獣人の少女3
けだるい朝が一気に陽気な朝へと変わってしまった。
適当な店で朝食をとっていたら同居人の恩人がなにやら修羅場を作っている姿を目撃。
しかも、原因はどうやら自分の友人であるガルーその人。
(これは気配を完全に断って様子を探らなければならない)
そう思った私は、失礼だと思ったが、女性二人が座る席から少し離れた場所で彼女たちの話を盗み聞きすることを決めた。
だが話が山場を迎えた時、突然ミーシャという娘が椅子から立ち上がろうとしたので慌てて止めに入った。
折角見つけたガルーに関する揉め事。決して逃してはいけない。
何故ならこんな面白そうなことはめったにないからだ。
「まぁまぁ、そんな怒らないで少し冷静になりましょう」
※※※
私は一旦ミーシャをもう一度椅子に座らせた後、三人で話合いを始めた。
テレサさんとは知り合いだったが、ミーシャとは初対面だったので軽く自己紹介は済ませた。一応、ガルーとテレサさんの友人と説明した。
─そして、
「ミーシャさんでしたか? 何故あなたはガルーとこちらにいらっしゃるテレサさんの関係にそんなご執心なのですか?」
「…昔、悪い奴らに売られそうになっていっところをガルーさんに助けられて…」
「…つまり、ガルーは恩人というわけですか?」
「…はい」
「あぁ、それでガルーと仲がいいテレサさんにこうして話をしているわけですか? 彼女が自分の恩人とどんな関係なのか気になって?」
「……はい」
「なるほどなるほど?」
思わず、テレサさんの方を見ながらにやけてしまった。
そして私はこの瞬間、面白すぎる人間関係が形成されていることがわかった。
ミーシャさんはガルーのことを恩人だと思っている。
またガルーはテレサさんの恩人だと思っている。
だが、ガルーの性格や、テレサさんの今までの様子を考えると、絶対「恩人」の方は助けたと思っていない。
いやなんとも面白い人間関係が築かれている。
しかも、その内一人は昔からの友人だ。
「………」
私はこんな愉快な出来事はもっと盛り上げなければならないと思い、ガルーが最も嫌がりそうなことをすることにした。
私は、ミーシャさんのほうに顔を向けて話しかけた。この時わざとテレサさんのことは無視するように視界から外した。
「それで? 結論は出ましたか?」
「まだ、です」
「それはなぜですか?」
「この人が、はっきりしなくて…」
「まぁ、本人からは少し言いにくいかもしれませんね」
「……うっ。」
「なんなら、もう一人の当事者から聞いてみてはどうですか? あっちならはっきりと言うと思いますよ」
私がそう言うと、それまで会話に参加していなかったテレサさんが「ピクッ」と肩を揺らして反応した。彼女も気になっているらしい。
自分がガルーからどう思われているのかが、
そこから先は簡単だった。
元々、二人の関係が気になっていたミーシャさんと、自分がガルーにどう思われているのか気になるテレサさん。
後は簡単だった。
二人の女性の様子を見ながら、適当に二人を刺激するような言葉を選んで言ってしまえば、後は二人が自分で行動を起こした。
しばらくすると、二人は覚悟を決めて椅子から立ち上がり、店から出ていった。
向かう先はもちろん警備隊の屯所だ。
私はその様子を椅子に座ったままのんびりと眺めた。




