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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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エントシから帝都へ

帝国へ帰る一団が動き出した頃、

「ちょっと待った~」

そう言いながら小柄・軽装備な女性とかなり大柄・重装備の男が走って乗り込んできた。雪に足をとられながらもしっかりと走っているところを見るとしっかりとした冒険者なんだろうか?

「ふう~何とか間に合った。ん!ってアレクじゃん久しぶり。」

アレクと知り合いらしい。

「アレク、遅れてくる人っていうのは・・・」

「ええ、どうやらそのようです。私も今知りました。まさかあなた達だったとは道理でギルドがはぐらかしてくるわけです。」

アレクはそう言いながら、犬ぞりを動かし始めた。ちなみに俺たちが先頭を担っているのは俺が探査魔術で警戒しながら、敵を発見したらアレクが先制攻撃を仕掛けるためだ。


ソリは勢いよく走る。俺はアレクに紹介を求める。

「紹介します。彼女らは私が王国で冒険者をしているとき何度かパーティーを組んでいた。人たちです。奥の小さい方からクララ・アドキンス。そっちの大きいのがケニー・ゴードンです。」

クララと呼ばれた女性は胸を張り、ケニーと呼ばれた男性は頭を下げる。


「ってそれだけ!?」

クララと呼ばれているほうがアレクに突っかかる。

ケニーと呼ばれる男は身長が2メートルぐらいだろうか?というほど大きい。かなり筋骨隆々な体つきをしている。髪はくすんだ金髪で図体のわりにおどおどとしている。装備は大きな盾にショートソード。見るからに、タンクだな。

対称的にクララは身長が小さく、150cmもあるのだろうかといった感じの女性だ。こちらはスレンダーで髪は鮮やかな栗毛をしている。背中には大きめの弓矢を装備している。魔石が組み込まれており、見るからに魔道具だとわかる。

こちらもわかりやすく後衛といった感じか。とても元気ハツラツで、ここらへんもケニーと対称的だ。


「俺はサトウ・タロウ、俺とアレクはギルドの依頼でこちらまで来ていたんだ。」

クララとケニーが自己紹介をしてくれる。見た目どおりといった感じの受け答えをしてくれた。


「で、なんだっけ?貴族の護衛だっけ?王国貴族なんて頭が固くて大変だったでしょ。」

クララが聞いてくる。

「子供だったからな、無理なお願いはされなかったよ。というか何故それを?」

「普通にギルド支部長が教えてくれた。あんなにテンションが高いギルド支部長久しぶりに見たよ。」

テンション高ったのか?あれで?

「二人はどうして帝国行きの船に?」

またしてもクララが答える。

「そんなの決まってんじゃん!ダンジョンに挑戦しに行くんだよ。」

「ダンジョン?新しいダンジョンなんて帝国にあったか。」

「最近、発見されたんだよ!帝国から来たのに知らないの?」

「そういえば有ったような気がしたなぁ~。ずっとアカウ村に通っていたから、気にしている暇なかったんだよ。」

俺はサルの魔獣と戦闘したときの事を思い出した。あいつが現れた頃から、新しいダンジョンがあるのではと言われていた。


「やっぱ冒険者なら、ダンジョンに挑戦しなきゃね。魔獣や亜獣を倒して、奥にある高純度の魔石をゲットできれば大儲けだし、ダンジョン開発で得られた利益の数%貰えるんだからやらなきゃ損よね。」

そんなシステムだったのか。魔石にばかり興味があって、ダンジョン攻略にあまり興味が無いから知らなかった。確かにそれならみんな冒険者になりたがるだろうな。


「アレクとタロウはどうするの?」

ダンジョンか?考えたこともなかったなぁ。

確かにたくさん稼げそうな感じはする。だけど俺には他にもやらなければならないことがある。まずは勇者の日記を探すことだろう。彼の日記を追って彼がいつこちらに来たのか。そして彼はどうなったのか。

もし可能であるならば、元の世界に戻れるか。ぜひ試してみたい。

ここ最近は戻れるだけじゃなくて、往来できないかとも考えている。せっかく知り合った仲間や勝手に弟子になったヤツもいるからな。元の世界に戻ったきりというのも寂しいだろう。


