第6話 2個目の好き
もう夜だからか、僕は眠くなった。
4人とも会話はあまりなかった。
今の自分達の状態を理解できたわけではないが、すぐに危機が迫っているわけでもないのでなんとなく安心する。
みんなはまだ寝ないのだろうか?
「そろそろ寝ないですか?」
「そうだな、起きてても仕方ないしな」
赤岩さんが答えた。
なんとなく僕とももさんが同じ部屋で寝る予感がしてたが、その予感は外れた。
赤岩さんがももさんは二階で寝るべきだと言い出した。
「さすがに女の子だし、プライバシーも欲しいんじゃないか?」
ももさんは納得して一人で寝ることになった。
赤岩さんはももさんに配慮したのだろうか。
僕ならももさんが寂しがらないように一緒に寝るのに。
この家は不思議だ。
さっきまで何も無かった風呂場に僕ら四人分の着替えがあった。
着替えはあったがお風呂の準備までしてくれるわけではないらしく、自分達で準備した。
みんな順番にお風呂へ入り、寝る支度をした。
「ゆうまくん。また明日になったらちゃんと話し合おうね。」
ももさんが自分の部屋へ上がってく前に僕へ言った。
二階の部屋はもうももさんの部屋なのだろうか。
少し寂しい気がした。
「よし、みんな自分の布団敷けるよな!」
赤岩さんが言った。
男3人で川の字になって寝ることにした。
僕が真ん中で赤岩さんとじゅんが両端だ。
「ゆうまさん、おやすみっす。」
じゅんが一言言って寝た。
なんとなくまだ起きてる気もするが。
赤岩さんからは何も聞こえないがまだ起きているんじゃないだろうか。
僕は眠いと思っていたけど、いざ布団の中へ入ると眠れなかった。
これは現実なのだろうか。
寝て起きたら元の生活に戻る気もする。
元の生活ってどんな生活なんだ?
元の生活に戻ったらももさんにはもう会えないのだろうか?
「おい、まだ起きてるか?」
赤岩さんだった。
赤岩さんも眠れないのだろうか?
じゅんからはいびきのような音が聞こえる。
「なんか、色々考えちゃいます。」
僕は呆然と真っ暗な天井を見上げた。
記憶が無いが、こんな気持ちになったのは初めてな気がする。
これを人は愛というんじゃないのだろうか。
「なに考えてるんだよ」
「今後のこととか…
ももさんのこととか…」
「お前、あいつのこと好きなのか?」
唐突な図星発言に焦った。
しかし、隠すつもりも無かった。
「え、わかります?」
「お前はわかりやすいよ。
すぐ女に惚れるタイプだろ?」
すぐ惚れるタイプなのだろうか?
ももさんだから惚れたのだと思いたい。
「そんなことないですよ。
記憶ないからわかんないですけど。」
赤岩さんがこっちを見てる気がする。
真っ暗だから何も見えないのに。
「でもこの気持ちは絶対に愛ですよ!」
「愛?何言ってんだお前。」
赤岩さんが笑い出した。
そんなおかしい事を言っただろうか?
「お前みたいなガキが愛とか言うんじゃねえよ。」
赤岩さんが笑いながらいう。
「赤岩さんには、何が愛とかわかるんですか?」
赤岩が少し黙り込んだ。
やっぱり、この人にもわからないんじゃないか。
今の僕の気持ちをわかる人はいない。
僕の気持ちは、きっと誰かを愛したことのある人にしかわからないだろう。
「愛ってなんなんだろうな」
赤岩さんが言った。
なんだわからないのか。
「好きって気持ちはわかるぜ。」
「好きですか?」
赤岩さんが嬉しそうに語り出した。
「好きってさ、2種類あるんだよ。
一個目の好きは、かっこいいから好きとか、可愛いから好きとか、それっぽい理由があるんだよ。
こっちの好きは、簡単な好きだ。」
簡単な好き?
もっと難しい好きがあるのだろうか。
しかもなんでこの人は少し嬉しそうなんだ。
なんか面倒に感じてきたが、一応聞くことにした。
「もう一個の好きはなんなんですか?」
「もう一個か…」
赤岩さんは少し間を置いて言った。
「…無条件な好きだ。
それを愛っていうんじゃねえか?」
無条件とはどういう意味なんだ。
全ての人を愛せよということだろうか。
赤岩さんの言ってる意味が僕にはわからなかった。
「ごめん。
俺ミュージシャン志望だから、こういう話が好きなんだよ。」
赤岩さんはミュージシャン志望だったのか。
確かに言われてみればミュージシャンっぽい見た目だ。
「音楽ってさ、昔から愛ってやつを表現しようとしてるんだよ。何十年も。
それでも未だに曲書いてるやついるだろ?
愛ってやつはさ、表現しても、しきれないもんなんだよ。」
赤岩さんが熱く語った。
赤岩さんには申し訳ないが、何を言っているのかよくわからない。
でも、この人にはこんな一面もあるといことに驚いた。
ただのやさぐれたヤンキーではなかったということか。
しばらく時間が経った。
赤岩さんはもう寝てるのだろう。
僕はまだ考え事をしていた。
無条件な愛とはどういうことなのだろうか。
ももさんが可愛くなくなっても愛せるかということだろうか?
ももさんが可愛くなくなったら、それをももさんと言えるのだろうか?
ももさんはどんな時でも可愛い。
つまり無条件に可愛いということだ。
それなら僕は、ももさんを無条件で好きになれる。
やはりこの気持ちは愛だったんだ。
ふと思ったが、ももさんも僕のことを考えているのだろうか。




