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宜しくお願いします。

 顔をあげたフローティア嬢は一瞬、ほんの一瞬だったが、ガルネィクをはっきりと見つめた。すぐに逸らしてたけど。

 その瞳に浮かんだ感情までは窺い知ることは出来なかったけど、彼女なりに思うところあるんだろう。立場的にも個人的にもね。


 さて、彼女がせっかく阿呆を黙らせてくれたんだ。このタイミングを逃す手はないよね。ギルをちらりと見れば、小さく傾き『行け!』とばかりに顎をしゃくってきた。長いつき合いとはいえ、僕への態度ヒドくないか?

 ムッとして動かない僕の脇腹を、今度は肘で突いた挙げ句、またもや顎をしゃくるギルの腹に拳を一発打ち込んだ。スッキリした気分で足を踏み出した僕に、呻きひとつ洩らさず、平然と全然堪えてないギルも遅れることなく横に並んだ。素晴らしい腹筋をお持ちのようで……チッ!


 今回の件は厳守事項に抵触しているとはいえ、お粗末極まりない茶番としかいえない内容だから、卒業生なら卒業取り消し退学のところを留年。在校生なら即退学のところを評価の大幅減点の処分が学園側の協議でおそらく下りるだろう。

 今後の巻き返しが大変だけど、そこは本人達が頑張るしかないよね!その際、彼らの阿呆改善や性根を叩き直すなんてのはしない。学園の管轄外だ。


 この学園は学び、才を伸ばすことに特化してる故に、指導側も生徒も、貪欲に熱心に学園生活を送る。

 生徒は卒業を目標にする者が大半だが、なかには恵まれた環境に最長限度の十年間居座り、己れの才の研鑽に励む者もいる。指導側も実力を伴った高名な人物が名を連ねている。彼らのほとんどが現役で本業と指導に情熱を注いでいる。

 生徒は各段階の基礎を学びながら各自指導教官に経過と結果に対する評価、疑問点の質疑応答、実技指導、そして自ら設けた今後の予定と課題へアドバイスを貰う。

 生徒の自主性ありき、個人評価が大前提なのだ。手取り足取り、これをしろ、あれをしろの流れに乗れば卒業出来る温い学園ではない。学年で何番という評価ではない。

 各々が試行錯誤しながら今の自分への課題を設け、指導と助言を受け、クリアしていく毎日の積み重ねの結果と成果を評価される。

 そこには生活指導する時間など入る余地はない。教えをこう態度に問題があれば各指導教官が初見時にガツンと厳しく矯正。対教官以外の生活態度などの躾のなさは親の至ら無さで教官は関知しない。

 孤児など親がいない者達は字が読めないなどがあるため、休養日に常識なども含めて希望者を集めて教えている。学園側に躾を丸投げする育児放棄の勘違いの輩とか断固拒否だ。

 だから、今回の阿呆達についても迷惑が直結する自国のお偉いさん達で頑張ってくれ!


 因みに、ジョーシルバー学園では入学時に学園生カードを発行している。生徒はカードに自身の魔力を流し、それに精霊が丸い印を押してくれる。当然、えげつなさは石と同じだ。

 そのカードは卒業時に卒業印を押され――これは学園長が押す――ジョーシルバー学園卒業証明カードとして、卒業生に渡される。今後の人生光差すね!

 学園を退学になる者は滅多にいない。退学者はもちろん学園生カードを剥奪されるから、学園に入学した誉れを示す証はないということになる。限定の認可印の石は取り上げられないけど、卒業者との評価と人生の差は明らかだ。

 だから皆、厳守事項遵守はもちろん、他の諸々ある規範も破らないよう己れを律して過ごす。人生かかってるから、そりゃ気をつけるよね!もちろん息抜き、余暇もしっかり取るよ。張り詰めるばかりじゃしんどいし続かない。緩急大事。


 こんな感じだから、生徒達は大抵が色恋沙汰は二の次だ。淡い想いが生まれることもあるだろうけど、自分も相手も人生かかってるから恋心は胸に秘めて精進する。

 で、卒業認可がおりる時期になると告白目白押し。悲喜こもごもの結果だけど。うん、青春だー。甘酸っぱいねー。

 これに、この阿呆達も乗ってやらかしちゃったのかな。胸に秘めも精進もしていなさそうだけど。とにかく、こいつら回収して卒業パーティー再開としないとね。


「ずいぶんとまぁ、はしゃいだねー」


「な、なんだ貴様はっ!?」


 ぽかりと、パーティーのそこだけ小さく開けた茶番会場に足を踏み入れた僕に、ガルネィクが反応した。フローティア嬢の一喝にビビったまま、大人しくしてりゃいいものを。

 反して、フローティア嬢は僕ら二人の姿を見るや、素早く礼の姿勢をとった。この場に介入してきた僕らのことを正しく理解しているからこその態度だ。

 そう、僕らが学園側の立場だということをね。周りもようやく収拾がつくと、安堵に空気が弛んだ。

 今、介入するのは学園側の者のみと皆が理解してるのに、やはり阿呆達だけは分かっていないようだ。忌々しそうにこっちを睨んでくるとか……憐れみを感じるレベルの阿呆さだな。

 

「卒業パーティーで、婚約破棄宣言かーらーの断罪劇まで繰り広げるとはね。はしゃぎ過ぎだよ。ここが君達の自国なら、どれ程やらかそうが構わないよ?自国でならね。仮にもジョーシルバー学園の生徒が、卒業パーティーの場を乱すのは、如何なものかな?そちらのご令嬢の言うとおりに、速やかにこの場を辞すべきだね」


 ガルネィクが叫びだそうと息を吸い込んだタイミングを狙いすまして、僕は話しだした。阿呆に喋らすわけないでしょ。話しながら警備長に確保退出を目配せする。

 別室に隔離したら、素早く協議してすぐさま簡潔に学園側からの決定を伝えてやるから、僕達が別室を退出するまで黙っていてくれたらいいよ。

 ……と、思っていた僕だけど、ガルネィクが顔を歪めて言い放った言葉に、僕とギルはもちろん、会場全体が凍りついた。


「無礼な!人族の、王族たる私達の事柄に口を挟むな!魔物と人の間の穢らわしい獣がッ!」








お読み頂きありがとうございます。


(;゜Д゜)亀進行の病が……


次回は2~3日後に投稿予定です。

今後とも宜しくお願いします。

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