願い
「俺の事覚えてるかっ!?」
目の前の鎧を着込んだ少女の肩を掴んで、叫ぶように俺は言った。
正直、こんな所であのときの少女に会えると思わなかった俺はかなり興奮した。
まわりの状況などお構いなしに少女の肩を掴んで早口でまくし立てた。
「覚えてるか? 十年以上前の事だけど、俺は森でアンタに助けられたんだ!」
「えっ? も、森で? 貴方を助けた?」
しかし、突然の事についていけない少女は困惑していた。
だが、俺はそんなこと無視して、俺がここに来た理由を目の前の少女に話した。
「そうだ! 森で俺はアンタに助けられたんだ! 俺はその時の恩を返したい! 何か願いはないか? 何でも言ってくれ! 必ず叶えてやる!」
目の前の少女に向かって力強い声で、そう宣言した。
言葉に嘘はない。
俺はこの少女に恩を返すためになんでもするつもりだった。
俺は少女の返事を待った。
私は動揺していた。
目の前の男性が、喧嘩していたギルドのメンバーを素手で次々と気絶させた事もそうだが、いきなり自分の被ってきた兜をとった事にも驚いた。
そして、なによりも驚いたのは、先ほどの言葉だ。
なんでも自分が目の前の男性を十年以上前に助けた恩人で、目の前の彼はその恩を私に返したいらしい。
胡散臭い話だと思う。
実際、私には森で人を助けた記憶などないし、目の前の男性にも見覚えがない。
だが、目の前の男性の言葉に込められた重みは、嘘だとは思えなかった。
だから、だろう。
私は思わず、自分が叶えたい「願い」を言ってしまった。
「…没落しかけの我が家を復興させたい」
「叶えやる」
俺は少女の願いに即答した。
「え?」
だが、少女は俺の言葉が良く聞こえなかったようだ。
だから、もう一度言った。
「時間はかかるかもしれない。だが、絶対叶えてやる」
「………。」
もう一度言ったが、今度は沈黙してしまった。
また聞こえなかったのかと思って、再度少女に言葉をかけようとしたが、
「嘘じゃない。俺は─」
スパンッ!!
頬に衝撃。
目の前には手を振り切った少女。いつのまにか、俺は少女の肩から手を離していた。
状況から察するに、俺は少女にビンタされたらしい。
俺が叩かれた状態で目を丸くしていると、少女が叫んだ。
「貴方、最低っ…!」
そう言って、少女は肩を怒らせて俺の前から消えて行った。
残ったのは周りで気絶したまんまのギルドメンバーと、野次馬と警備隊の人間。
野次馬と警備隊の奴らからは、なぜか気の毒そうな目で見られていた。
だが、そんな事どうだっていい。
俺が興味があるのは一つだけだ。
俺は少女が消えて行った場所に、急いで走った行った。