「俺は遠慮しておくよ。他にやりたいことがあるんだ。幸いにも今はお金にも困ってないからな。」

「私も今回は遠慮しておきます。ダンジョンとなると長期的に挑むことになりそうですし、ちょっと鍛えなおしておきたいと思いまして。」

「アレクはいつも鍛えてるじゃん。まだやるの?」

「ええ、いつでもやるべきです。今回は特にそう思いました。あなたも鍛えればより力強く弓を射れるかもしれませんよ。」

「弓は力で射るもんじゃねー」

クララは両手を上げながらアレクに食って掛かる。わちゃわちゃとしながら港まで行った。


数週間ぶりに付いた港ではボロボロに壊されたはずの船が、つぎはぎだらけだが修繕されていた。

またサメの魔獣に襲われるとかはやめてほしいところだ。

クララは大きい船を見て興奮している。ケニーは海に落ちそうなクララを必死に抑えている。天気がよく、今のうちに出港したいと船長が言っていたので、休憩している暇もなく荷物を急いで詰め込んですぐに港を出た。


数日後、俺達は海の上にいた。相変わらず冬の海は荒れている。波と波がぶつかり大きな鈍い音が鳴り響く。しかし流石になれたのか俺もアレクも平然としていた。

ケニーは余裕なのかケロッとした表情をしている。ケニーは言葉数が少ないものの、しっかりと受け答えしてくれている。自分の考えをしっかりと持っていて話しやすい。


ではクララはと言うと・・・ゲロっていた。盛大にゲロっていた。

「ウプッおえええぇ・・・」

耳を塞いで、音を聞かないようにする。


「ところでタロウは何故あんなにも大量の劣化した魔石を持っていたのですか?」

「ああ、それはな。劣化した魔石で魔力を発生させられるかもしれないと思ったんだ。」

「劣化しているのに・・・ですか?よくわからないですが・・・」

「魔石は使い続けると、均等に色あせていき、その効果を失う。だけど使わなくても劣化する魔石がある。」

「水の魔石ですね。でも結局、劣化していることに変わりはないのでは?劣化した状態の水魔石を水にもう一度入れても効果は発動しませんし。」

「そうだ、リナさんの魔石を崩すときも劣化した水魔石はリナさんの体に付いた魔石から色を奪った後、また色褪せた。やっぱり劣化しているのだろう。だけど、こいつは他と違って別の使い方ができるかもしれないと思ったんだよね。」

「他の使い方とは?」

「例えば風を操るとか・・・まぁそんな感じ」

「確かにそれができたなら素晴らしいでしょうけど、どうですか?」

「できなかった。というよりまだ調査中って感じだな。少なくともこれ一つだとうまく使えなかったな。」 

「そうですか。まぁ物事はそんなにうまくはいかないですよね。」

「そうだな。」「げええええええぇ・・・うぇ」


会話をしていてもあまり聞きたくない音が辺りを遮る。

「あれ、使ってやるか。」

「それが良さそうですね。」

その後、吐き気は収まったようだが、クララは見事に痺れていた。


船は何事もなく帝国領にたどり着こうとしていた。あと一日といったところだ。

行きがあんな魔獣に襲われただけになんか拍子抜けだ。


「ん、あれは何だ?」

薄っすらと地平線に影が見える。

「あれは無人島だよ。但しとんでもねえ大きさだかな。」

船員が教えてくれる。

無人島なんてあったのか、そういえばこれくらいの時から吐きまくって意識が朦朧としていたな。


大型魔獣のせいで疑心暗鬼になっている気がする。

「大きい島ならどうして無人島なのでしょうね?」

アレクが素朴な疑問をつぶやく。

「海流が複雑で近づくのが大変かつ、巨大過ぎる割にめぼしい物が見つからない。極めつけには魔獣や亜獣が蔓延っている。こうなれば開拓なんて誰もしないさ。」

「なるほど、帝国も持て余しているというわけですね。」


確かにそんな島は誰も行きたがらないか。

雑談をしているうちに日が落ちてくる。

明日には帝国だ。


船を降りてすぐの事である。

「ひ、ひどい目にあったぁ~もう二度と船には乗らない。酔い止めもいらない!」

「でも、おかげで吐き気は収まっただろ」

「あんなのどっちもイヤだよ!体を小さい虫が這いずり回っているみたいだった。最悪の気分よ。助かったけど・・・というかタロウ、魔術が使えたの?しかも見たことが無い。」

「秘密だぜ。いろいろ巻き込まれそうだからな。」


今回も魔術が原因で厄介度が増した気がする。

クララとケニーにはしっかりと口止めしといた。これ以上、言い振り回されたらたまったものではない。

帝都まで行く人は多く、大人数での移動となった。おかげで進みは遅かったが、安全度は高く、旅の終わりとしてはゆったりと過ごすことができた。

帝都に着くとクララとケニーはそのまま、ダンジョンに挑戦すると言って別れていった。

ウィリアムの護衛に付いた者達はギルドを訪れて、各々報告を行っていた。そんなに時間は経っていないはずなのになんだか懐かしい。

俺達も報告を行おうと受付嬢に話しかけるとアレクはグラハムさんに呼ばれた。


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