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亡き国の少女  作者: けると
前日譚
2/2

2話 夢

続きです。一人でも読む人来てくれたら3話出します。あ、本当に不定期投稿です。

 次の日の朝、学校の身支度をしている最中、ソフィアは聞いた。「そういえば、私は学校に行けないのー?」私は、「戸籍もちゃんとしたやつ、ないからね。私と同じ歳ってことで作れたらいいけど。」ソフィアは、「作れるかなー、親もいないし」と心配そうに答えた。私は笑って、「大丈夫、親の事情がうんたらかんたらっていえばわかってくれるよ。この国、移民とかは割とザルなの」と答えた。ソフィアは「まあなくてもいいやー、そういえば学校めんどくさくて、いつもどうやって抜け出すか考えてたの忘れてたー」といった。私は、少し呆れた顔でソフィアを見た。「まあ、18歳になったら絶対作ろう。私もその頃には義務教育終わって、どっか大学入ってるだろうし。」

 ソフィアは、「私も大学行こうとしてたんだよねー。まあ高校帰りに疲れて寝てたらここのゴミ箱の中で目が覚めたんだけど。」と言って笑った。私は、「だから来た時なんか匂ってたのね…てか、タイムスリップってそんな雑に起こるの?」と苦笑いしながら聞いた。

ソフィアは「わかんない。だって寝てたんだもん。」と笑って言った。

 「私、大学入れたら、まあ2年くらい通ったら休学して、このヨーロッパ中を旅行したいんだ。歴史好きだし、色々勉強にもなる。あと大人になったら自由に遊べないからね。」と、ソフィアに自分の夢を語った。ソフィアは、「素敵じゃんそれ!えー一緒に行きたいなあ…私も着いていっていい?!」と聞いてきたので、「それに伴う宿泊費とかは自分で稼いだ金を使いなさいよ」と言った。ソフィアは、「よーし貯金頑張ろー」と宣言した。

 私は時計を見て戦慄した。「やっば、もう直ぐでバス出ちゃう!」私は急いで充電していたスマホとイヤホンを持ち、「じゃあ、留守番頼んだよ!」といって出ていった。ソフィアは「いってらっしゃーい」と少し腑抜けた声で言った。

 私は、昔から親に色々叩き込まれていたこともあり、1年生から3年生に飛び級することができ、17歳で学校を卒業はできそうではあるが…人と話すのが苦手で、同年代と話すのすら難しい。そんな中で飛び級したら…案の定孤独になった。しかし、一人でいても楽しいことはいくらでもあるので、今まで普通に耐え切っていた。ソフィアが来てからは、より楽しくなった。また一人の。ソフィアがいない生活が戻ってきたら…考えるだけでも全身が冷えた。私は学校が終わるとすぐ、家に飛んで帰ってきた。ソフィアは、店の前の椅子で、近所のスーパーで買ったのであろうお菓子を食べて待っていた。こちらに気づくと、「おかえり!」と笑顔で声をかけてきてくれた。「ただいま。」そう返し、私は家に入った。続いて、ソフィアも入った。「掃除とかオープン前の下準備とかはすでにした?」と聞いた。ソフィアは、「心配しなくていいよーもうやってるよー」と言った。

 ソフィアは、初めてきた時は、家電の使い方…いや、そもそもここまでハイテクな物を見たことがなかったらしい。まあ、当たり前だが。なので、全く使えずに、挙げ句の果てには事故を起こしかけた。しかし、覚えこみが早いようで、今ではすっかりマスターしている。

 私は、「いつもみたいに、私がキッチン担当、ソフィアが接客とか会計頼むよ」といい、仕事に取り掛かった。ソフィアは本当に仕事もそつなくこなす。ソフィアが来てからは売り上げもそこそこ上がっていき、私としてもとても嬉しい気分だ。

 店の明かりを落とす頃には、外はすっかり暗くなっていた。最後の客を見送り、扉に鍵をかける。 「今日もお疲れー」ソフィアは伸びをしながら言った。私はレジの中身を確認しながら、適当に返す。「はいはい。まあ、あんたのおかげで少しはマシになってるけどね」「でしょー?もっと感謝していいんだよ?」「調子乗るな」

 そんなやり取りをしながら、私は売上を帳面に書き込んだ。数字は、以前より確かに増えている。……悪くない。むしろ、少しだけ順調すぎる気もした。「ねえ、昨日買ったやつ見よーよ」ソフィアが、あのパンパンに膨れた袋を持ち上げた。私はため息をつきながらも、頷いた。「どうせ置き場所ないのにね」ソフィアが言い訳がましく「そこはほら、気合いで…」「どういう理屈よ」

 二人で2階に上がり、床に買ったものを広げる。古い硬貨、勲章、よくわからない金属片。どれも、時間の中で置き去りにされたような顔をしていた。

 ソフィアは、その一つ一つを嬉しそうに手に取っていく。「これね、昔こういうの家にあったの」

 「へえ」

 ソフィアが、自分の財布を開け、中にあるソ連硬貨をいくつか見せる。

 「これはね、父が——」

 話は途切れず、どんどん続いていく。私は適当に相槌を打ちながら、さっき気になった硬貨を手に取った。1923年。

 刻まれた数字を、指でなぞる。……やっぱり、何かがおかしい。重さか、縁の削れ方か。 はっきりとは言えないが、“あの、70年代ごろに複製されたアレ"と微妙にズレている。

 私は少しだけ目を細めた。

 「ねえ、それ」

 ソフィアが覗き込んでくる。

 「……これ、本物?」

 「え?」

 私は一瞬だけ迷ってから、肩をすくめた。

 「いや、なんか違和感あるだけ。まあ、偽物でも別にいいでしょ。あんた気にしないタイプだし」

 ソフィアはきょとんとしたあと、すぐに笑った。

 「うーん…まあ思い出ならなんでもいいじゃん!」

 ……そういう問題か。私は小さく息を吐いて、その硬貨をケースに放り込んだ。

 カチ、と軽い音がした。その音が、やけに静かな部屋に残った。

それからしばらく、二人で並んで座りながら、どうでもいい話をした。

 学校のこと。昔の料理のこと。行ってみたい場所のこと。話はまとまりなく続いて、気づけば時計の針はかなり進んでいた。

 「……眠い」

 ソフィアがぽつりと呟く。

 「そりゃそうでしょ。今日動き回ってたし」

 私は立ち上がり、軽く伸びをした。

 「風呂、先入っていいよ」

 「ほんと?じゃあお先ー」

 ソフィアは軽い足取りで浴室へ向かう。その背中をぼんやりと見送りながら、私は床に残った物を片付け始めた。

 ケースに詰められた“過去の遺物"

 どれも、今の私たちには必要のないもののはずなのに。

 なぜか、捨てる気にはならなかった。私はその必要ないもののケースの蓋を、ゆっくりと、丁寧に閉めた。

その夜。ベッドに入ると、ソフィアはすぐに寝息を立て始めた。私は天井を見上げたまま、しばらく目を閉じなかった。静かだった。外の風も、車の音も、何も聞こえない。あるのは、隣の寝息だけ。…不思議だ。

 つい数日前まで、こんな静けさはただの“空っぽ”だったのに。今は、少しだけ違って感じる。私はゆっくりと目を閉じた。意識が落ちる直前、ふと…あの硬貨の感触が、指先に蘇った。わずかに、違う何か。「そんな美味しい話ないか…」そう呟き、私は眠りについた。

お疲れ様でした。本当に読んでくれてありがとうございます。

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