248ーフリフリは嫌
そうなると黙っていないのが、この二人だ。
「ラウ坊ちゃま!」
「私は奥様のお側を離れません!」
おフクとコニスだ。どうして大人しくしてくれないのだろう?
「はぁ~、ふく、こにす、わかってる? まおうじょうらよ。まおうがいるんら」
「もちろん分かってます! でもラウ坊ちゃまは、赤ちゃんの頃から行っておられたのでしょう? なら私たちも大丈夫です!」
「はい! 大丈夫です!」
せめて二人だけは大人しくしていて欲しかった。
二人が眼で訴えてくるのだけど、それをスルーしながら何日か過ごした。俺はさ、なにも家族みんなで魔王城へ行くなんて考えもしていなかったんだ。ピクニックじゃないのだから。
魔王と会ったのは、あの国と戦をしてほしくなかったからだし。
こうして仲良くなって、ちょくちょく魔王城へ行くようになった。魔王は俺に、あの国へ行くのはもう少し待てと言う。俺がまだちびっ子だからだ。
もっとちゃんと話せるようになってからと言っていた。それを言われちゃうと言い返せない。だって本当にまだちびっ子だから。
母はもう付いて行けると思い込んでいて、ご機嫌に俺の準備を進めていた。
何の準備かって? あれだよ、高位貴族の子息子女が招待されているお茶会だ。それに着て行く俺の衣装を準備しているんだ。
「ラウは可愛いからこっちの方が良いわね」
「奥様、でも坊ちゃまはフリルが多いのは、お好きではありませんよ」
母がフリフリをふんだんに使われているシャツを手にしているのを、おフクが止めてくれている。おフク、グッジョブだ。それはあまりにもフリフリしすぎだ。
なにしろ、服の前面に思い切り大きなフリフリが施されている。
「そうね、でもこれ可愛いでしょう?」
「はい、とっても。坊ちゃまが着られると天使です!」
「ね、そう思うでしょう? でもラウは好きじゃないのね?」
やっと着る本人の俺の意見を聞いてくれそうだ。
「かあしゃま、ふちゅうのがいいれしゅ」
「あら、これも普通よ?」
「いえ、奥様。それは普通ではなく、とっても可愛らしいです」
「ふふふ、そうなのよ~。とっても可愛いの! ね、ラウ」
それは女の子が着たら可愛いと思うよ。うん、フリフリだから。どうして貴族の子供の服ってフリフリが多いんだ? いや、もしかして母の好みか?
「かわいくなくていいれしゅ」
「そう? そうなの? 残念だわ~」
できるだけフリフリが少ないのでお願いしたい。ね、おフク頼んだよ。
「奥様、こちらはどうでしょう?」
一番フリフリが少なくて、お首のところに結ぶ大きなリボンが着いているだけのものをおフクが選んでくれた。うん、それならまだいいよ。
「そう? ラウはどうかしら?」
「しょれなら、いいれしゅ」
「そう、じゃあこれにしましょうね」
ふぅ、良かった。おフク、ありがとう。おフクは俺に向かって小さく親指を立てて、サムズアップをして見せた。ふふふ、おフクったら分かっているじゃない。
「でもね、ラウ。一つだけ譲れないものがあるのよ」
え、こわ。なんだろう?
「うちの紋章入りのブローチは必ず付けないといけないの」
「しょうなのれしゅか?」
「そうなのよ。みんな自分の家の紋章を付けるのよ」
ほうほう、それは仕方がない。このお首のリボンのところに付けたらどうだ?
「ね、ふく」
「ええ、そうですね」
そんなことをしながら数日が過ぎ、俺は母と一緒に馬車に乗っている。そのお茶会に出席するためだ。
このお茶会は子供がメインだ。だけどまさか高位貴族の子供のみな訳はない。母親も一緒に出席する。それよりも、俺はソワソワしていた。
「ラウったら、少し落ち着きなさいな」
「らって、かあしゃま。やっとあこちゃんにあえましゅ」
「ふふふ、そうね」
本当は家に行きたいのだけど、アコレーシアの家に危険が迫るといけないからと我慢している。
そうだ、お花を持って来たら良かった。
「ふく、おはなをね」
「ラウ、駄目よ」
即行で母に止められた。どうしてだ? アコレーシアにお花をプレゼントしたいぞ。だってずっと持って行けてないのだから。
「来ているのはアコちゃんだけじゃないでしょう?」
「あー、けろ……」
「それにね、アコちゃんだけじゃなくて、他の子たちとも交流するの」
それって俺は必要ないと思うんだよ。だって、他の子と仲良くなりたいと思ってないもの。前の時だって、同じ貴族の友達なんていなかったし。
「ラウはこの国の王弟殿下の一人息子だってことを、もっと自覚しないといけないわね」
母がこんなことを言うのにも意味があった。
高位貴族が招待されているお茶会だ。当然王女の婚約者候補になる子はいないかと、王や王妃は見ている。
俺は親戚だし、選ばれないのだけど。
でもそれだけじゃない。高位貴族ということは伯爵家の子息も出席する。そこが問題なんだ。
将来的に俺の側近になれるような子はいないかを見るんだ。伯爵家の子供はそれを親に言われているだろう。そして、伯爵家以上の家の子もそれを考えて交流しろと言われる。
「ラウは一番に狙われるのよ」
「ね、ねらわれるのれしゅか?」
「そうよ。だって国で最高位の貴族の子息なんですもの」
あー、ちょっとそれって面倒だ。




