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宜しくお願いします。

「……もう、お止めなったらいかがかしら?」


「何だと!?証拠はまだまだあるというのに……そうか、分かったぞ!さては数々の証拠に恐れをなしたな!」


 いざ行かん!と、踏み出した僕とギルの出鼻を挫かれてしまった、だと?フローティア嬢ー、お願いしますよー。

 狙い済ましたようなタイミングに、思わず二人して立ち止まっちゃったじゃない……トホリ。

 まさか、この状況で動く者がいるとはねー。誰も動けない状況のなか、動くことが出来るのは当事者のフローティア嬢だけだった。

 だけど、彼女は状況を理解しているだろうからこそ、動くことはあるまいと思ってたんだよね。だからこそ、僕らは驚きに足を止めてしまったのだ。

 しびれを切らしたとかが理由じゃないだろう。……多分ね。どうでもいい話を聞き続けるしかない会場にいる者達への申し訳なさからか、仮にも自国の王太子がやらかしたことに対する婚約者としての責任感かは分からないけど、まあ両方あるだろうね。

 よもやガルネィクに対する愛情から……は、無さそうだね。うん。彼女自身のうんざり加減も相当溜まってそうだ。終わりが見えない退屈な時間ってしんどいよねー。わかる、わかるよー。


「あら、何を恐れることがございましょう。この件に関して、わたくしに恐れる理由など全くございませんわ。わたくし、最初から一切覚えのないことと申しておりますもの。まさか、お忘れではございませんわよね?」


「これらの証拠を前にまだ足掻くか!」


「ですから、本人の証言のみでは確たる証拠とはならないと申しております。本人のみが示す証拠の品も然りです」


 もはや、フローティアはうんざりとした声音を隠さず、溜め息とともに吐き出した。この堂々巡りのやり取り、飽き飽きだよねー。


「マリーの証言を蔑ろにする気か!」


「涙ながらに告げたマリーの勇気ある証言を否定するとは、フローティア様とて許せん!」


「フローティア様はどうして自分のしたことを認めないのかなぁ〜。素直にごめんなさいって謝って欲しいなぁ」


「……そう。早く、マリーに……謝る、べき……です」


 お前ら何言ってんの?本気で言ってんの?また繰り返すつもりなの?やーめーてー!周りにいる皆の顔、見てみなよ。って、周りの見えない、空気も読めない阿呆だったわ。

 皆の心の声は『まだ言うか!』の一致に至ったと思う。フローティア嬢……ねえ、口開いてるよ。あ、閉まった。

 僕の気のせいであって欲しいけど、口閉じた後の彼女の眼が一瞬ギラついたような……うん、気のせいだよね。


「ひとつ、貴方方に教えて頂きたいことがございますの」


 フローティア嬢は今までとは打って変わって、にっこりと楽しいことでも思いついた少女のように阿呆達に問いかけた。

 その微笑みに、ちょっとぞわっときたのは絶対に僕だけじゃない!ギルだって尻尾がちょっぴりブワッて逆立ってるし、他の人も腕を擦ったりしてる。鳥肌ものの笑顔って……。


「先程から幾度となくお名前が出ているマリー嬢ですが、どちらにいらっしゃるのかしら?」


 阿呆達の返事を待たず発せられた彼女の言葉に、マリー嬢本人の発言もなく気にもしてなかったが、そういえば確認してない。やべぇ。

 素早く会場内の視線の動きを探ったが、それらしき人物への視線の集中はなかった。まさかの不在かよ!


「所在を知って、何をするつもりだ!マリーには指一本触れさせん!」


 ガルネィクが右腕をバッと横に払うように勢いよく振り、身体を左側にねじって声を張り上げた。

 いちいち大袈裟にポーズ決めるの止めてくれないかな。危うく吹き出しそうになっちゃったよ。ぷふ。


「何をするつもりもございませんわ。ただ、マリー嬢がどなたか確認したかっただけですもの。そもそも、わたくしはマリー嬢というお名前の方を存じ上げませんの。面識もない方のおかげで今の状況なのですから、お顔のひとつも見たいと思うのも当然でございましょう?本当に、単なる、つまらない、興味からですわ」


 はーいー?今、なんて?え、フローティア嬢、マリー嬢のこと知らないの?嘘でしょ!?

 本当なら、冤罪と分かってて、茶番につきあってったってことだよね。何考えてんだか分からないけど、言い切った時の笑顔は凄みがあって、ぞわぞわしたわ!


「しっ、知らないだとっ!ぬけぬけとっ!!」


 阿呆達が更なる阿呆面晒した後で、我に返ったガルネィク達は顔真っ赤にして怒鳴り散らした。ちびっこなんぞは地団駄踏んで奇声を発してるし。ちびっこ風なだけでしょ。地団駄とか、歳いくつだよ?(笑)

 対するフローティア嬢はどこ吹く風と澄まし顔で、あれは完全に聞き流してるな。なんせ興奮がひどすぎて何言ってるか分かんなーい。それが正解だね。


「お黙りなさいませ!わたくし達はこの場を速やかに辞すべきでございますわ。……皆様、卒業という喜ばしい場を乱し、誠に申し訳なく思います」


 閉じた扇をパシリ!と、掌で打ち鳴らし、阿呆達に一喝、黙らせた。そして、即座にフローティア嬢は四方に謝罪の礼をとった。


 






 

お読み頂きありがとうございます。


ありがとうございます♪完結まで頑張ります!

次回は2~3日後に投稿予定です。

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