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『約束を守っていただけなのに、なぜか天下が近づいてきました。』〜和議の娘と、遅刻魔の韋駄天〜  作者: 藤乃澪
第一章 藤本初盟

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第一話 戦わずに済むなら、それが一番

「……女?」

敵城の広間に通された藤本澪を見て、最初に飛んできた言葉はそれだった。

「はい。女ですけど」

澪は何でもないように答えた。

戦国の世で、女が敵城へ赴き、当主や重臣を相手に和議をまとめるなど珍しいことだった。

侮られている。それは澪にも分かっていた。だが警戒されるより、話しやすい。澪は地図を広げ、「欲しいのはこの土地ですか。それとも、こちらが攻めないという安心ですか」と問いかけた。領地を奪えば新たな国境が生まれる。安全が欲しいなら、砦を増やさない、一定数以上の兵を集める時は互いに知らせる。その方が話が早い。

「何を根拠に信用せよと?」

「一回約束破った人と、次また話し合いたいと思います?」

広間に笑いが起こった。こうして、半年間の試験的な盟約が結ばれた。後に『藤本初盟』と呼ばれる最初の一歩だった。

帰城した澪を待っていたのは、多々見友政だった。

「おそ」

「いや、間に合ったやろ」

「集合の刻限から半刻過ぎてるけど」

後に夫となる男との、長い長い戦いもまた、この頃から始まっていた。

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