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座学

 翌日。

 私は街の地図を見ながら、ペンケースとノートを抱えて図書館へ向かった。


 ペンケースとノートは、オーガグリズリーに襲われたとき奇跡的に無事だったものだ。


 図書館は居住区の広場に建っており、白い石造りの外観で、見た目は三階建てほどの高さがある。

 横幅も奥行きも広く、第一印象は「とにかく大きい」。


 中に入ると、さらに圧倒された。

 天井が高く、棚には膨大な数の本が並んでいる。


「……魔法の本はどこだろう?」


 広すぎて、目的の本がどこにあるのか全く分からない。

 そもそも初めて来たので、どんな分類になっているのかも知らない。


「あら……? あなたは……こんなところでどうしたの?」


 途方に暮れていると、誰かに声をかけられた。


 振り向くと、以前スケベ通りで会ったエルフの女性――ミリアさんが立っていた。


「えっと……あなたは……?」


「ああ、ごめんなさいね。私はミリア。あなたはカナちゃん……だったわよね?」


「そうですけど、どうして私の名前を……?」


「あなたのことはグレンから聞いていたのよ。彼とは昔からの知り合いなの」


 グレンさん、顔が広い……。


「それで、カナちゃんは何か本を探しに来たのかしら?」


「あ、はい。実は……」


 私は魔法を勉強しに来たこと、どこに本があるか分からないことを説明した。


「なるほどね。いいわ、案内してあげる」


 ミリアさんのおかげで、

 光・炎・氷・風・雷の初級魔法、回復魔法、生活魔法、そして“女性向け魔法”の本を見つけることができた。


---


 女性向け魔法の説明


「ミリアさん、この“女性向け魔法”って何ですか?」


「ああ、これはね。女性なら覚えておいたほうがいい魔法よ。特に冒険者ならね」


「どういうことですか?」


 ミリアさんによると、女性冒険者は旅の途中で盗賊や魔物に襲われる危険があるため、

 “身を守るための魔法”がまとめられているらしい。


 その中には、

- 避妊魔法

- 体調管理の魔法(生理痛の緩和、周期調整など)が含まれていた。


「カナちゃんも冒険者として活動するなら、これは覚えておいたほうがいいわ。危険な目に遭ったとき、自分を守れる手段は多いほうがいいもの」


 ミリアさんは真剣な表情で言った。

 それだけ、女性冒険者が危険に晒されることが多いのだろう。


「それとね、この本には体調管理の魔法も載ってるの。生理痛を和らげたり、周期を調整したり……。逆に妊娠しやすくする魔法もあるわよ。好きな人の子どもが欲しいときにね♡」


 さっきまでの真剣な表情から一転、冗談めかした笑顔に戻る。


(生理痛を和らげるのはありがたいけど……妊娠の魔法は今のところ必要ないかな……)


「ちなみに、避妊魔法と妊娠魔法を同時に使った場合は、避妊魔法が優先されるわ。安全性が最優先ってことね」


「なるほど……」


---


 魔法の仕組み


「後はそうね。照明魔法、物を軽くする魔法、治癒や解毒の回復魔法、それから各属性の初級攻撃魔法。これらを覚えておけば、冒険はぐっと楽になるわ」


「でも……私でも使えるでしょうか?」


「心配いらないわ。"この世界は"魔素に満ちているから、呪文を覚えれば誰でも魔法は使えるの。ただし、魔法の強さは本人の“魔力容量(キャパシティ)”次第だけどね」


「魔力容量……?」


 私はミリアさんの言葉に首をかしげた。

 元の世界でもマンガで聞いたことくらいはあるけれど、実際に“魔力容量”と言われてもいまいちピンと来ない。


「簡単に言えば、魔力容量はコップ、魔力は水だと思えば分かりやすいわ」


 なるほど、魔力容量がコップ……。

 つまり、人によって“そのコップに入る分だけしか魔力を使えない”ということか。

 実に分かりやすい。


「なるほど……。ミリアさん、色々教えていただきありがとうございました」


「いいのよ。さて、私はそろそろ仕事があるからお店に行くわね」


 私が深々と頭を下げると、ミリアさんは笑顔で手を振った。


「あ、そうそう。カナちゃんさえよければ、私のお店にもいらっしゃい。い~っぱい気持ちよくしてあげちゃうから」


 ミリアさんはウインクしながら、胸元から名刺を取り出して差し出してきた。


「あは……あははは……」


 私は愛想笑いを浮かべながら名刺を受け取った。


 名刺には「エルフの穴場♡」という店名とミリアさんの名前、そして「またのご来店をお待ちしております♡」というメッセージとキスマークが付いていた。


「気が向いたらでいいから来てね~。じゃあね~」


 ミリアさんはヒラヒラと手を振りながら去っていった。

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