思いついたらすぐ行動
もはや、ルイを行かせないという手段はない…
今更行かないでなんていえない…
私はベッドの下にしまってあった封筒を取り出す。
絶対に行かないって、思ってたけど、これで行くしかない。
私も王都に行くからね!ルイ!!
さて、私の取り出した封筒。これは王都のギルドからの依頼だ。
どんな依頼かというと、養成所で教師をしてほしいというものだ。
無論私は拒否した。
王都は遠い。ここは国境の村。王都まで馬を走らせても1か月かかる。
そんな遠くに行っちゃったら、ルイに会えないじゃん!!
されど、現状は変化した。
いまや、これが無くては私はルイの傍にいられない…ルイの笑顔を守りたい…
冒険者になって10年、この依頼は5年目から毎年届く。
15歳は成人の節目、王都に出稼ぎに来てもおかしくない年齢だ。だから、15歳の時からこの依頼は届く。
そんなに教師不足なのかな?ゲームの感じだとそんなに困っている感じじゃなかったけど。
まぁ、経営の話を生徒の前でするわけないかー
この依頼を受け取るにあたり、こちらから存分に条件をつけさせてもらう。
まず、この村に2名以上の冒険者を置くこと。
この村には私しか冒険者はいない。私が居なくなれば、みんな不安になると思う。10年前の惨劇は繰り返したくない。幸い豊な?森だし、冒険者にはうってつけの立地だ。実際他の国境沿いの近くの村は、村ではなく、街として栄えているし、冒険者ギルドだけでなく、商業ギルドもある。まぁそれなりに隣街までは距離があって、馬で2時間くらいかかるけど。
そして最後に、私を新人に就かせること!ルイのクラスに関わらないことには、ルイのことを見守れない…いや、多分見守れるだろうけど、何かあった時、確実に守れる体制でいないと…
蝋燭のほのかな光の中、黙々と返答の手紙を書く。
あースマホがあったら、こういう時、どう書けばいいのかわかるのに…
慣れない手紙に懸命に文字を起こすごとに夜は更けていった。
「か、書けた…」
朝日が目に染みる…
「おはよう姉さん、朝だよ。起きてる?」
窓の外からルイの声がする。耳が至福。
ルイに心配をかけないように、扉越しに返事をする。
「うん、おはようルイ。もうすぐそっち行くね」
さて、書き終えた手紙を封筒に入れて、
「精霊さん、これ届けてくれない?」
そう、お願いすると、何もないのに手にしていた封筒がふんわりと浮き、一瞬にして消えた。
これでよし!
「ありがとうね、大好き!」
目の前にいるであろう精霊に、感謝と親愛を伝える。
ただの独り言にしか聞こえないけれども、魔術師曰く、「めっちゃ喜んでいます」とのことなので、何かお願いした際には必ず伝える。
仕事をやり終え、気分がすっきりした私は、ドアを開け、愛しい弟に再度朝の挨拶をした。