第63話 伴出、紋所を出す
「よっこらセフィロス」
サワキが地面に腰掛ける。というより寝転ぶ。
「つめたーい」
地面が冷たいのである。
「ねえねえサーグさぁん」
サワキが早速サーグに話しかける。気の抜けた声だ。
「暇だからなにかお話してえ」
「早い。もう入りましたにゃ」
「入る? なににです?」
「『待ち』ですにゃ。この筋肉の弛緩っぷり、休日前日の夜に風呂上がりの一杯やった後に匹敵する脱力っぷりですにゃ」
「もう動くことはないってレベルですね」
そういう二人もサワキと同じく座っている。地べたに余裕で。旅は人を強くするのだ。
「く、くそう。屈辱だ······」
打って変わっておそらくは実力者であろうサーグに余裕はない。
「まあそうピキらないでさ。サーグさんはどうしてこんなとこにいるんです?」
「······さっきも言った通りだ」
「この先になにかあるんスか?」
なお、サワキが敬語なのは一応サーグを年上の者として見ているからであろう。
「君が知る必要はないよ」
「だってここに一人で際限なくいるってことはないはずでしょう? いつまでいるつもりだったんすかあ?」
「う、うるさい! ちゃんと後で我が流派の高弟達が人手を連れてやってくる予定なんだ! だから僕はそれまで耐える! 待っていても無駄だ!」
「へえ。で、そちらは所有権とかあるんですか?」
「ん?」
「ここの所有権。ここを塞ぐなにか正当な権利とかあるんですか?」
「フン。ここは勇者ゆかりの地なのだ。もともとは封印されていた。それを誰がか封印を解いたんだ」
「ほう」
「自分はあそこの村、近くにあるブレディールとかいう所の者達が怪しいと睨んでいるがな」
「で、それがなんの関係が?」
「あん? だから、我々は勇者の流派で······」
「それってあなたは無関係ですよね。サーグさんは別に勇者とはなんの関係もないでしょ」
「む、無関係ではないだろう無関係では。だからこそちゃんとしかるべき命を受けてだな」
「へー。でもやっぱり関係ないと思うなあ。少なくともここを塞いでいい理由にならなくないですかぁ?」
「じゃあ! じゃあ! そういう君たちはどうなんだ!? ここで何をしているんだ!」
「我々はさる高貴な方の命でここの地質調査に来てるんですよ」
「誰の命だ? 言ってみろ! それはこちらよりしかるべき所からの命なのだろうな!?」
「それこそサーグさんには関係ありませんなぁ」
「ほれみろ! 怪しい奴らめ!」
「そりゃまあ我々は怪しいでしょうね。それは仕方ない」
「人に難癖つけておいてそれか! フン!」
さんざんうざ絡みされたのでサーグはイライラしていた。態度にもそれが出ている。
「まあまあ」
なにかと管を巻いていたサワキが身を起こした。
サーグがサワキの方を見る。サワキはニヤニヤしていた。
サーグはそれを見てさらに機嫌を損ねた。また何ぞ言ってくるのだろうと思ったからだ。
「で、サーグさん達の用は魔王ゴルフィクスの何に関してですか? どれくらい危険なんです? 時間的猶予はどれくらいあるんですか? 調査の進展は?」
一瞬の間の後、サーグは驚いた。
「······なに!? 君はいったい何を知っているんだ!?」
思わず身を乗り出す。
「さあ? でも、いまサーグさんが言った通りっすよ。勇者に纏わる剣戟集団が準備もそこそこに馳せ参じなければならないほど火急のことでしょう? あなたの公平な性格は流派の教えに由来する。その派閥が人をここで止める理由は自己中心的な理由からではあり得ない。ここが人にとってなにかしらの危険をはらんでいるからで、それこそ、筋の通った『お願い』を流派の外から受けてのことだ。それはよほど義理を通さなければならない人からの命でしょう。そうですね、たとえば――」
「――サイ国国王殿とか」
サワキの言葉にサーグは時が止まったかのように固まってしまった。図星がここまで出てしまうのもサーグの人柄といえば人柄である。
「何があるかは見たのですか? 監視する必要とかないかもしれませんでしょう」
パトリシアはサワキの態度に慣れたものといった感じで言葉を重ねた。
「······あ、う、いや、まだ」
肯定も否定もしていないはずだが、もうサーグはサワキの言葉を半分認めてしまっている状態だった。
「じゃあ一緒に来ればいいですにゃ」
ルーシーも加わる。
「サーグさんはヒンメルに似てるからオレはフリーレンポジションだな」
「どういう理屈なんです? それ」
「じゃあボクはユーベルですにゃ」
「全然違うだろ(主に“大きさ”とかが)」
「アニメ化したらボクの声はユーベルの人に頼むから問題ありませんにゃ。サワキくんこそ全然違いますにゃ」
「オレだってフリーレンの人に頼むから問題ないもんね」
「なにからなにまで問題しかありませんにゃよ······」
なにやら三人がよくわからないことを話しているのを聞いてサーグは焦った。
「待て待て待て! 僕は一緒に行くとは言ってないぞ! それにさっきの魔王云々の話だって僕は認めてない! なにが起きてるかは君らには関係ない!」
しん、と三人は静まりかえった。
「ええい、まだるっこしい! この紋所が目に入らぬか!」
サワキが頭に巻いたバンダナをめくった!
「あ、あわ、あわわわ······! カッパ様じゃあ!」
サワキの紋所を見たヒンメルもどきは腰を抜かした!
「久しぶりですにゃこのネタ」
「せっかくこの小説の題名をポリティカルにコレクトレスしたものにしましたのに」
「まあアレはもと(クソハゲ異世界にて植毛す)がひどすぎただけですにゃから······」




