獣人の少女2
「…相席していい?」
「え? あぁ、はい、どうぞ」
場所は早朝の大衆食堂。
私がそこで朝食の卵サンドを食べていると、小さな少女が相席を求めてきた。
私は断る理由もなかったので相席を許すと、少女は突然こういってきた。
「…ねぇ」
「ん?」
「あなたガルーさんの恋人?」
「ぶっ!!」
突然現れた少女の言葉に思わずむせた。
「な、なに言ってるのあなたは!?」
「別に…ただ確認したかっただけ」
目の前の少女はそう言って、私からそっぽを向いた。
「え、えーと、とりあえずあなたは一体誰? それに確認って何?」
「私は」
先ほどのとんでも発言のせいで少し頭が混乱しているが、なんとか状況を整理しようと私は頑張った。
その努力が実ったのか、状況は少しづつ良くなっていった。
「何年かぶりにガルーさんに会いに行ったけど…ガルーさんいなくて、かすかな情報を手がかりにここまで来たの……」
「うん」
「でも、せっかく会えたと思ったのに、ガルーさんの隣に見たことのない女の人がいて……」
「……うん」
話を聞いているうちにすこしづつ分かったことがある。
少女はガルーの知り合いであり、名前はミーシャというらしい。
そして、このミーシャと名乗った少女はガルーに会うために王都にやってきたと話だ。
……どこかで聞いたような話だったが、とりあえずなんとかなく話の展開が読めてきた。
このミーシャという少女はガルーの恋人か何かなのだろう。
確か、ガルーは故郷を夜逃げしてきたはず。
それを追いかけてやってきたのだろう。
泣かせる話だ。
だが、私はそこでふと思った。
(というか、あいつに恋人とかいたんだ……)
考えてみれば、ガルーは20ちょっとの若い男で、恋人がいたって不思議ではないのだが……
「………。」
見た目がガラの悪いチンピラ風の男の姿を改めて思い出す。
そして、次にその男が恋人に甘い言葉をささやいている姿を思い浮かべる。
(…駄目。少女をかどわかしているチンピラのイメージしか浮かばない……)
そんな失礼なことを考えていると、ミーシャが私に語りかけてきた。
私は気持ちを切り替えて、ミーシャの言葉を真剣に聞いた。
「テレサさん…だっけ? 名前」
「え、えぇ、そうよ」
「……あなたガルーさんの何?」
「え?」
「…ここ数日、あなたとガルーさんの様子を遠くから見てたけど…、やっぱり恋人にはみえなかった。…でも他人にも見えなかった」
「……えっと、それは」
「………。」
「それは……」
私はミーシャの言葉に詰まった。
ただの命の恩人だと説明しようとしたが、何故か言葉が喉から外に出なかった。
「えっと……、私は…」
「っ………!」
そんな私を見て、ミーシャは痺れを切らしたのか座っていた椅子から立ち上がった。
詰め寄ろうとしたのか、それとも私にはもう用なしだとばかりに店を出ようとしたのかわからないが、席を立とうとした。
だが、しかし──
「まぁまぁ、そんな怒らないで少し冷静になりましょう」
「!?」
「あっ…」
席を立とうとするミーシャを背後から肩を抑えるようにして再び座らせた男が現れた。
次はルースの視点。