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【書籍発売中】アウトドアショップin異世界店 冒険者の始まりの街でオープン!【WEB版】  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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【番外編】3人の日本人(後編)

「しかしユウスケさんの結界の力は本当にすごい。この異世界を安全に過ごせるなんて快適過ぎるよ」


「ああ、おかげさまでキャンピングカーで走りながら人や魔物なんかを気にしなくていいのはありがたい。いつもは急に出てくる障害物や魔物なんかに気を付けないといけないからな」


「ホホー!」


 後ろの座席に座っているテツヤがそう言うと、運転席にいるシゲトもそれに同意する。


 その横ではシートベルトを締めたフクロウのフー太も手を挙げた。フー太は魔物ではあるが、日本語を理解することができる。今回は日本から転移と転生によってやってきた3人が水入らずで話すため、同行者はフー太だけで近くの川でキャンプをすることになった。


 この3人が転生者や転移者であることを知らない者のほうが多いからだ。ユウスケの結界の能力があれば怪我をすることはないが、念のためにフー太だけが同行する次第となったわけだ。森フクロウのフー太は身体を大きくすることができ、一般人のこの3人よりも強いのである。


「確かにこの力だけチートすぎる気がするよ。でもこのキャンピングカーみたいな物は手に入らないから、これはこれで羨ましい。しかも機能が追加されるのはすごいよ。この前うちに来た時は透明化や空間拡張なんて機能はなかったもんなあ」


「異世界を旅するための能力みたいなものか。ユウスケさんとテツヤさんもしばらく見ない間にアウトドアショップやキャンプ場が大きくなって、従業員がすごく増えていたな」


 以前にシゲトがキャンプ場を訪れてユウスケと会い、そのあとアレフレアの街へ行ってテツヤと会ってからしばらく時間が経っていた。


 シゲトはキャンピングカーでいろんな場所を巡っており、テツヤとユウスケはお店やキャンプ場を営業しているため、なかなかタイミングが合わなかった。その間にお互いの環境にもいろいろと変化があったらしい。


 ユウスケとテツヤは今日初めて会ったが、すでに2人を知っているシゲトがいるため、すでに意気投合している。キャンプという同じ趣味を持ち、同じくらいの年齢で、異世界へ突然やってきたという共通する境遇が多かったため、それもある意味では必然だった。


「本当にいろいろあったなあ。お店にいろんなお客さんが来たり、トラブルが起こったり、ゲームじゃないけれどこの世界って強制イベントが多すぎる」


「確かに。うちのキャンプ場にも面倒なお客や想定していなかったお客さんが来たりしたよ」


「う~ん、営業をしているいろいろと大変なんだな……」


「ホホー……」


 そんな話をしながらもキャンピングカーは道を進み、目的地である近くの川へと到着した。




「よし、このキャンピングカーの周囲に結界を張ったから、もしも遠くに行く場合は教えてくれ」


「了解。魔物のいるこの異世界で安全に過ごせるのはありがたいな」


「ああ。旅をしていると魔物やら盗賊やら出てくるから助かるよ」


「……魔物はともかく盗賊か。旅はしたいけれど、それが怖いんだよなあ。シゲトは本当にすごい」


「確かに。うちも王都へ行く時はAランク冒険者さんがついて来てくれるから安全なんだけれど、それでも怖いよ」


 異世界では平和な日本と比べて危険が格段に多い。街から街へ旅するのは命懸けなのである。


「おっ、そんな便利なキャンプギアが出ているのか」


「最近追加された商品みたいだ。アウトドアワゴンがそのままベンチになるキャンプギアだよ」


「そんな最新のキャンプギアまで購入できるなんてテツヤの能力も十分すごいぞ……」


 テツヤのアウトドアショップの能力で購入したキャンプギアは大量のキャンプギアを一度に運べるキャリーワゴンだが、それを変形するとベンチになり座ることができる最新のキャンプギアとなる。


