ゴブリンの巣穴
「ゴブリンってどんな感じですか?」
村を出た後、夜の平原を歩きながら私は気になったことを尋ねてみることにした。
「ゴブリンは洞穴を棲処にして集団で住む亜人の一種よ。単体では弱いけど、脅威なのはその数ね。群れると厄介よ。もしかしたらホブゴブリンもいるかもしれないわね……」
「ホブゴブリン……?」
「ゴブリン達のボスみたいなものよ」
『ゴブリンが人を襲う理由は繁殖のためだ。奴らは他の種族の女を攫って子を産ませるのだ』
「それは、冒険者も例外じゃないわ。ゴブリンの集団に返り討ちにあって襲われたって事例もあるわ」
なら、私も気をつけないと、最悪大変な目に遭うということだ……。
「ところで、テリーさん。方向はこっちで合っているのかしら……?」
「ああ、間違いない。このゴブリンの巣穴は森の方に続いている。コボルト族は鼻がすげえ利くんだ。俺に任せとけ!」
ミリアさんの質問にテリーさんは自信満々に答えていた。
私達はテリーさんの嗅覚に従い、ゴブリンの住処を目指して森へと入っていった。
森へと到着すると、動物や鳥の鳴き声が聞こえてくる。木々の隙間から月明かりが差し込み、馴染みのあるラウルの街の近くの森を彷彿とさせる。
しかし、近くにある森とは違う所もあり、低い木や草などがあまり生えてはいない。
木々も木の皮が何かに食べられたのか、噛みられているような感じすらある。
「この森には鹿が多く生息しているようね」
ミリアさんが、木の幹に手を当てている。
「鹿が……ですか……?」
「ああ、そうだ。以前までは村の人達で鹿を狩りに行ったりしてたんだが、ゴブリンが出てからは近づけなくなったんだ……」
テリーさんが、悔しそうに拳を握りしめていた。
夜の森を進んでいると、すぐ近くに巨大なキノコのような魔物の姿があったため、私はすぐさま剣を抜いた……!
「待って!カナちゃんっ!」
斬りかかろうとした所、ミリアさんに止められた。
「ミリアさん……?」
「あれはマタンゴの一種よ。大人しい魔物で何もしなければ襲っては来ないわ。それに、種類によって媚薬の胞子や毒の胞子、痺れ胞子に睡眠胞子を飛ばして身を守るから気を付けて」
確かによく見れば、マタンゴと呼ばれた魔物はこちらの様子は窺ってはいるけど、襲って来る様子は無い……。
私は剣を鞘へと収めると、先を進むことにした。
◆◆◆
森の中を進むこと暫らく、切り立った崖の下に洞穴のようなものが口を開いている。
「ここだ。ここがゴブリンの巣穴だ……」
テリーさんが洞穴の近くの森に身を潜めて指差す。
その洞穴には見張りなのか、二匹のゴブリンが立っていた。
(あれがゴブリン……?)
緑色の肌をして、身長は大体1メートルちょっとくらいだろうか……?
頭には毛がなく、耳が尖っている。
目付きは鋭く、手には古びた片手剣のようなものを持っている。
「ありがとうございます、テリーさん……」
「いえ、それでは村の女達の救出をお願いします。それじゃあ、俺はこれで……」
私がお礼を述べると、テリーさんはそれだけを言い残し村へと帰っていった……。
私は剣を抜いて洞穴に近付こうとすると、ジェストさんに止められた。
『まて……、迂闊に行くと仲間を呼ばれかねん……』
「なら、私の出番ね……。」
ミリアさんはゴブリンに見つからないように魔力弓を構えると、魔力の矢を一つ放った。
その矢は2つに分かれ、2匹のゴブリンの頭を撃ち抜く。
頭を撃ち抜かれたゴブリンはそのまま絶命し、倒れた。
「ま、こんなものね……」
「では、今のうちに行きましょう……っ!」
私達はゴブリンの巣穴と思われる洞穴へと向かう。
---
洞穴の中はそこまで広くはなく、高さは2メートルとちょっとくらい。
ジェストさんがギリギリ立てるくらいの高さだ。
横幅も人が両手を広げるとギリギリくらいの狭さだ。
アラクネの洞窟とは違い、ここは天然の洞穴のようだった。
洞穴からは湿気が漂ってきはするが、冷気は来ない。その代わり、ゴブリンのものと思われる悪臭が漂っていた。
「臭い……」
洞穴に入るとその臭いは中に充満しているのか、さらに酷い。
鼻が曲がるとはまさにこの事だ。
「本当に臭いわ……。臭いが髪や体に染み付いてしまいそうね……」
『そうか……?俺は全く匂わんがな……』
匂いが分からないジェストさんには全く関係ない問題らしい……。
洞穴を進んでいると2匹のゴブリンが現れた!
「ギギ……!ニンゲン……っ!?メス……!トラエロ……っ!」
片言の言葉を発して襲いかかってきた。
「はあ……っ!」
私は剣を抜くと襲いかかってきた一匹のゴブリンを袈裟斬りにして倒す。
『は……っ!』
ジェストさんは大剣ではなく、どこで拾ったのか、古びた片手剣でゴブリンを倒していた。
「ジェストさん、それどうしたんですか……?」
『この中では大剣は振るえんからな。さっきミリアが倒したゴブリンのを拾った』
どうやら入口のゴブリンから取ったようだ。
「それにしても……、中は薄暗いわね……。あまりよく見えないわ……」
中は薄暗く、入口あたりは外から入る光でどうにか見えていたが、奥に進めば進むほど暗くなり、壁に松明が付けられている以外は灯りがなかった。
『俺は、はっきりと見えるがな……』
そう言えば、ジェストさんは暗いところでも問題ないくらいはっきりと見えるんだったな……。
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洞穴をさらに進んでいくと道が2つに別れている。
右に行く道と、左に行く道だ。
「分かれ道ね……」
『カナ……、どっちへ進む……?』
右か左か……、う~ん……。
「左に行ってみましょう……」
私達はひとまず左の道へと進むことにした。
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