世界観を作ったら:その世界観に肉を付けよう
前ページで組み上げたのは、物語が進行する世界の、最低限の骨格である。
物語が生物として、動き出す為には、肉を付けなくてはならない。
して、ここで解説するのは、肉付けと言う行為である。
詳しく解説、と言っても、やる事は至極単純で、世界観を分厚くする行為である。
で、どうやってやるのか、と言うと、骨格に合うように肉を付ける。
要するに、組み上げた骨である世界観に合うよう、肉、と言う名前のやりたい事と書かなくてはならない事を付ける行為だ。
さてさて、小説を書きたいのならば、多少なりともやりたい事、書きたい事があるだろう。
例えば、である。
・ハーレム作ってきゃっきゃうふふさせたい
とか。
・人類絶滅するんじゃねぇかってくらいの戦争を起こしたい
とかである。
ん?
何々?
「そんなん誰でも考えつく事だろう、時間返せ?」
いやいや、ここから大事なんですよぉ、お客さん、げへへへ。
このやりたい事に対して、起こってもおかしくない下地をつける行為なのだ。
この下地と言うのは、いくつかの国家があって、その国家間の政治的対立があるとか、男女比が狂っている故にハーレムが出来るとか、そんな設定を付ける為のものであり、それ以上も以下もない。
では、例題を出して、世界観を生物にしていこうか。
もう一回世界観を考えるのは面倒くさいから、私が前に作った世界観を使って、肉付けを行いましょう。
さて、私が作った物語の骨格、でっかい虫に対抗する為、よくわからん遺跡から、いつのかもわからん飛行機を引っ張り出して、戦っている世界で、書きたい事を上げよう。
んで、まずは消費型文明があると仮定して、書かなくてはならない事から上げる。
質問形式が楽だぞ。
・飛行機の整備どうするの?
整備組合あたりでも作ればいいんじゃね? 古文書とか、遺跡から出土するから、多分、なんとかいける。
・弾薬どうしますのん?
虫、そうだね。機械化昆虫って事にして、それを倒した外殻とか、電子部品から得ているってことで。
・燃料は?
掘ってる、それか、虫から得てる。
・市民の生活は?
産業革命期の生活っぽいので、交易の船はパドル船で、これ、絶対。
・じゃあ工場あるの?
ある、石炭式か、重油式の蒸気機関かはさっぱりわからないけど、多分巨大な転炉があって、製鉄してて、飛行機の部品とか作っているに違いない(偏見)
・工業排煙もくもくなんだ?
もくもくだよ! すっごいもくもくだよ!
・鉄とかどうしているの?
空を飛ばない虫から得て、屑鉄として精錬しているのかも知れない。
・アルミ精錬出来るの?
出来ないと思う、この辺りは虫さんから、得ている事にしましょう。整備屋がハンマーで叩いて、一生懸命飛行機の蓋板作っているって事で。
・陸軍は居るの?
居るよ、直射砲を持った第一次世界大戦型の歩兵と砲兵が。
・陸軍の戦力は?
航空機無しでは立ち行かない位。
・こんな設定で大丈夫か?
大丈夫だ、問題ない。ダメだったら気合と根性で押し切る、それでもダメだったら、罵詈雑言を馬の耳に念仏する。
さて、これで必要な肉付けは終わった。
武器の入手、製造方法は前の世界観でやったからよしとして、それを維持する為のシステムから、描写する事のないだろう市民の生活様式、国家の工業能力、何が作れて何が作れないか、そして、作るための資源をどこから得ているかを書いた。
これから必要なものを感じ取ってくれるとありがたいが、わからない人の為に、これだけは書いとけってのを箇条書きしよう。
・国家の有無と政治形態
・国家の工業
・国民の生活レベル
・軍隊の武器、及び、主人公勢の武器
・武装、及び生活維持できる程度の社会システム
・資源確保の手段
・主人公の敵、ひいては世界の敵
これだけは、本当に必要最小限なので、忘れずに設定しよう。
忘れるとグダグダになって、小説エターナルじゃよ(小声)
後は、小説を書きながら、必要になる度に、設定と見比べて、追加しよう。多少なら矛盾しても問題ない、これをグダグダ言うのは極少数の読者くらいだ。声は滅茶苦茶デカいが、無視しても問題はない。
次はやりたい事を書き出そう。
これは適当でもいい、適当でもいいが、その後が大変なのだ。
何故かと言うと、やりたい事に対して、世界観が合うか合わないかの選別作業があるからだ。
例えば、先程の世界観に、私がこんなやりたい事を追加しよう。
・主人公は空母打撃群を作り出す英雄なんやで!!
で、ツッコミがこうなる。
「パドル船しかねぇのに、出来る訳ねぇだろ。速力も甲板サイズも足りんから、墜落するのがオチだ。でっかくするのは無理、新たに作り出すにしても、都市国家間で行き来出来る程度には、航続距離があるんだから、作る意味すらないだろ」
さて、空母機動部隊の夢は遥か彼方に消え去った訳だが、何をしたのかわかるだろうか。
やりたい事に対して、私がやったのは至極単純。
「それ、その世界に必要あるの?」と言う疑問と「それ、その世界で出来るの?」と言う疑問をぶつけただけだ。
出来る! と思っていても、必要あるの? と聞かれれば必要ないなぁ、と結論が出る場合も多い。
ちなみに、この疑問は読者もよく思う疑問なので、気を付けよう。
多少の設定矛盾と違い、設定ミスマッチは読者離れが激しいので、やりたい事を追加する場合は気を付けよう。
尚、追加オーケーの場合はこうなる。
・熱烈歓迎美少女ハーレム
で、こんなツッコミが来る。
「一夫多妻オッケーなの? 駄目ならダメで、理由あるよね? つか、それ必要なの?」
で、出来る、必要なので、返答する。
・一夫多妻はダメだけど、ちゃんと養えるなら愛人はセーフ! 必要も必要! 戦う男には帰る場所が必要だって、はっきりわかんだね!
とか。
・愛人セーフ理論+飛行機乗りはモテるから、愛人をよく持つよ! 主人公もそうなるかもね!
と、こじつける。
脳内のツッコミ役が「お、おう」となったら、設定追加だ。
可能性も必要性も半分くらいこじ付けだが、読者も作者も「まぁ、あってもいいかな」と納得できる位ならば、追加してもよい。
これ、説得力と呼ぶ。
説得力はリアリティを呼び、リアリティは小説の面白さにつながる。
ちなみに、リアリティとリアルは似て非なる物なので、要注意。リアリティがあると言う言葉は、読者の「まぁ、そうなんじゃねーの?」と言う言葉なのだ。
長くなってしまったが、肉付けはこんなもんでいいだろう。
次は、設定から産まれる登場人物の作り方だが、それはまた次回と言う事で。