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第62話 伴出、計算する

 相手は一人。

 洞窟の入り口から直線があり、その先に空間があり、その空間からさらに洞窟の奥に向かうところ、そこに一人の人間。

 暗いはずだがその洞窟内には光があった。ランタンのようなものが壁に掲げられていたのだ。

 淡い光が人物を照らす。

「やあ。悪いがここは通さないよ」

 ニコリと笑う。

 若い男だ。白い鎧に黄色い外套を着ている。剣を携え左腕には小ぶりな盾。騎士や剣士と呼んで差し支えない見た目だが、冒険者としては比較的身ぎれいと言えるだろう。

 広がった三人は油断なく男を見る。特にサワキはつま先から頭の先までじっくりと値踏みするように眺めていた。

「解析チュウ解析チュウ······」

「あ、またなにかはじまりましたよ」

「待ってくださいにゃ! これはサワキコンピュータですにゃ! サワキコンピュータが動き始めましたにゃ!」

「ごめんなさいそこの貴方、ちょっと待っててくださいね」

「は、はぁ、いいけど手短に頼めるかな?」

「解析、カンリョウ······!」

「結果発表ですにゃ!」

「ジーガガガ······水色ノ短髪、瞳ハ青色、顔立チハ端正、年齢21歳、身長180cm、体重70kg······ゴウカク! ゴウカクー!」

「合格が出ましたにゃ!」

「すでに守備範囲がここまで広がっていましたか······」

「な、なんの合格だろう······」

 男は苦笑いしたがすぐに気を引き締め直すと名乗りを上げた。

「オーウェン式剣術サーグ・エシェット。諸事情につきここは通さない」

 剣を構える。

「オーウェン式!」

「知っているんですかパトリシアさん!」

「ええ、もちろんですコンピュータさん。オーウェン式は誰にでも知られている剣術ですが、誰でも習えるわけじゃありません」

「ボクも聞いたことがありますにゃ。サワキくん、たしかオーウェン式はかつて勇者が門下となった流派ですにゃよ」

「勇者の、流派!?」

 サーグが不敵に笑う。

「そう。オーウェン式剣術はかつて勇者も師事した最強の流派。勇者の家系は今でもオーウェン式さ」

「へぇ、勇者の血筋は今も残っているのか」

「もちろんじゃないか。それよりもどうする? この先に進むというなら僕が食い止めるけど」

「えーと、一人でか?」

「ああ。何人で来ても同じことだよ」

 サーグはあくまで強気の姿勢だ。

「じゃあ、待ってていい?」

 サワキが質問した。

「待つ? 待ってても僕はここをどかないよ」

「いや、隙ができるまで」

「うん······?」

「あんたから仕掛けてくることはないだろ?」

「もちろんそんな真似はしない。こちらの邪魔さえしなければね」

「じゃあ待つよ」

「ん······?」

「だから、君の隙ができるまで三人で交代で見張ってていい?」

「なにを······あっ!」

 サーグの顔がさっと青ざめた。

「見たところ大した荷物もないようだしさ、サーグさんに隙ができるまで待ちますよ。食事をしても突破するし、排泄しても突破する、寝ても突破するし、弱っても突破する」

「き、君たちにそんな時間が」

「この常に風が吹いている場所でどれだけ人間が隙を見せずに耐えられるのか楽しみだなぁ。こっちには暖房器具(猫)がいるんよ、これは有利です」

「バンテリンですにゃ」

「あ、あぐ······い、いや、今すぐこの場を去らないと君達を成敗する!」

「ええー!? ほぼ丸腰の男一人と二人の淑女を一方的に襲うの!? かの誉れ高き、勇者が師事したオーウェン流のその剣士様が!? 嘘だよな、それじゃ野盗じゃん!! なあ、みんな!!」

 サワキが大げさに驚いて見せた。

「はっきり言ってクズの部類に入りますにゃね」

「私達は使いできてますから私達を斃したとしても誰かが調べに来ますね。オーウェン流の仕業だと知られれば勇者の子孫の名折れになるかもしれませんねこれは」

 ルーシーとパトリシアはそれぞれに反応した。 

「あ、あわわわ······」

 サーグはいよいよ取り乱しはじめてしまった。

(人の悪意に慣れてない人ですにゃね。これじゃサワキくんとはやり合えませんにゃあ)

 サワキがサーグを煽るのを見ながらルーシーはそう思った。

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