第1話~異世界へ~
終電には、独特の空気がある。
疲れ切った会社員、酒臭い酔っ払い、無表情で巡回する車掌。
誰もが「今日」という一日を終わらせるためだけに、同じ列車へ押し込まれている。
朝倉湊も、その中の一人だった。
二十四歳。
都内のシステム会社勤務。
社会人三年目。
仕事は嫌いではない。だが、好きかと聞かれると答えに困る。
毎朝同じ時間に起き、満員の通勤電車へ乗り、パソコン画面と向き合い、残業をして帰る。
そんな毎日だった。
唯一の趣味は鉄道。
撮り鉄でも模型鉄でも乗り鉄でもない。
ただ、電車に乗る時間が好きである。
レールを叩く音。ホームへ滑り込む瞬間。発車メロディ。窓の外を流れていく夜景。
それらをぼんやり眺めていると、少しだけ心が軽くなるのだ。
その日も、湊は残業帰りだった。
携帯で時刻を見てみると二十三時半。
慌てて駅へ向かった頃には、乗れる電車も限られていた。
「やっべ、終電近い。」
駆け込むように電車へ乗る。
車内は半分ほど埋まっていた。
湊は端の席へ腰を下ろし、大きく息を吐く。
疲労が、一気に押し寄せてきた。
ピコン。
スマホを見る。
未読通知。
上司からのメッセージ。 『明日の資料、朝までに確認しといて』
湊は無言でスマホを伏せた。
見なかったことにしたかった。
ガタン、ゴトン。ガタン、ゴトン。
規則的な振動。
眠気が、ゆっくりと意識を沈めていく・・・
最初なので短いですが、頑張ります。
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