3
タグに本編のネタバレ要素有を追加しました。
一部差別的な表現があります。抵抗がある方はブラウザバックしてください。
では宜しくお願いします。
4/9 修正しました。
この学園はジョーシルバー様の望みで創設された訳だけれど、実際に会った者は世界中探しても、ただの一人もいない。
誰も姿を見たことない存在の望みを叶えるなんて、普通なら絶対しないよね。詐欺に自らあうようなことなんて、誰もしないのが当然。僕だって御免こうむる。
なのに、なぜ存在を確信して望みを叶えたか。そもそも、その望みを如何にして知り得たのか。不思議だよね?普通はね。
さあ思い出して。ここは特別で不思議な学園だよ。ただ学園を創設しただけで、そこを精霊が集い守護するかい?学園都市を囲む高い壁の四方にある日突然、ゴーレムが現れる?
なぁに簡単なことさ。精霊に愛され慕われる存在が望んだことだから、精霊が、ゴーレムが守護するのだ。
存在しない者の望みを叶えたとしたら、彼らが現れ守護することなんか決してない。すなわち、確実に存在しているってこと!
さて次に、ジョーシルバー様に会った者は皆無であるのに、如何にして望みを知り得たのかって件についてだ。まず皆無という点においてが、正しくもあり誤りでもあるってとこなんだよね。
会ったことがある者はいる。ただ、実際に会ったことがある者はいない。はい、夢の中で会っているのです!ただの夢かよってツッコミはいりません!
あのね。ただの夢で、目が覚めたら夢の中で授かった物が現実にあったりする?しませんよねー?それを成し遂げちゃうのがジョーシルバー様なんだ。
それは物ばかりじゃない。かといって、知られざる知識だとか膨大な魔力やらを授けられるとかじゃないよ。お伽噺じゃあるまいし。
例えば、己れの先に迷い足掻く者に光差す道標となる助言を授けたとか、ある者には叱咤激励、また苦境に喘ぐ善き者への救いの願いなど様々だ。
中でも、菓子を頂いたとか子供の名を授かるなんてのは、微笑ましくも羨ましい!特に菓子!
わりと身近で親身な内容だよねー。学園みたいに壮大な事柄もたまにあるけど、これについては関わる人が増えた結果と状況によるものだ。有り体にいうなら、ジョーシルバー様への溢れる気持ちが溢れかえった者達の結果だ。愛だね!
そんなジョーシルバー様だけど、夢で会ったことがある者達によると、凄い存在なのに全然偉ぶってなくって、むしろ近所の兄ちゃん姉ちゃんみたいに気さくで驚くってのも有名な話。
そう、兄ちゃん姉ちゃん。ジョーシルバー様はお一方じゃなく、なんとお三方。ご兄妹でいらっしゃるのだ。お姿は虹色の光を纏われて眩く光輝いていて、見ることはできないんだけどね。残念。
タケ様、ハル様、リン様と御名がそれぞれ世に伝わっている。すなわちジョーシルバー様とはご兄妹を示す御名なのである。
ちなみにタケ様が長男、ハル様が次男、リン様が末っ子の妹とのことで仲も大変よろしいらしい。これらも常識だね。
親近感あるジョーシルバー様は、光栄なことに僕ら獣人族をいたくお気に入りなんだ。夢の中で会った獣人はもれなくナデナデ♪他の種族では皆無な対応だ。自慢?もちろん自慢だよ!ふふん♪
でも嫌な話もある。獣人族はね、ずいぶん昔には人族とかに迫害されて、かなり数を減らしたそうだ。『獣』とか『魔獣と人族の間の穢れたモノ』とか、ほざきやがってね!どこの何様だ!
獣人族の誇りも生きていく希望も擦りきれて、滅びを待つのみだった僕らの先祖の窮地を救い、再び誇りと希望を甦らせてくれたのがジョーシルバー様なんだ!
ご自身が守護する土地に獣人族が住むことをお許しくださった。
あの方達がいてくれたから、今の世は獣人族が迫害されることなく、誇りを踏みにじられることなく希望をもって、生きている。
人族とかと何の遺恨もないとは言えないけど、今はまあ、そうだねぇ。善き者達とは、仲良くしてるよ。僕も人族とか獣人族以外の友達いるしね。
善き者達以外とも険悪な訳じゃないけど、付かず離れず、互いに深く関わらないようにしてる感じだね。用心に越したことはない。
だけどまあ、頭の悪い輩もいる訳で……あ、こちらからは事を起こすことはないよ。こちらからはね?
「……ティカ。そろそろ戻ってこい」
「……見てるし、聞いてるー。僕はどこにも行ってないですー。飽きてたりしてませーん。ギルは失礼だと思いまーす」
ポリポリと菓子を頬張りながら茶をグビッとね。あーあ、すっかり温くなってるよ。会場の空気と同じくね。
「だらける気持ちは分かるが、シャンとしろ」
「……無理ー。もう飽きたー」
「やっぱり飽きてるじゃないか……まあ、俺だってうんざりだ。いつまで続くんだ」
僕達がだれまくりの現状を説明しよう。間違えた。阿呆除いたパーティー会場にいる全員がだれまくりが正解だ。
あの後、誰にも求められてないのに、阿呆四人がフローティア嬢に証拠の詳細説明を始めたんだよね。本人達は悪の令嬢を追いつめる正義の審判気取りです。安定の空気を読まない阿呆っぷり。
フローティア嬢がマリー嬢に対して、この日にこう言った、あの日にああ言った。この日には教科書を切り裂かれ、その証拠の品がこれだ!……と、チマチマと証言の説明をしているんだ。勘弁してほしいよね。
だらだらと続く合間には、マリー嬢の健気に耐える様子やら悲しみにくれる姿に、如何に自分達が心を痛め、言葉を尽くして慰めたか。マリー嬢への美辞麗句も盛り込んでくる。やーめーてー!
呆れを通り越して、パーティー会場にいる者は皆うんざりだ。かといって、誰も止めようとはしていない。嫌気がさしているのは明白だが、皆傍観に徹している。阿呆達の親ですらも。
茶番を止めたくない訳じゃない。現に阿呆達の親達は一様に蒼褪め、ある者は歯軋りし、またある者は固く拳を握りしめ、また嗚咽をこらえて前を見据える者などばかりだ。親はまともそうで、何より。
彼らは関われない。今、この場で起きている茶番を止めることは許されないからだ。
明らかに茶番としか言い様のないお粗末さであろうとも、学園の厳守事項に抵触する事案であるからに他ならない。
今回の場合、三番目の『他者を陥れる』と四番目の『横恋慕と不貞』に抵触するだろう。場合によっては『学生らしく精進してなかった』と見なされて、一番目にも引っ掛かるかもね。
「ティカ待て。菓子屑ついてるぞ……頼むからシャンとしろ」
「母ちゃんかよ?!……うぇっ!シャンとするっ!」
一歩踏み出した僕の襟首を、すかさずギルが引いてたたら踏む。なんだよっと振り返ったら、呆れた眼差しのギルに口元を指で拭われた。
子供かよって自分にツッコミ、流れの勢いでギルへのツッコミが口にうっかり出たら、ギロリと睨まれた。ほんと、母ちゃん並みにこえーよ!
「……よし!ギル、行こうか!」
お読み頂きありがとうございます。
二話目もたくさんの方々に読んで頂き、更にブックマークと評価も!
ありがとうございます!嬉しいです!
完結まで頑張る励みになります♪
また本編もブックマークありがとうございます!
次回も2~3日後に投稿予定です。
今後とも宜しくお願いします。