最終話
「うまく、言葉が、出てこないことも、多くて、いつも、自信が持てなくて、猫背で下を向いちゃう、そんな僕のこと、リアは嫌い?」
え?
え?
え?
「殿下……?」
「ごめんね、ミリアージュ。皇太子妃になる君に、秘密があったんだ。僕には、好きな人がいる。一緒になれないとあきらめた人がいるんだ。僕は、ずっとその人のことを思って、それでも、皇太子妃になる人は、できるだけ、大切にしようと思っていた……」
私に謝る殿下。
「だけど、やっぱり、ミリアージュじゃだめなんだ……。リアが……。彼女のことが忘れられない。好きなんだ……」
「……ディ、ラ……」
涙が落ちる。
嘘、でしょう。
だって。
殿下の後ろに控えていたネウスが笑った。
「お互いに変装が上手ですね」
へ、変装?
「洗濯室で、僕のハンカチを、持っているのを見て……まさかと思った……」
ああ、あの時。ディラに上げたボタンを殿下は探しに来たあの時。私はディラのハンカチを持っていた。
「何故だろうと考えた。そうして、今日、竹算盤を使っているのを見て……もしかしてと……」
ネウスがふぅっと大きく息を吐きだした。
「それにしても化粧を落とさせるなんてやりすぎですよ」
殿下が首を横に振った。
「一刻も早く、確かめたかった。他に、何も考えられなかった……」
部屋に将軍が入ってきた。
「いやでも案外いい結果だったんじゃないか?何故男爵令嬢を選んだかと言われても、化粧落として顔比べれば分かると言われれば何も言えないだろう」
くくくとおかしそうに笑っている。
「しかし、まさか、第五の条件もクリアできるなんて運がいいな」
将軍が殿下の背中をたたいた。
第五の条件?
宰相が私が来た時に渡した紙を持って入ってきた。
「殿下、逃してはなりませんぞ。これ以上の女性はおりません。将軍も、ネウス、お前もちょっと部屋を出なさい。邪魔をしてはだめだ。殿下、逃してはなりませんぞ、いいですね!」
宰相が血走るような目で、殿下の肩をたたいて部屋を出て行った。
殿下が片膝をついて手を出した。
「結婚してほしい、リア……僕……と」
僕と……?
「ディラ……?」
「そう。僕だ……あっちが本当の僕だ……」
ディラの差し出した手を取ることができなかった。
手を取るなんて……。
「ディラ、私……皇太子妃になんてなりたくないっ」
目の前にはディラがいる。
好きで、でもあきらめなくちゃいけなくて、辛くて……。
だから、仕方がないよね。
目の前に、ディラがいるんだもん。
思わず、手を取るなんてせずに、抱き着いちゃっても。
「だけど、ディラのお嫁さんになりたいのっ!」
ディラが一瞬身を固くした。
それから、ぎゅっと力強く抱きしめられた。
「リア。結婚、しよう」
「うん。ディラ、結婚して」
きっと、ディラなら、孤児にも女性にも、すべての国民が幸せになれる国づくりを考えてくれる。きっと。
だから、領民の心配を、私はもうしなくてもいいんだよね。
領民よりずっと人数の増えた国民のために奮闘する王妃が誕生するのはもう少し後のことである。
おしまい。
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ではでは。
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ありがたいことに、続きが気になると言うお言葉をいただきました。
構想はあるのですが……続くかどうか分かりませんし、完結したと思ってください。
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感想欄で何度も一酸化炭素中毒を心配する声がありますが
【現実世界でキャンプでテントの中で炭は炊いちゃだめよ】
作中ではが、使い方の研究→報告書との流れで書いてあるはず




