教会の麻雀布教
エルミナ神聖国の中央大聖堂。
高い天井と色鮮やかなステンドグラスから差し込む光が、祭壇に置かれた麻雀牌を照らす異様な光景。
参列者は老若男女の信者たちで、皆、胸元に小さな四風牌のペンダントを下げている。
中央司祭オルフェン:銀髪の長身。表情は穏やかだが声はよく通る。宗教的カリスマ性と雀士としての実力を兼ね備える人物。
側近の若い神父たちは、すでに麻雀卓の準備をしている。
大聖堂の鐘が鳴り響き、参列者が静まり返る。説教台に立ったオルフェンが、荘厳な声で語り始める。
「東・南・西・北――この四風牌は、我らが信仰する四精霊を象徴する聖なる石板なり!」
「これを正しく操る者こそ、精霊の加護を受け、運命を切り拓くのだ!」
参列者たちは「おお……!」と感嘆し、牌の刻印を撫でて祈りを捧げる。
オルフェンはさらに続ける。
「ゆえに我らは、この聖なる儀式――“麻雀”をもって信仰を深めよう!」
側近神父たちが壇上に卓を運び込み、参列者が期待の眼差しを向ける。
「これより“信仰試練”を開始する!」という宣言とともに、エルミナ神聖国における“麻雀布教”が公式化。
天井は雲の彼方に届きそうなほど高く、色とりどりのステンドグラスから降り注ぐ光が、床に神聖な模様を描き出していた。
だが、その光の中心に鎮座しているのは、聖典でも聖杯でもない。
――一卓分の麻雀牌である。
祭壇の上に置かれた牌は、金縁の桐箱に納められ、まるで聖遺物のように厳重に飾られていた。
「おお……」とため息をもらす参列者たちの胸元では、小さな四風牌のペンダントが揺れている。
老いた修道女も、屈強な兵士も、幼い子供でさえも、それを大事そうに握りしめていた。
荘厳な空気の中、これから始まるのは説教――ではない。
ここは信仰の国であり、同時に麻雀の聖地だった。
中央司祭オルフェン:銀髪の長身。表情は穏やかだが声はよく通る。宗教的カリスマ性と雀士としての実力を兼ね備える人物。
中央司祭オルフェン――
銀糸のような長髪が背に流れ、年齢を感じさせぬ整った面立ち。
その瞳は湖面のように穏やかでありながら、奥底に鋭い光を宿していた。
ゆったりと祭壇へ歩み出るその姿に、信者たちは自然と背筋を正す。
声を発すれば、大聖堂の隅々まで澄んだ音色のように響き渡る。
「兄弟姉妹よ、本日も精霊の加護と共に、我らは一局を打とう」
その一言で、参列者の目が輝く。
彼の背後では、若い神父たちが神妙な顔で麻雀卓をセッティング中だ。
卓の脚に布を掛け、四角い天板を慎重に置き、牌を祈るように並べていく。
彼らの手際は、まるで聖水の儀式でも執り行っているかのように丁寧だった。
信仰と麻雀が、ここでは完全に一体化している。
――ゴォォォォン……ゴォォォォン……
重く荘厳な鐘の音が、大聖堂の高い天井を震わせた。
瞬間、それまでざわめいていた参列者たちが一斉に口を閉ざす。
ステンドグラスから差し込む光が、祭壇に置かれた四風牌を虹色に照らす。
まるで牌そのものが、精霊の息吹を宿して輝いているかのようだった。
空気が一気に張り詰め、信者たちは胸のペンダント――小さな四風牌をぎゅっと握りしめる。
ただの遊戯であったはずの麻雀が、今や聖なる儀式としてここに始まろうとしていた。
説教台に立つオルフェン司祭は、銀髪を背に流し、片手でそっと四風牌を掲げた。
その動きだけで、参列者の視線が吸い寄せられる。
低く、しかしよく通る声が大聖堂の石壁に反響する。
「東・南・西・北――この四風牌は、我らが信仰する四精霊を象徴する聖なる石板なり!」
光を受けた牌面が、まるで生き物のようにきらめく。
「これを正しく操る者こそ、精霊の加護を受け、運命を切り拓くのだ!」
会堂に感嘆のざわめきが広がる。
信者たちの目は敬虔さと好奇心に満ち、まるでこれから奇跡が始まることを疑っていないようだった。
オルフェンは微笑む――その微笑みの奥に、歴戦の雀士としての余裕がちらりと覗いた。
堂内に静かな熱が広がった。
信者たちは一斉に胸元から小さな四風牌のペンダントを取り出し、その刻印をそっと指先でなぞる。
年配の男は目を閉じ、若い娘は小さく頷きながら、まるで精霊に語りかけるように唇を動かす。
「おお……」
低く、揃った感嘆が、まるで聖歌のように大聖堂にこだまする。
ステンドグラス越しの光が揺れ、祈りを捧げる彼らの顔を神々しく染めていた。
その光景は――宗教儀式と麻雀が完全に融合した瞬間だった。オルフェンは説教台の縁に手を置き、さらに一歩前へ。
その銀髪がステンドグラスの光を受け、淡く輝いた。
「ゆえに――」
その声は、堂内の隅々まで響き渡る。
「我らは、この聖なる儀式――“麻雀”をもって信仰を深めよう!」
途端に、信者たちの間から熱を帯びたざわめきが広がった。
側近の神父たちは合図を受け、祭壇脇に据えられた四卓の麻雀台へと歩み寄り、蓋を開ける。
中から現れたのは、磨き抜かれた牌の山――まるで宝石のように光を放つ、神聖な闘いの道具だった。側近の若い神父たちが、恭しく壇上へと麻雀卓を運び入れる。
その脚音が石畳の床に響くたび、参列者の胸の鼓動も高鳴っていく。
卓は深紅の布で覆われ、まるで聖遺物のように慎重に設置される。
布が一気に取り払われた瞬間――
艶やかな牌の白が、差し込む光を反射してまぶしく輝いた。
参列者たちは息を呑み、誰もが目を逸らさずに見つめる。
その瞳には、畏敬と…そしてこれから始まる儀式への期待が、はっきりと宿っていた。
オルフェンは壇上の中央に立ち、両腕を大きく広げた。
天井から降り注ぐ光が、その銀髪と祭服を神々しく照らす。
「――これより、“信仰試練”を開始する!」
低くも力強い声が、大聖堂の隅々まで響き渡る。
その瞬間、信者たちの間から歓声と拍手が湧き起こった。
卓上の四風牌が、光を受けてきらめく。
それはもはやただの遊戯具ではなく、神が授けた聖具として崇められていた。
こうして、この日を境に――
エルミナ神聖国における“麻雀布教”は、公式な宗教儀式として歴史に刻まれたのである。




