獣人の少女5
「アホかお前は。俺なんかと結婚してどうすんだよ」
ガルーは突然のミーシャの告白を聞いて呆れたようにそう言った。はっきり言って、ガルーはこの少女とどうこうなる気はなかった。
元々、ガルーは色恋に対しての興味が常人よりもかなり薄い。
なので、突然求婚の告白されてもあまり嬉しくない。というか、本当に興味がない。
「俺なんかじゃなくて故郷でもっと良い奴を探せ」
なので当然、ガルーはミーシャの告白を断る。
だが――
「……やだ。ガルーさんじゃなきゃ……やだ」
断られたミーシャは拗ねた子供のように顔を下に向けてガルーの言葉を拒否した。
そして、泣き出しそうな声でガルーに自分の気持ちをぶつけた。
「だって……私が好きなのはガルーさんだもん……他の人じゃないもん」
――他の誰でもない。自分のことが好きなんだと声を震わせて言った少女。
「……あー」
これにはさすがのガルーは困り果てた。先ほども言ったとおり、ガルーはこういうことにはとことん疎い。だから、こんな時はどうすればいいのかわからないのだ。
そして、ガルーは徐々にミーシャの言葉に押され始める。
「…なんで私と結婚してくれないの? 私のこと嫌い?」
「いや…あのな」
「私のどこが嫌い? 言ってくれたら頑張って直すよ? だから……!」
「いや、だからな……」
ガルーはいつもの強気はどこへやら、ミーシャの対応に少し弱気だ。
だが。
「……もしかして、『その人』のことが好きだから?」
突然ミーシャが言ったその言葉で状況が少し変わった。
「は?」
ガルーの口から間の抜けた声が出て呆然とした顔でミーシャを見る。その顔は何を言われたのかわからないという感じだ。
そして、そんなガルーの様子などお構いなしにミーシャは言葉を続ける。
「その人のことが好きだから、……私とは結婚してくれないの?」
そう言って、ミーシャは震える指先でテレサを差した。
「っ……!」
指差されたテレサは顔を真っ赤にして、それを隠すように慌てて顔を下に向けた。
しかし、やはりガルーがどんな反応をするのかが気になり、下を向いたままちらちらとガルーの様子を伺う。
震えた手で指をさすミーシャと、顔を赤くするテレサ。
そんな二人を見ながら、ガルーは頬をポリポリと掻く。
先ほどまでの弱気はどこへやら、今は普段どおりの悪人面に戻っている。
そして。
ミーシャの問いに、ガルーは当たり前の様にこう答えた。
「そうだよ」
『『!?』』
ガルーの姿に照れはない。ただ、当たり前のことを当たり前に言っているだけだった。
さらに、ガルーは続けた。
「俺はコイツが好きだよ。だから、お前と結婚するのはもちろん、他の奴とどうこうなるつもりも全くない。……だから、悪いけど」
そう言ってガルーはミーシャの方を向き、頭一つ分背が低い彼女に目を合わせた。
そして。
「俺のことは諦めろ」
ガルーは再度求婚を断った。
その後。
部屋の中にはしばらくしゃくり上げる少女の声と、その少女の頭を優しく撫でる男。
そして、顔を真っ赤にさせながらも事の成り行きをすべて見守っていた女がいた。
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