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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第6章 記憶の継承

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第195話 拠点の様子#2

 メイファが言うには、僕に会いたい人がいるらしい。

 それは僕のこの場所での評価を知ってのことだろう。

 となれば、何か困りごとっていう線が濃厚か。


「その会いたい人ってどんな人?」


「フードを深く被って顔はよくわからなかった。たぶん訳ありだろうな。

 ただ声的には女だったぜ。それもアタイと同じぐらいの」


「僕に会いたがっているメイファと同じ年齢ほどの女の子......」


 僕がそう言った瞬間、途端にそばからの圧のある視線が送られた。

 その視線を辿るように、僕は目線だけを動かした。

 背後にいるのはヨナとアイの二人だ。

 二人してチベットスナギツネみたいなムスッとした目をしている。


 僕はただメイファが言った特徴を並べただけなのに......。

 しかし、僕に会いたがってるのに顔すら見せないとは。

 それを気にしないメイファもメイファだけど。


「わかった。その人と話す時間は取るよ。

 だけど、今は先に康太と会って話したいから.......そうだね。

 今はまだ午前中だから、昼イチに会いに行くようにするよ」


「では、私めがその仕事を引き受けましょう」


 そう言ったのはセバスチ......ゲフン、セスバチャンであった。

 とても品のある一礼をしながら、僕にそう提案してくる。


 なんかこれだけで有能執事という感じがしてくる。

 もうこの人なら全てを任せてもどうにかしてくれそう。


 というわけで、僕はその仕事を執事に頼むことにした。

 また、それを機に僕、蓮、薫とその他女性陣とで別々で行動し始めた。


 女性陣的には、久々の同級生の再会に気を遣ってくれたらしい。

 ならば、その気遣いに存分に甘えようじゃないか。 


「康太は確か工房にいるとか言ってたよな?」


「相変わらずモノづくりが好きなようだな、アイツは」


「ああ見えて僕よりも器用だからね」


 確かに、康太は身長が百八十センチを超えて、ガタイも力士並みにデカい。

 対して、薫の身長は百六十センチ近くだ。

 康太の年齢からして親子には見られずとも、兄弟には見られるかもしれない。


 そんな二人を比べて、どちらが器用かと第三者に問うたなら、ほぼ九割が薫と答えるだろう。

 しかし実際は、康太の方が器用である。

 それこそ、縫い物なんか見たら一目瞭然だ。


 薫が明らか頑張って作っただろう感がある物に対し、康太のは既製品。

 それぐらいは手の器用さに差がある。

 そんな康太がモノ作りが得ないメイファと一緒にいるのは、ある意味当然の成り行きか。


「ここだな。工房は」


 歩いて数分後、蓮が指さした方向を見てみれば、大き目な建物がある。

 さらにそこにある煙突からは白い煙がモクモクと上がっている。

 確かに、ザ・工房って感じの場所だ。ここに康太がいるのか?


「お邪魔しまーす」


 ドアを数回ノックするも反応が無かったので中へ入ってみた。

 すると、先ほどから外に漏れ出ていた金づちを振り下ろす金属音が鮮明に聞こえる。

 同時、工房内は外とは比べものにならないほどの熱がこもっていた。


 熱い......ここだけ火山の噴火口近くかってぐらい熱い。

 そんな中で、頭にタオルっぽい布を巻きながら、一心不乱に赤熱した鉄にハンマーを振り下ろす康太の姿が。職人だ、職人がそこにいるよ。


「すみません、どなたですか......ってあなた達は!

