冒険者ディン
「本当に、こんな所にオーガグリズリーなんて出るのかよ……」
俺、ディンはぼやきながら、冒険者ギルドの依頼でラウルの街から少し離れた近場の森へ仲間と共に来ていた。
ラウルはこの辺りでは中規模の街で、多くの冒険者達の拠点にもなっている。
俺もその一人で、今回は女魔道士のセーラ、弓使いの男エルフのアルト、女盗賊のダークエルフのサラ、そして剣士の俺の四人で森へ来ていた。
「さあな……。だが、一匹だけだが目撃情報は出ているみたいだぜ……」
後ろで手を組みながら歩くアルト。
「でも、オーガグリズリーってここより遥か北に住んでる種でしょ?なんでこんな所にいるのよ?」
頬に手を当てながら歩くセーラ。
「多分、食べ物が少ないんでしょ? でも、この辺りに居着かれたら街の人達にとっては脅威でしかないからね」
腕組みをしながら歩くサラ。
「ま、そういうことだな……」
俺も頷く。
この森は街から近く、日中は危険な動物や魔物も少ないため、新米冒険者や街の人達が食材や薬草、建築資材を取りに来る場所だ。
そんな所に、食物連鎖の頂点に君臨するような危険な猛獣――オーガグリズリーが現れたとなれば、ギルドが討伐依頼を出すのも当然だ。
一頭だけならまだしも、複数入り込んでいたら並の冒険者では返り討ちになる。
だからこそ、俺達のような凄腕パーティに依頼が回ってきたわけだ。
---
捜索を始めてしばらく森を歩くが、痕跡が見当たらない。
(本当にいるなら、糞とか獲物の残骸があるはずなんだが……。もっと奥か……?)
「き……きゃーーーっ!!!」
半信半疑で歩いていたところ、どこからか女の悲鳴が聞こえた。
距離はそう遠くない。
「おい!ディン、聞こえたか……っ!」
アルトの声に、俺達は一斉に頷く。
もしかしたら誰かがオーガグリズリーに襲われているのかもしれない……!
俺達は悲鳴の方向へと走り出した。
◆◆◆
「あ……あぁ……」
悲鳴の聞こえた場所へたどり着くと、見たことのない服を着た女の子が一人、恐怖に怯えた顔で座り込んでいた。
そして、そのすぐ近くには、彼女を今にも殺そうとしているオーガグリズリーがいた。
「俺が矢で先制をかける!」
アルトが弓を構え、立て続けに数本の矢を放つ。
矢には風の魔法がかけられているのか、通常よりも速く飛び、オーガグリズリーの腕、脚、頭へと正確に突き刺さる!
「今だ!ディンっ!」
「おおっ!」
アルトの矢が放たれた直後、俺はすでに走り出していた。
オーガグリズリーの意識が女の子から逸れた隙に、腰の剣を抜き、素早く仕留める。
周囲を確認するが、他にオーガグリズリーの姿はないようだ。
「ふぅ……危ないところだったな……。だが、何とか間に合ったようだ。おい、大丈夫か……?」
剣についた血を振り払い、鞘に収めながら女の子に声をかける。
だが反応はない。恐怖で呆然としているようだ。
「こんな所にオーガグリズリーが出るとはな……。餌不足の影響か……?」
周囲を警戒していたアルトも、異常がないと判断して弓を背負い直す。
「大変……!この娘、血が出てる!怪我してるみたいよ……っ!」
セーラが慌てて駆け寄る。
顔に血がついているが、よく見ると鼻血か口の中を切った程度で、大きな外傷はない。
「ねえ!あなた、しっかりして!大丈夫……!?他に怪我はない……っ!?」
サラが声を掛けたところで、女の子は体勢を崩して倒れ込んだ。
どうやら気を失ってしまったようだ。
「とりあえず依頼達成、だな……。しかし、この女の子は一体誰だ……?見たことない服を着てるが……」
「さあな……。だが、このまま置いていくわけにもいかないな」
アルトの問いに答えながら、俺は女の子を背負い上げる。
そして、依頼達成の報告と女の子の保護のため、ラウルの街へ引き返すことにした。
少しでもおもしろいとか、続きが気になるなど、気に入って頂けたら☆☆☆☆☆やブックマークへの登録をしていただけると今後の励みになります!
また、感想をいただけましたら喜んで返信させていただきます!




