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第48話 伴出、声をかけられる

 夜、湖畔の港町ブレディールは静かな波の音に包まれる。

 ブレディール湖は大きいので海のように波があるのだ。

「うるっさいですにゃー!」

 静かとは言ったものの波の音は一度気になりだすとやたら気になる上に音が大きいときはマジで大きい。聴覚に優れる猫娘ルーシーは苛ついていた。

 こうなっては仕方ない。同室のパトリシアはもう寝ているし、サワキの部屋に行っても返事はない。眠れないならいっそ湖の方へ行き、その姿を見ておこうと思い外出する。

 猫の能力を持つルーシーは夜中でも視界はまったく問題ない。なんの灯りも頼りにしないままペタペタと町を歩く。

 波の音がいよいよ大きくなり、湖面も見える開けた場所に出た。僅かだが網やロープといったような、おそらくは湖で使うのであろう道具が置かれている。

 宇宙が透けて見えるほどの夜空が美しいが、波がルーシーの耳を直接叩くかのように鳴っている。

 それを嫌がってルーシーは頭にある方の耳を塞いだ。この音に今慣れておけば部屋に戻ったときに落ち着けるのだが、どうにも我慢できない。

 ふと見ると少し先に物見櫓のような少し高い塔が見えた。音がわずかでも散ってくれることを期待してそちらに近づく。

 なんの灯りもない中、ルーシーはそこに人がいるのがわかった。

 ルーシーは息を呑んだ。

 そこにいたのは長い髪の、幽霊かと見まごうほどの儚く美しい男性だった。


 ・ ・ ・ 


 朝、パトリシアがふと目を覚ましてみると、隣に寝ていたはずのルーシーがいないことに気がついた。まだ少し時間があったので二度寝して再び起きたとき、いなかったはずのルーシーがいた。パトリシアは特に気にはしなかった。


 ・ ・ ・ 


 サワキは暇だった。ブレディの3Bに乗船を断られた以上頼んでも本当に誰も乗せてはくれないだろう。しかし焦りはない。理由は色々あるが結局は急ぎ旅ではないということが大きい。

 サワキは今、宿屋もあるやたらに広く小綺麗な大通りを歩いていた。一応は店などもあり、余所者でも買い物したりはできるようだ。

「お暇ですか?」

 サワキに話しかけてくる者がいた。年はせいぜい中年ぐらいの髭モジャの大男である。

「おや······この町の長老さん、ですかね?」

「······ほう?」

 大男のやんわりとしていた顔が真剣になる。迫力のある表情だ。もっとも、真剣になる前からその傷だらけの顔は威圧感のあるものだったが。

「なぜそう思う? これでもまだそこまで老いてるつもりはないんだが」

「皆があなたに注目し聞き耳をたてていますので、なにかしらこの町を代表する人なのがわかります。オレはこの町を見るように言われました。そのオレに用があるとしたら本来はこの町でもっとも公平な男でしょうが、彼は忙しい」

「コウヘイはなぜ忙しいんだ?」

「彼は審判。審判者。この町の裁判官なんでしょう? そしておそらくは警察でもある。つまり保安官ですね。秩序担当の彼にはやることが山積みだ」

「それで、なぜ俺がここの(おさ)だと?」

「あなたが(おさ)本人とも思ってませんが手の者ですね。秩序維持員が来れないなら部下が来るものですが、この町はよく統率されています。表面上はほぼ完璧に普通の町だ。勝手にどこかの組織が単独でオレに接触してくることはないでしょう。ならば、意志を束ねる長とその直属が動く。あなたがその年齢で上司がもっと年上と仮定するなら、いわゆる長老連中と呼ばれる人がいる」

「······噂通りのようだな」

「着いて行きますよ。暇なんです」

 サワキはにんまりして大男に近づきその顔を見上げた。

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