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ダンジョンでの一夜

 左の道を進むと、広間のような場所に出た。

 足元には骨が散らばっているが、人骨ではない。


「この骨……オーガグリズリーね」


「えっ、大蜘蛛ってオーガグリズリーより強いんですか?」


『場所によるな。森や平地で正面から戦えば、オーガグリズリーの圧勝だ。

奴らは素早いし、その爪は鋼鉄すら引き裂く。だが――こういう暗いダンジョンでは話が変わる。ここでは大蜘蛛のほうが圧倒的に有利だ』


 つまり、ここに迷い込んだオーガグリズリーは大蜘蛛にやられたということだ。

 もしかしたら、この世界に来たばかりの頃、私を襲ったオーガグリズリーは命からがら大蜘蛛から逃げて来たのかもしれない……。


 逆に言えば、ここにオーガグリズリーの骨があると言うことは、このダンジョンはオーガグリズリーがいると言う北の地へと続いていると言う事になる。 


「ちょっと待って。ということは……この広間にも大蜘蛛が……?」


『ああ。天井に三匹いる』


「ちょっ……!そういうことは早く言いなさいよ!みんな目を閉じて! 『フラッシュボム』!」


 ミリアさんが光の魔法を放つと、広間が一瞬真昼のように明るくなる。

 続けて魔力弓を構え――


「はあっ!!」


 放たれた矢は三つに分裂し、大蜘蛛の頭を正確に撃ち抜いた。

 落下した大蜘蛛は動かない。


 念のため、ミリアさんが炎で焼き払う。


---


 広間を抜け、さらに通路を進む。


「思ったんですけど……なんで大蜘蛛は森に出てこないんですか?」


「大蜘蛛は光を嫌うのよ。それに、このダンジョンには冒険者が勝手に来てくれる。外に出る必要がないの」


『大蜘蛛にとって冒険者は最高の餌だ。挑みに来る者を待っているだけでいい』


「えっ……じゃあ今までに多くの人が……?」


『まあ、そうなるな』


「たぶんこのダンジョンも前から見つかってはいたんでしょうけど、行ったきり帰ってこない人が多かったから未発見扱いだったんじゃないかしら?」


「え……っ!?じゃあ、ここって凄く危険な場所じゃないんですかっ!?」


『まあ、そうなるな……。並の冒険者なら大蜘蛛に喰われておしまいだ』


 ミリアさんもジェストさんも平然としているが、私は背筋が寒くなった。



◆◆◆



 いくつもの通路と広間を抜け、大蜘蛛を倒し続けた末、行き止まりに着いた。


「はぁ……はぁ……。こ、この辺りで休憩しませんか……?」


「そうね……、この道はもう行き止まりみたいだし、ここで仮眠を取りましょう」


『なんだ、もう疲れたのか?俺はまだまだ疲れてないぞ。というか、この体は疲れ知らずみたいだな……』


「そりゃ、リビングアーマーが疲れるわけ無いわよ……」


『……それもそうか。なら、食事を取って仮眠しておくと良い。見張りは俺に任せておけ。何かあれば起こす』


 ジェストさんが背負っていたカゴを下ろす。


「ジェストさん、お願いします……」


「さて、カナちゃん。食事にしましょう。今日は兎の干し肉よ」


「調理はどうするんですか?」


「焼くだけよ。炎の魔法で十分」


 ミリアさんが干し肉を炙り、私も真似して焼く。

 保存食ばかりだが、空腹にはありがたい。


---


 食事を終え、仮眠を取ろうとするが――寒い。

 マントをかぶっても震えが止まらない。


「カナちゃん、眠れないの?」


「はい……寒くて……」


「なら、こっちにいらっしゃい。体温を合わせれば少しは暖かいわ」


「……はい」


 ミリアさんのそばに寄ると、そっと抱き寄せられた。

 その体温がじんわりと伝わってくる。


(あ……暖かい……)


 安心して身を預けた――そのとき。


(ん……?)


 ミリアさんの手が、私のお腹のあたりをポンポンと触ってくる。


「あ、あの……ミリアさん……?」


「ふふ、緊張してるのかと思って。こうしてると落ち着くでしょ?」


 ミリアさんは悪戯っぽく笑いながら、私の背中を優しく撫でてくる。

 距離が近すぎて、顔が熱くなる。


「ちょ、ちょっと……! 近いです……!」


「寒いんだから仕方ないでしょ?ほら、もっとくっついたほうが暖かいわよ、カナちゃん♡」


「ジェストさん……助けてください……!」


『……俺は見張り中だ。知らん』


「カナちゃん、遠慮しないで甘えなさい。ほら、今日もい~っぱい可愛がってア・ゲ・ル♡」


「ひ、ひぃぃぃーーっ!!」


 結局私は成す術もなく、またミリアさんに襲われてしまうのだった……。(泣)

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