 す、すぐにコウタ様を呼んできます! 少々お待ちください!」


「あ、ちょっと待って!」


 するとその時、同じ工房で働く人が話しかけてきた。

 そしてすぐに状況を察して康太を呼ぼうとするので、僕はそれを阻止。

 今の康太は集中してるみたいだからね。終わるまで邪魔しないでおこう。


 というわけで、康太を呼んでもらうのはやめて、近くから眺めることに。

 なんかよくわからないけど、こういうのって案外状時間見続けられるんだよな。

 ただ金属に何回もハンマーを振り下ろしているだけなのに。


 カンッカンッカンッ、と金属の音が一定間隔で鳴り響き続ける。

 それを用意してもらった椅子に座りながら、ひたすら眺めつづける僕達。


 なぜか僕達の間で会話は発生せず、ただ目が奪われるように康太の作業が終わるまで、その姿勢のままであった。


「ふぅー......うん、良い感じかな。とりあえずいったん休憩にしよ......ってあれ?」


 時刻は丁度昼頃。

 サウナ室にずっといるような気分になってきた時、康太がようやく僕達に気付いた。

 康太は頭に巻いた布を取り、顔の汗を拭いながら話かけてくる。


「律、蓮、薫......帰ってきてたのか! それなら話しかけてくれれば良かったのに」


「集中してるみたいだからね。邪魔しちゃ悪いかと思って。

 それに、案外見てるだけでも面白いものだよ。

 なんかよくわからないけど、ただぼーっと見続けることができるし」


「物が形成される瞬間というのは見ていて気持ちがいいな。悪くない気分だった」


「待ってるのも苦じゃないから気にしなくていいよ」


「そっか、ならいいや。

 それじゃあさ、お昼ご飯一緒に食べようよ。

 でそん時に、そっちの話を聞かせてよ。

 正直、こっちは平和過ぎて何も話すことないからさ」


 というわけで、康太の案内により行きつけのお店へ向かった。

 辿り着いた店は、元いた世界にもありそうなオシャレなカフェ。

 オープンテラスには多くの女性客の姿がある。

 どうやら繁盛しているようだ。


「なぁ、これって康太がデザインしたりする?」


 不意にそう聞くと康太は目を剥いて答えた。


「よくわかったね。そんなにおいらっぽさ出てた?」


「出てたっていうか......この世界には不釣り合いなデザインだからな」


「オシャレであることは間違いないんだけどね」


 蓮と薫の言う通り、この世界の素材を使っているからかこの世界の雰囲気には馴染んでいる。

 とはいえ、デザインセンスが明らか近代寄りなので、そこに微妙な違和感が生じているのだ。


 ま、左程気にすることじゃないけどね。

 なんたって、客からすればオシャレなその店を利用できればいいんだから。

 というわけで、感想もさておき早速店内へ入っていく。


 店員さんに適当に空いてる場所を案内してもらい、ソファがけのテーブル席に着いた。

 座ってる順番としては、僕の横に蓮。正面に康太と薫だ。

 康太のサイズ的に薫しか適任者がいないとも言えるが。


 それから、それぞれがメニュー表を見て各々注文を済ませる。

 料理名がとても見覚えのある名前ばかりだったがスルーした。

 そこにツッコめば話が長くなりそうだしね。


「なぁ、律。それでそっちでは何があったんだ?」


「興味津々だな。いいよ、全て話す。

 とはいえ、僕は話下手だから二人とも補足よろしく」


 僕は蓮と薫に援助を求めつつ、魚人国での話をし始めた。

 主に話したことはやはり船での旅路や神殿攻略の話だろうか。

 思い返せば濃い内容であるが、まぁそれなりに楽しかった。


「へぇ~、そんなことがあったんだ。相変わらず律がいる場所は大変だね」


「なんだその言い方。まるで事件がいつも僕を中心に起こってるみたいじゃないか」


「実際間違ってないと思うけどな。

 なんたって、お前が関わらなかったこの場所は平和だったらしいし」


「ってことは、律君が戻って来たここにもそろそろ何か起きそうだね」


 誰も僕のフォローをしてくれない。それどころか随分な言い分である。

 僕達は四人で助け合ってここまでやって来たんじゃなかったのか。


 しかし、そう文句を垂れても口には決して出さない。いや、出せない。

 実際、僕のあずかり知らぬ所で何かが進行してるのは事実だし。


 守護者の一人である白虎(スーリヤ)にも意味深な記憶を見せられたし。

 まぁ、大した収穫は特になかったわけだけど。


「そういや、さっきだってお前に用があるっていう女がやってきたしな。

 フードを被って顔魅せなかったそうだから、素性は怪しいが」


「フードを被った女の子......あ、それってもしかして!」


 その時、顎に手を当てて思い返す素振りをしていた康太が反応した。

 その反応的に少女のことを知っているのか?

 康太はメイファと違ってさすがに怪しい人物は気に掛けると思うし。


「その子について何か知ってる?」


「一度だけ話したことならあるよ。『あなたがこの国の主?』とか聞かれて。

 顔は見えなかったけど、その時の声が女の子っぽかったからたぶんそうかも。

 さすがに変声魔法的なもの使われてたらわからないけど」


「康太はなんて答えたんだ?」


「普通に『違うよ。今は不在中』って答えた。

 ただ、『その実力で違うの!?』って驚いてた様子だった。

 そのせいかしばらくは背後を遠くからつけられたかな。

 本人は気づてないようだったけど、ほらおいらって律のせいでだいぶ異常だし」


「そこで僕のせいにするのは違うと思う。僕も皆と一緒だよ」


「「「それはない」」」


 一斉にツッコまれた。ここには僕の意見に味方してくれる人はいないのか。

 あぁ、今すぐアイの癒しを得たいところだ。アイが猫なら全力で猫吸いしてる。


 それはともかく、どうやらその相手は僕にご執心らしい。

 康太が勘づかない以上、邪神の眷属という可能性は低いだろう。


 アイツらはなまじ実力がある分卑怯な手は使わない。

 正面から堂々と潰しに来る。まぁ、一人搦め手を使いそうな奴はいるが。


「康太、さっき会話したって言ってたけど、交わした内容はそれだけ?

 さすがに他にも聞いたりしなかった? ほら、僕達を探ってるようだし」


「もちろん、聞いたよ。『用件があるなら僕から伝えることもできるよ』って。

 律は今やこの国の王みたいな立場だからさ。それに顔も見せないほど怪しいしね。

 けど、回答は『あんたが違うなら話す必要はない』って感じで、それっきり」


 相手を警戒しているのか、単に秘密主義なのか。

 どちらにせよ、康太にその対応なら他の人に聞いても結果は同じそうだな。

 なら、ここからは僕が直接話を聞かなきゃいけないらしい。


「......わかった。ここからは僕が聞いてみるよ。どうせ午後から話をする予定だしね。

 となれば、ここからは束の間の雑談タイムといこうじゃないか!

 久々の異世界転移組のメンツでね」


 そして僕は時間を見つつ、三人と雑談しながら昼食を楽しんだ。

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)

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