。豚の餌の分際で喋るんじゃないわよ」

「これから豚肉を食うときは俺を思い浮かべろ。きっと感謝する」

「やば、吐きそう」


 無表情で吐きそうとか言われても困る。いつものくだらないテンポの会話だった。そのやりとりを見て斗真は驚いた顔をする。

 斗真のような吃驚顔はこれまで何度も見てきた。アリナが人と喋ること自体極レアだから通常の反応と言えるだろう。そしてその女と喋る俺は何者なのかという噂もちらっと浮上しているとかないとか。ええそうです、ただの紳士です。


 そんなわけで俺たちは新聞部の過去の記事を読ませてもらい、参考にできるところはメモしてどう訊けばよいのか考えた。

 隣のアリナは何も考えていないように見えたので俺は「おい、魂が抜けてるぞ」とちょっかいを出した。案の定、足のつま先を思いっきり踏まれた。このゴリラ、俺を複雑骨折にさせたいのか?


 大まかに決めたところで俺は斗真に報告した。


「大体だけど質問等は考えた。あとは新聞部に提出すればいいんだな?」

「そうそう。記事は僕らで書くからネタを頼む! ホント助かるよ! ありがとう!」


 そんな気持ちのいい感謝の意を受け止めて、俺らは明日から動くことにした。アリナも当然やるが、こいつが自ら話しかけるようには到底思えないので、放課後はバディ行動することにしよう。

 明日は不審者の如く話しかけまくろう。


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【リメイク版・毒舌少女のために帰宅部辞めました】
わたしの愛した彗星

【書籍化作品】
JKマンガ家の津布楽さんは俺がいないとラブコメが描けない

水埜アテルイ Twitter

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