↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生悪役令嬢、麻雀で異世界を制す!  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/42

ジェロードのため息


――王都最大の賭け麻雀サロン、その開業から数日。

今宵も、金貨と宝石が牌の間を飛び交う。

豪奢なシャンデリアの真下、クラリッサは玉座めいた特等席に腰掛け、勝者の余裕を湛えた微笑みを浮かべながら紅茶を口に運んだ。

視線の先には、机に山と積まれた賭け金――金貨の煌めき、ルビーの赤、サファイアの青。まるで財宝の海だ。

「……ふふ、これぞ勝者の景色や」

低く、満足げに呟くクラリッサ。

その横で、淡々と賭け金の集計をしていた執事ジェロードが、わずかに眉をひそめた。

「お嬢様」

「なんや」

「そのドヤ顔は、悪役令嬢というより……裏社会の親分です」

会場が一瞬、しんと静まり――

そしてなぜか周囲の貴族たちが、そろって「確かに……」とうなずいた。

クラリッサは紅茶を置き、にこりと微笑む。

「せやろ? 裏も表も制するのが、ホンマの令嬢や」

その笑顔は、確かに“悪役令嬢”というより、“王都のドン”だった。

煌びやかな会場の中央、金貨棒と宝石が山と積まれた卓を前に、クラリッサはゆったりと腰を下ろしていた。

その声は、観客席のざわめきを一瞬で凍りつかせる。

「……賭けられるもんがもうない? ほんなら――人生賭けたらええやん」

空気が**ざわっ……**と揺れ、数人の貴族が椅子から腰を浮かせる。

観客の中には「本気か?」と目を丸くする者もいれば、興奮で頬を紅潮させる者もいた。

そんな熱狂の中、ただ一人、執事ジェロードだけが冷ややかな眼差しを向ける。

「お嬢様。賭けに人生を使うのは……美学ではなく、ただの愚行です」

クラリッサは涼しい顔で、唇の端を上げた。

「ふふ……愚行でもな、勝ったら美学や」

その瞬間、観客席の空気は再び沸騰。

――この日を境に、「人生マッチ」の名は、王都の裏社交界に伝説として刻まれることになる。

王都最大の麻雀サロン。観客席からざわめきが起こるたび、その中心には決まって一人の少女がいた。

「――ポン!」

今日もまた、軽やかな声が響く。

ミーナは嬉々として牌を横に倒し、誇らしげに胸を張る。

……が、そのせいで手牌は序盤から形を失い、勝負にならない。

「おい、また鳴いたぞ」「あれじゃあ和了れないだろ」「あれが“ポンの人”か」

観客席からクスクス笑いとあだ名が飛び交う。

クラリッサは紅茶をすすりながら、半眼で呟いた。

「……ミーナ、そろそろ鳴く前に和了形を意識しぃ」

しかしミーナは首をかしげ、次の瞬間――

「ポン!」

観客席:「ほら言った!」「やっぱりポンの人だ!」

こうして、彼女のあだ名は完全に定着したのだった。

王都麻雀サロン、東二局。

場は緊張に包まれていた――対面の公爵が、今にもリーチ棒を叩きつけそうな気配を漂わせている。

しかし、その直前。

「ポン!」

ミーナが元気よく鳴き、手牌から安全牌を抜き去った。

観客席が一瞬、静まり返る。

さらに続けて――

「チー! あ、またポン!」

彼女は流れるように鳴き倒し、他家の安全牌を次々と消滅させていく。

結果、公爵の手は完全に詰み、場の空気は混乱の渦に。

「……お嬢様、あれはもう戦術じゃなくて災害です」

ジェロードが呆れ声を漏らす。

「え? みんなが困ってる顔、なんか楽しいです!」とミーナ。

こうして彼女は、恐れと敬意を込めて――

「天然の場荒らし」 と呼ばれるようになった。

東風戦終了後、場の片付けをしていたミーナが、満面の笑みでクラリッサのもとへ駆け寄った。

「お嬢様! 今日もいっぱい鳴けました!」

その声には達成感と誇らしさが満ちあふれている。

だが、彼女の背後では、対局者たちが魂の抜けた顔で椅子にもたれかかっていた。

ジェロードがため息をつきながらタオルで額の汗を拭う。

「……それ、褒められることじゃありません」

「え? そうなんですか?」

本気で首をかしげるミーナに、周囲の貴族たちは一斉に目をそらした。

――今日もまた、天然の場荒らしは無自覚に暴れていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。