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14 ダンジョン再び

 師匠の所に王様が直々に来た。

屋敷の中ではメイド達が忙しなく走り回っている。

キラは、聞いてきたばかりの王族の魔石持ちの事だなと考えた。

もし、キラが弟子で無くなれば、自由になれるだろうか。それともこれまで通りの扱いになって仕舞うのか、気が気では無かった。

 本来の賢者の弟子は、賢者が選んだ者だけらしいが、王族に魔石持ちが出たならそっちを優先しなければ、国との軋轢が生れてしまう。

今ここで考えていても仕方がないではないか。礼拝堂は誰も人が来ないのでそこに暫く寛いでいよう。

 何時ものように浄化を掛けて、静かに跪き手を合わせて祈る。

今日は何時もと違い、淡い光がキラを包んでいる。キラは気付いていないが、光はいつまでもキラの側から離れずにいた。

キラの額からは光属性が増して金色に輝く魔石が光を放っていた。

そろそろ王様も帰った頃だ。キラは自室に戻った。

「キラ様、賢者様がお呼びです。」

「はい、」

賢者は、いつになく厳しい面持ちでキラを迎え入れた。

「キラよ、君を私の弟子から外さなければならなくなった。王の側室に3歳の子がいるが、魔石を持っているという。事実かどうかは疑わしいが、国の方針で賢者にするそうだ。君には済まないことだと考えている。何か希望があれば叶えよう。」

「では術の解き方を教えてください。ほかの僕が知らない魔法があれば教えて欲しいです。」

「そうか、君は不満では無いのか?この総てが君の物になったかも知れないのだぞ。」

師匠は、この総てと言いながら、屋敷の方を手で示したがキラには何の感慨も無かった。これはキラの物では無い。自由と引き換えに籠を貰っても嬉しくは無いのだ。

ため息をはきながら、師匠は一冊の綺麗な装丁がされた本をキラに差し出した。

それはキラが欲しかった奥義の書かれた本だった。早速キラはその場で読み切り、本を師匠に返した。

「もう良いのか?呆れた奴だ。感傷も何も無い。全くつまらん奴だ。他に望みは無いのか?」

「では異界の門を通らせてください。これで最後です。御願いいたします。」


 それからは、長期にダンジョンに潜るための準備で屋敷の料理番は大忙しになった。キラが独自に開発した大容量の魔法鞄に詰めるため、大量の料理を作る。

「こんなにあっても腐らせてしまわないもんかね。」

「それが、凄い鞄らしいぜ。時間が止っているんだとよ。」

「嘘つけ、そんなのはおとぎ話さ。でも、可哀想だよな、王族から勝手に横入りされっちまってさ!」

「全くだ。貴族様は何時だって自分の良いようにしちまう。」

 キラの魔法鞄は実は只の大容量の魔法鞄だ。まだ鞄には時間停止は付けられていない。しかし、キラの力に無限収納が加わったのだ。いつの間にそんな能力が付いたのか未だに思い出せないが、それでも、これがあるお陰でダンジョンに長く潜ることが出来るのだ。今度は最後まで行くつもりだ。キラの予想通りなら、もうここへは帰ってこなくても良いはずだ。

 この頃やけに王族からの呼び出しがある。

師匠は無視しておけと言うので其の侭にしているが、若しかするとキラの存在が邪魔になったのかも知れない。

何処へ行ってもキラは負ける気がしないが、もし最終手段を執れば、他人に迷惑が掛かるかも知れない。相手は王族だ。

師匠にも気を付けて貰いたい。王族は師匠が持っている力を無くしたいのかも知れないのだ。師匠も薄々気付いていたから、王族の希望を叶えて弟子を変えたのかも知れない。だがもう直ぐこんな面倒なしがらみから解放される。

 魔法鞄から自分の無限収納に、荷物を移し替えながら今後のことを考えていた。ふと、手に堅い感触があった。取り出してみると、金貨の詰った大きな袋が入っていた。そして手紙が添えてあった。師匠の字だ。

「キラよ。君の今後には必要になる金だ。絶対私に返すような馬鹿な真似はしないように。これは謝罪も込めてあるが、それよりも君の今後に期待を込めた物でもある。何処へ行っても君は賢者だ。術が解けても聖者を目指すのだぞ。元気で暮らせ。」

始めてキラは師匠に心から感謝した。

「大事に使わせて貰います師匠。」


 師匠はキラがダンジョンに少しだけ挑戦した後、この屋敷を出て行く物だと考えていたようだ。最階層を目指すというと、途端に厳しく反対し始めた。

「命を落としに行くのと同じだ。君は自ら死を選ぶのか!王に殺されるのと変わらぬ。早くここから逃げ出せ。グズグズするな!」

それでも譲らないキラに諦めたようだった。

「私の師匠に会えたなら、至らぬ私の代わりに謝ってくれ。」

と言って許してくれたのだ。


 ダンジョンに潜る当日、何故かボブが一緒にいる。

「何故、師匠の従者なのにここに居る?」

「俺は従者を解任された。また冒険者に戻るのさ。だから、一緒に行ってやる。」

これも、師匠の優しさなのだ。涙が出そうになる。師匠は自室に籠もってじっとしているそうだ。

挨拶は不要だと言われてしまった。

「じゃあ、行くか!」

キラとボブは異界の門をくぐっていった。

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