 最近のキャンプギアはどんどん進化していくのだ。そして最近は物価高の影響でお値段の方も進化しているのである。キャンプギアはまさに底なし沼で終わりはない。


「ホーホー♪」


「フー太はロータイプの椅子が気に入ったみたいだ」


 ベンチタイプにローチェア、ハイチェア、リクライニングできるタイプなど、椅子だけでも様々な種類が出ているが、フー太は低くて小さめな椅子が気に入ったらしい。


「それはよかった。いくらでも買えるから、ぜひもらってくれ」


「ありがとう、ほらフー太も」


「ホ~♪」


「おお、これは癒されるな!」


 フー太がテツヤの肩にとまり、頭にもたれかかる。何とも可愛らしくてとても癒される光景である。


 キャンピングカーの前にテーブルや椅子などをテキパキと組み立てていく3人。3人ともキャンプ経験者ということもあって、慣れたものだ。


「さて、早速乾杯しよう。まずはビールでいいか?」


「もちろんだ! また日本のビールが飲めるとは!」


「異世界のエールもうまいけれど、やっぱり日本のビールは格別だよな」


 この中ではテツヤだけが普段はビールを飲むことができないので、久々にキンキンに冷えた缶ビールを見てとても嬉しそうである。


 異世界のエールビールも悪くはないのだが、日本人は爽快感のあるラガービールに慣れているのだ。


「「「乾杯!」」」


「ホホー!」


 プシッというプルタブを開ける音がして、そのあとにビール缶のぶつかる音がする。


「かあああ、うまい! こいつは効くなあ!」


「身体中に沁みわたるよな」


 キンキンに冷えたビールが喉を通りすぎるこの瞬間は他の何にも代えがたい瞬間でもある。


 昼過ぎから酒を飲むという背徳感もあってとにかく最高なのだ。


「他にもウイスキーや日本酒、ワイン、焼酎なんかも取り揃えているぞ」


「これは贅沢だ。俺の方はレッドドラゴンのベーコンとデザートには幻のオアシスで精霊さんからもらった果物がある」


「そっちもすごいな。俺の方はインスタントラーメンともらい物のアースドラゴンの燻製肉だ」


「ホ~ホ~♪」


 テーブルには各々が持ち寄ったお酒や料理などで溢れている。


 キャンパーが集まるとそれぞれのおすすめや得意な料理などが集まりがちである。どうやら今日は3人ともとことん楽しむつもりのようだ。




「そうだ、ちょっと2人に相談なんだけれど……」


 酒も十分に入り、お互いの情報を交換したり、これまでどんなことを乗り越えてきたのかを楽しく話したところで、テツヤが少し真面目な表情をして話す。


「ふ、ふたりは元の世界かこっちの世界で結婚しているのか? もし未婚だったらこっちの世界で結婚したい女性とかはいるのかな?」


「「………………」」


「ホー?」


 30代おっさん間近の3人の男が集まってまさかの恋バナであった。


 とはいえ年代も近く、なにより別の世界からやってきたという同じ境遇を持つ者として相談相手には最適かもしれない。他の者がいないこの場だからこそ聞けることでもある。


「いや、どちらでも未婚だ。それにまだそういう相手はいないな。一緒に旅をしているのは女の子ばかりだけれど完全に保護者という関係だぞ」


 真面目な質問であると察し、少し考えた後にシゲトが答える。まだこの世界を旅してあまり経っていないシゲトにはそういった相手もいないようだ。


「俺も未婚だ。……今は多少気になる人がいるくらいかな。最初は生活を安定させるのに必死だったけれど、落ち着いてきたらこれまでずっと一緒にいた女性を少し意識しているかもしれない」


 ユウスケの方は若干気になる女性がいるらしい。ずっと一緒にいる女性というとだいぶ限られるわけだが。


「そ、そうか。俺はどっちの世界でも未婚なんだけれど、実はこっちの世界で好きな女性がいる。元の世界には両親や友人がいて未練がまったくないわけじゃないけれど、この世界で結婚していいものか少しだけ悩んでいるんだ」


「くう~リア充爆発しろ!」


「ユウスケさん、真面目な相談みたいだぞ」


「す、すまん、テツヤさん。つい羨ましすぎて心からの叫びが出てしまった……」


「いや、気にしないでくれ」


 ユウスケが茶化したところをシゲトが咎める。これまでに女性にあまり縁がなかったところにいきなり結婚の話が出てきたことでつい叫んでしまったらしい。


「結婚かあ。俺の場合はすでに元の世界では死んでいる扱いっぽいから、ある意味では気兼ねせずに結婚できるな」


「そうか、ユウスケさんは転生だから、戸籍とかは残っていないのかもしれない。俺とテツヤさんは転移だから失踪扱いになるのか……」


「そうなんだよ。今のところ元の世界へ帰れるかはまったく分からないけれど、これだけ日本から人がいるし、帰れる可能性もありそうな気がしてさ」


「う~ん、可能性はあるだけで方法はまったく見つかっていないし、その時になったら考えればいいんじゃないか?」


「ああ、俺もシゲトさんに賛成だ。この世界でそこまで先のことを考えても仕方のない気がするぞ。なにせいきなりとんでもなくデカいイノシシが現れたり、古代竜がやってくる世界だからな。思い立ったらすぐに行動しないとあとで後悔しそうだ」


 この世界は平和な日本よりも危険が多い。シゲトとユウスケの言う通り、1日1日を悔いなく楽しむことが大事なのである。


「……うん、そうだな。今はたとえ元の世界へ戻れるようになったとしても、こっちの世界にいたいとだいぶ思っているし、やっぱり結婚するのなら早くした方がいいか」


「間違いないよ。ひとりでキャンプをしていると家庭を持っている人をすごく羨ましく感じる瞬間があるからな」


「わかる。テツヤさんの距離の近さ的にリリアさんかな。これはなりそめ話なんかも聞かないと! 夜は長いし、まだ酒は山ほどあるぞ」


「そうだな、ぜひ話を聞かせてくれ」


「ホホーホー!」


 奇妙な縁を持つ3人の日本人と1羽の森フクロウはじっくりと語り合う。


 日の暮れたあとは安全な結界と広いキャンピングカーの中で久しぶりに同郷の仲間たちと明け方近くまでじっくりとおいしい料理と酒を楽しんだ。キャンプ場に残った者たちも今日はいつもとは違った夜を過ごしているだろう。


 この3人の関係はもう少し続きそうである。


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◆アウトドアショップin異世界店◆
◇冒険者の始まりの街でオープン!◇

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