武闘大会1
「ガルー。あなたこれに出てみませんか?」
「あ?」
夜、同居人であるルースが何かの紙を渡してきた。紙は何かのチラシのようだ。
紙を渡されたガルーは怪訝な顔でそれを読んだ後、「なんだこれ?」と紙から顔を上げてルースに説明を求めた。
「何って、今度王都で開かれる武闘大会のチラシですよ」
するとルースは恍けた口調で渡した紙に書かれていた内容を要約した。
「あー、つまり、アレか? 俺にこれに出場しろってか?」
「そうです」
「…………」
ルースの説明を聞いたガルーは嫌そうな顔で渡されたチラシをルースに返した。
「めんどい」
ガルーはそう言って、自分のベッド方に行き、さっさと眠ろうとする。
「え? ガルー、あなた興味がないんですか?」
「棒切れ振り回してやる気なくしたら負けとか、どうせそんなルールでやるんだろ? 正直、そんなガキの遊びみたいなもんにはやる気がでない」
欠伸交じりにガルーはそう言いながら、硬いベッドの上に横になろうとする。どうやら本当に武闘大会に興味はないようだ。
「そういうわけだから、その大会に興味があるんなら自分で……」
「でも、大会の優勝者には結構な額の賞金がでるらしく……」
『ガバァッ!!』
今にも眠りにつこうとしていたガルーがベッドのシーツをふっ飛ばして、ルースの方にドスドスと足音をさせて向かっていった。
そして、ガルーはルースの胸倉を掴んで先ほどの台詞について問いただした。
「いくらだ!」
「はい?」
「賞金額はいくらだ!」
「あぁ、優勝者には200万ほどのお金が渡されるとチラシには書いてあります」
「よし!」
「ガルー?」
ガルーは拳を握ってガッツポーズをした後、ルースに突っ返したチラシを再び奪うようにして手に戻した後、もう一度念入りにチラシの内容を読んだ。
『武闘大会』
「場所」
軍の大型鍛錬所。
「出場条件」
当日までに申し込み窓口で手続きをした15歳以上の成人。
「ルール」
魔術は使用禁止。武器は持ち込み可能。
相手に負けを認めさせるか、試合続行不可能なほどのダメージを負わせれば勝ちとする。
しかし、相手を殺害した場合はその場で即刻退場。
チラシには他に予選のルールやら本選の勝ち抜きがどうのこうの書いてあったが、ガルーはめんどくさいので読み飛ばして大会の日時が書かれている場所を探した。すると、紙には大会の日時は今から一ヵ月後と書かれていた。
これなら事前に報告しておけばなんとか休みがとれるだろう。
そうすれば……。
「大会に出場してテレサさんの家の借金を返せますね」
「…っ!?」
チラシに夢中になっていたガルーのことをにんまりと笑顔で見ているルースの姿があった。
「いやー、チラシを持ってきてよかった。気に入ってもらえたようでなによりです」
「……お前、最初から」
「はい?」
「……あー、なんでもない。お前にはまだ返してもらってない借りもあったの思い出した。それに、お前に礼とかすんの気持ち悪い」
何かを言おうとしたガルーだったが、寸でのところで思いとどまり、憎まれ口を叩いてチラシを持ったまま再び自分のベッドの方に向かっていった。
そんなガルーを見てルースは――、先ほどまでの笑顔とは違った、また別の笑顔でもって、
「ははっ! そうです。それでこそガルーです!」
と、にこやかに笑うのであった。