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潮騒の、すず  作者: 糸東 甚九郎
第6章 努力は自分を裏切らない
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32/128

32、御大将の重責と闘志

   ドドッ  ドドッ  ドパーーーーーーンッ!


「(な、なんて力強い突進力! 打突も、重いぞ!)」


   ドパァン!  ドババン!  ドパパァーーーンッ!


 決勝、中堅戦。

 何とか引き分けで凌いだ勝男に続いて、豊が出陣。

 知的な剣道で防御力に長けているはずの豊だが、やはり相手の実力も高いためか、序盤から苦戦を強いられている。


   ドパァンドパパァーーーンッ!  ドパパァーーーンッ!


「(連打も、速いぞ! さすが、全国トップの名門だ!)」


   ・・・・・・ドドォン  ドドォン!


 力強い踏み込みで、豊へ攻め込む相手。


   ヒュンッ  ビシシィィッ!  ・・・・・・パパパァンッ


 後の先で反撃した豊だが、相手は難なくこれを防ぎ、弾き返した。


   ダダァン  ダンダダァンッ  パパパァンパパァーンッ!

   ・・・・・・スススッ  ・・・・・・サササッ

   シュッ  シュパーンッ!  パァン!


 間髪入れずに踏み込んでくる相手。豊は作戦を切り替え、直線的に下がらずに、円を描くような足捌きで横へ横へと躱す。


   ヒュンッ  パァーーーーーーーンッ!  ・・・・・・ズパァンッ


 横から相手の面を打ってゆく豊だが、相手もこれを防いではすぐに返す刀で反撃。

 一進一退の攻防が続く中堅戦は、互角の試合展開となっている。


   ドパパァーーーンッ!  バシバシイィッ!

   パパパァンッ!  ・・・・・・バシインッ

   ドパァーーーンッ!  ドパァーーーンッ!  ドパァーーーンッ!

   サササッ  シュッ  パーーーーンッ!  パチィーーーンッ!


「うわっ! うわっ! は、はーちゃぁんっ!」

「豊、相手にまったく引けを取ってない! ほんとに、互角だね!」

「でもでもぉ、すっごく心臓に悪いーっ!」


 豊と相手の攻防が続く中で、思わず目を伏せる、りん。


「りん! この中堅戦で豊が勝てば、かなり流れは良くなるんだから! 見よう!」

「りんー。うちらが試合やるときだって、見てる人はきっと同じ気持ちになっぺ?」

「だ、だけどー・・・・・・。うわー。やっぱり、ハラハラするーっ!」


   ドパパァーンッ!  バシンッ!  パパパァーーーーンッ・・・・・・


 乾いた音が、観覧席まで響き渡る。

 相手の打突を受け止める豊は、コート内をくるりくるりと動き回り、なるべく連打に巻き込まれないよう工夫している。

 しかし、相手は豊のさらに数手先を読んでいるかのように、先回りして攻撃を仕掛けてくる。だんだんと、豊も防戦一方になっていった。


   ・・・・・・シュッ  ドパァーーーーーーーンッ!  ・・・・・・バシインッ


「(うわっ! 相手のスタミナは無尽蔵なのか? まだまだ、打突が重い!)」


   バシィンバシィン!  パァン  ドパァーーーーーーーンッ!


「「「 がんばれ、ゆたかーーーーーっ! 」」」


 葉月たちが、豊へめいっぱい声を張り上げる。それに応えようと、豊は相手の太刀筋をギリギリで見切りながら、受け、流し、躱しを繰り返す。


   ・・・・・・ビィーーーーーーッ!


「引き分けぃ!」


   がやがやがやがやがやがや  どよどよどよどよ  ざわざわざわざわざわざわ


 何と、中堅戦もお互いに有効打が決まらぬまま、引き分け。


「(はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・。負けはしなかったけど、これじゃ、勝ち星は・・・・・・)」


 左腰に竹刀を納め、一礼してコートを出た豊。


「や、やべぇ! ユタカまで引き分け? じゃあ、勝敗はもう・・・・・・」

「面目ない。そういうことに、なるね。・・・・・・翔平に全部、懸かっちゃうな」

「で、でも、ショウは足が・・・・・・っ!」


 動揺する、勝男と豊。


「なぁに、心配すんなよ。負けなきゃいいんだ! そのくらいの気持ちでいこうぜ?」

「で、でもよぉ、ショウ! ・・・・・・先生、どうなんですかね?」


 若田先生も翔平の足の様子を気にしながら、後ろから声をかける。


「須々木。足の具合によっては、途中で中断し、棄権もやむなしだ。いいか?」

「先生。・・・・・・俺は、大荒井中を日本一にしたいんです! 棄権は・・・・・・」

「もちろん、日本一を獲らせてあげたいが、須々木の剣道人生を絶やすのはダメだ」

「・・・・・・わかりました。もし、ダメな時は、すぐに主審へ合図しますんで・・・・・・」

「わかった。できる限りの試合をやってこい。でも・・・・・・絶対に無理はするなよ?」

「はい。・・・・・・見てて下さい。俺は茗荷掘中を下して、絶対、全国制覇に導きます!」


   ・・・・・・ぎゅっ!  ぎゅぎゅ!  ぱぁんっ!  ぱぁんっ!


 面紐を固く結び、がっちりと防具を装着した翔平。


「カツオ! 豊! 俺たちがここまで来られたのは、毎日の猛稽古のおかげだな?」

「え? ま、まぁ、そーかもな」

「確かにね。全国大会決まってから、毎日、若田先生に鍛え上げられてきたしね」

「だよな。・・・・・・努力は決して自分を裏切らないってことを、大将戦で証明するぜ!」


 ゆっくりと立ち上がり、がしっと竹刀を握って、コートへ歩み入ろうと、ゆっくり足を前へ送り出す。

 その、戦場へ向かわんとするサムライの如き翔平の姿を、勝男と豊はきりっとした目で見送る。翔平は、右足になるべく重心を乗せないように、一歩ずつ、静かに歩んでゆく。


「翔平っ! 最後だよ! 絶対勝ってね、翔平ーっ! わたし、信じてるからーっ!」

「(・・・・・・葉月! ・・・・・・俺は、約束を守るからな! 見ててくれよなっ!)」


 観覧席からコートへ届いた、葉月の大きな声。

 翔平はその声を聴き、黒い瞳に紅蓮の炎を宿し、一気に闘志を燃え上がらせた。


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