アルアナ教の僧侶、バッシュ
「カナ、このお店美味しいんだよ……!」
温泉を出たあと、私とミーナは食事を取るため、宿を出て、とある食堂へとやって来た。
この店の看板には「ウサギ亭」と書かれており、外からでもいい匂いが漂ってくる。
店内に入ると、ミーナが人気店と言っていただけあり、店内は賑わっていた。
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「これっ!これが美味しんだよっ!」
空いている席に座ると、ミーナがメニューに書かれている「ウサギ肉の山賊焼き」というのを指さしていた。
「おや……?貴女方は……」
店員にウサギ肉の山賊焼きを注文して待っていると、不意に声をかけられたので、声のした方へと顔を向けると温泉で会った僧侶の姿があった。
さっきまで温泉で散々説教を説かれた後だったので正直あまり関わりたくはないが、邪険にするのも気が引けるなぁ~……。
「ここでもお会いできるとは偶然ですね。そう言えばまだ自己紹介をしておりませんでしたね、私はバッシュと申します」
僧侶……もとい、バッシュさんは丁寧にお辞儀をしていた。
「私はカナ、ラウルから来た冒険者です」
「ボクはミーナだよ。同じく冒険者で武闘家だよ」
「カナさんとミーナさんですね、もしよければおふたりの旅の目的などをお聞きしてもよろしいですか?私はランザにあるアルアナ教の聖地へと旅をしております。」
「アルアナ教……ですか……?」
聞いたこともない地名と宗教名を聞いて、私の頭の中に大量のハテナマークが浮かぶ。
「ご存知ありませんか……?女神アルアナを絶対神として信仰する宗教で、ランザはその聖地なのですが……」
「アルアナ教と言えば、有名だけどカナは知らないの……?」
「えっと……その……、知らない……」
バッシュさんどころか、ミーナにも驚かれる。
この世界ではわりとメジャーな宗教なのかも知れない……。
「もしよければ、教典を差し上げましょうか?一冊千エントですが……」
バッシュさんはどこからともなく教典を取り出した。
「いえ、私は無宗教なので……」
「そうですか……」
私が断ると、少し淋しげにその教典をどこかへとしまっていく。
本当にどこから出し入れしているんだろう……?
「えっと……、私の旅の目的は元の世界に帰ることです。私は別の世界からこの世界に飛ばされて、帰る手段を探しているんです」
信じてもらえるかどうか分からないけど、とりあえず旅の目的を話すことにした。
何も言わないと、今度はアルアナ教の話が始まるかもしれないと危惧したからだ。
「異世界の方……ですか……?にわかには信じがたいですが、それでしたらアルアナ教をご存じないのも頷けますね」
「へぇ~……。そう言えば、カナって名前も変わってるもんね」
意外と信じてもらえた……。
確かにこの世界では、日本人のような名前の人はまずいないので珍しいと言えるだろう……。
「次はボクの番かな……?ボクはラウルに用事があって行ってたんだ。それが済ませてリーツェに帰る途中だよ」
ラウルに用事……?
その割にはミーナのような人は見かけなかったな……。
冒険者ギルドとは違う所に用事があったのかな?
まあ、ラウルも人が多いから例えどこかですれ違っても分からなかったかもしれない。
「おまたせいたしました。ウサギ肉の山賊焼きで~す」
ミーナの旅の目的の話が切りの良いところで終わった頃、丁度頼んでいた料理がやって来た。
ミーナが言った通り、食欲をそそる美味しそうな匂いがする。
「おっと、つい長居してしまいましたね。それでは私はこれで失礼致します」
バッシュさんは最後にお辞儀をすると、ウサギ亭を後にした。
その後、ウサギ肉の山賊焼きを食べるととても美味しかった。
◆◆◆
その日の夜、宿屋の部屋に戻るとそれは起こった……!
「カナっ!勝負だ……っ!!」
ミーナが枕を持って宣戦布告をして来た……!
どうやら枕投げがしたいらしい……。
「ミーナ……、明日も馬車の時間が決まってるんだから早く寝ようよ……」
修学旅行じゃないんだし、早く寝たい……。
「ふふん……!そんなこと言ってボクに負けるのが嫌なんでしょ……っ!」
「ぶふ……っ!?」
ミーナは不敵な笑みを浮かべながら私の顔目がけて手に持っていた枕を投げつけ、それは私の顔へと直撃した!
「よし……!当たったっ!」
そして、ガッツポーズを取るミーナ。
ふ~ん……、本当に投げてくるんだ……。しかも顔めがけて……!
「ミーナ……!お返しだ……っ!!」
「んぎゃ……っ!?」
私は投げつけられた枕を投げ返してミーナの顔に直撃させる。
「カナ……っ!よくもやったね……っ!」
「先に仕掛けたのはそっちでしょ……っ!?」
「こうなったら手加減しないよ……っ!それ……っ!!」
「はい、ハズレーっ!」
「あー!枕2つ持つなんて卑怯だよ……っ!!」
「何とでも言いなさい……っ!!」
「ぶぎゃ……っ!?」
こうして、私とミーナの夜の枕投げ対決が始まり、それは深夜まで続いた。
そして、最後はいつの間にかお互い枕を抱いたまま寝てしまっていたのだった……。
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