表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼の恩返し  作者: kuro
32/45

武闘大会1

「ガルー。あなたこれに出てみませんか?」

「あ?」


 夜、同居人であるルースが何かの紙を渡してきた。紙は何かのチラシのようだ。


 紙を渡されたガルーは怪訝な顔でそれを読んだ後、「なんだこれ?」と紙から顔を上げてルースに説明を求めた。


「何って、今度王都で開かれる武闘大会のチラシですよ」


 するとルースは恍けた口調で渡した紙に書かれていた内容を要約した。


「あー、つまり、アレか? 俺にこれに出場しろってか?」

「そうです」

「…………」


 ルースの説明を聞いたガルーは嫌そうな顔で渡されたチラシをルースに返した。


「めんどい」


 ガルーはそう言って、自分のベッド方に行き、さっさと眠ろうとする。


「え? ガルー、あなた興味がないんですか?」

「棒切れ振り回してやる気なくしたら負けとか、どうせそんなルールでやるんだろ? 正直、そんなガキの遊びみたいなもんにはやる気がでない」


 欠伸交じりにガルーはそう言いながら、硬いベッドの上に横になろうとする。どうやら本当に武闘大会に興味はないようだ。


「そういうわけだから、その大会に興味があるんなら自分で……」

「でも、大会の優勝者には結構な額の賞金がでるらしく……」


『ガバァッ!!』


 今にも眠りにつこうとしていたガルーがベッドのシーツをふっ飛ばして、ルースの方にドスドスと足音をさせて向かっていった。


 そして、ガルーはルースの胸倉を掴んで先ほどの台詞について問いただした。


「いくらだ!」

「はい?」

「賞金額はいくらだ!」

「あぁ、優勝者には200万ほどのお金が渡されるとチラシには書いてあります」

「よし!」

「ガルー?」


 ガルーは拳を握ってガッツポーズをした後、ルースに突っ返したチラシを再び奪うようにして手に戻した後、もう一度念入りにチラシの内容を読んだ。



『武闘大会』


「場所」   

軍の大型鍛錬所。



「出場条件」  

当日までに申し込み窓口で手続きをした15歳以上の成人。


「ルール」

魔術は使用禁止。武器は持ち込み可能。

相手に負けを認めさせるか、試合続行不可能なほどのダメージを負わせれば勝ちとする。

しかし、相手を殺害した場合はその場で即刻退場。


   

  



 チラシには他に予選のルールやら本選の勝ち抜きがどうのこうの書いてあったが、ガルーはめんどくさいので読み飛ばして大会の日時が書かれている場所を探した。すると、紙には大会の日時は今から一ヵ月後と書かれていた。


 これなら事前に報告しておけばなんとか休みがとれるだろう。


 そうすれば……。




「大会に出場してテレサさんの家の借金を返せますね」


「…っ!?」


 チラシに夢中になっていたガルーのことをにんまりと笑顔で見ているルースの姿があった。


「いやー、チラシを持ってきてよかった。気に入ってもらえたようでなによりです」

「……お前、最初から」

「はい?」

「……あー、なんでもない。お前にはまだ返してもらってない借りもあったの思い出した。それに、お前に礼とかすんの気持ち悪い」


 何かを言おうとしたガルーだったが、寸でのところで思いとどまり、憎まれ口を叩いてチラシを持ったまま再び自分のベッドの方に向かっていった。



 そんなガルーを見てルースは――、先ほどまでの笑顔とは違った、また別の笑顔でもって、



「ははっ! そうです。それでこそガルーです!」



 と、にこやかに笑うのであった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