獣人の少女6
「そういえばお前、どうして俺が王都にいるって知ってたんだ?」
「ガルーさんの里の人から聞いた」
「……マジか」
泣いていたミーシャが落ち着いたのを機に、ガルーは少し疑問に思っていたことを聞いてみた。
すると、ミーシャからガルーの里の人間から聞いたと言う。
これにガルーは絶句する。里を出るときは何も言わずに出て行ったはずなのに、何故か居場所が知られていたからだ。
これはどういうことなのか?
ガルーは少しあせったようにミーシャに事の詳細を聞いた。
――すると。
「何で里の奴らが俺が王都にいるって知ってるんだ?」
「ガルーさんの里に、Rさんって人から手紙が来ていて、そこに……」
「そこに?」
「『ガルーは今、王都で女性のヒップを追いかけています』っていう内容の手紙があって……」
「……あんの野郎」
ガルーは手紙の送り主に心当たりがあった。ほぼ間違いなく奴だろうと確信する。
「最近おとなしいから何をしているのかと思ったら、こんなくだらねぇ事してやがったのか!」
「ガルーさん?」
「う…、あぁ、悪い。こっちの話だ。あーっと、それで里の奴らはその手紙を見て何か言ってたか?」
「んーっと、『奴にもやっと春が』とか『あいつが惚れた女を見てみたい』とか『どんな口説き文句をあの顔で言うのか考えるだけで腹が捩れる』とか、そんなこと言ってた」
「それ言ったの、兵団の奴らだったか?」
「うん」
「……そうか」
忘れないようによく覚えておこうと、ガルーは心に刻んだ。
「そんで、お前もその手紙を読んで王都に来たわけか」
「……うん」
「それで、これからどうする? 故郷に帰るのか?」
「わかんない。先のことあんまり考えずに来ちゃったから……」
「そうか……。金とかは大丈夫か? あとどれだけある?」
「ここまで来るまでに大分使っちゃったから、……残り少ない」
ミーシャはそう言って、腰に下げたポーチから財布を取り出しがま口を広げた。
財布の中を見たガルーは少し苦い顔をした。
「……少しまずいな。王都は他の都市と違って宿代が高い所が多いから、このままだと……」
「なにか仕事でも探さないとね。……私未成年で獣人だけど雇ってくれるかな?」
そう言って少し不安な顔をするミーシャ。誰も知り合いのいない場所でも仕事探しに恐怖を感じているのだろう。
そんな様子のミーシャを見てガルーはある提案をした。
――それは。
「だったら、俺の前の仕事やってみるか?」
「え?」
「ギルドって言うんだが、色んな仕事もあって人を差別しないから結構安心して仕事が出来るぞ。格安の寮もあるから宿代
も大分浮くぞ」
「ほ、本当に?」
「あぁ、どうする紹介してやろうか?」
「ぜ、是非おねがいします」
「じゃ、これか行くか?」
「うん!」
「よしっ! じゃ、行くか! あっ、テレサ、お前はどうする?」
「え、私!」
突然話しかけられたテレサは夢から覚めたようにハッと顔を上げた。
今までガルーとミーシャがずっと話していたので、いきなり声をかけられて驚いたようだ。
しかし、それにしては顔が少し赤いのは何故だろう?
「わ、私はいいよ。仕事もあるし、ふ、二人で行って来て」
「そうか。じゃ悪いけどよ、手続きで色々と時間潰れるから俺は今日休むって言って置いてくれ」
「う、うん。わ、わかった」
「お前、なんか顔が赤いけど大丈夫か?」
「だ、大丈夫だから」
「それならいいけど。もし、なんかあったら前にやった笛吹けよ」
「う、うん」
「じゃ、悪いけどあとは頼んだ。行くぞミィ」
「はい。ガルーさん」
二人は揃って屯所を出てギルドに向かい、後に残されたテレサは顔を赤くしながらガルーが少し前に言った言葉のフレーズを脳内で繰り返し繰り返し聞いていた。
『俺はコイツが好きだよ。だから、お前と結婚するのはもちろん、他の奴とどうこうなるつもりも全くない』
「~~~~!!」
テレサはガルーの台詞を思い出し、仮眠用のベッドに飛び込み手足をバタバタさせた。
※※※
「それにしてもガルーさん本当にこれでいいの? 言われたとおり保護者欄にルースって名前書いたけど」
「いいんだよ」
「でも、私この人のこと全然知らないよ?」
「ジゴロのろくでなし。これだけ覚えておけばいい。あと、何かそいつについて聞かれたら、『顔は知らないけど保護者です』って言っておけ」
「いいのかなぁ?」
「いいんだよ」
「うーん」
「あいつは今回ろくな事してないからな。少し懲らしめてやったほうがいい」
「でも、これだとルースさん誤解されない? 子持ちだと思われるかも」
「それが狙いだ」
「うーん」
「あんま深く考えるな。それより、試しに何か仕事やってみるか? 討伐系はいいのがあるぞ」
「ガルーさんが一緒ならどれでも一緒だから任せるよ」
「じゃ、これにするか。おーい受付。これ請けるから判子してくれ!」
そう言ってガルーはのん気に受付に向かって二人分の仕事を請けにいった。
※※※
後日、警備隊の屯所にて。
「ガ、ガルー! この前言ってた私のことが好きって話だけど……!」
「ん? あぁ、アレがどうした?」
「あ、あれはどういう意味で言ったのか詳しく聞きたくて……!」
「あ? いや意味も何も『恩人』のことが好きじゃなきゃ『恩返し』なんてするわけないだろ?」
「…………。」
「ん? おい。どうした? なんだか顔色が……」
「なんでもないから」
「いや、なんでもないっていうツラじゃ……」
「ホント、なんでもないから」
「そ、そうか」
「それじゃ私仕事があるから、これで」
「あ、あぁ」
何故かいきなり不機嫌になり目の前から去っていくテレサ。
そして、その姿に少し怯えるガルー。
そんな二人の様子に、聞き耳を立てる警備隊の隊員達。
色々と問題はあるが、とりあえず今は平和だった。
次から新しい話を書くつもりです。
えぐい話しとかバトルとか書きたい気分です。




