243-教師陣グッジョブ
毒がどこに仕込まれていたのか? 調べ上げたのが、王子の教育に携わっている教師の人たちだ。
勉強中に王子が血を吐いて倒れた。そのこともあって教師陣が激怒したらしい。
「これは由々しき事態ですぞ。我々の貴重な時間に、しかも王子殿下に何をしてくれているんだ!」
怒り心頭に発するとは、このことだ。
「え、おこったのれしゅか?」
「ああ、好き勝手やりやがってと、激怒していたらしい。そのままのテンションで、王子が触った箇所を全部調べ上げたそうだ」
おう、それは凄いことだ。そのおかげで、何から毒を摂取したのか分かったのだからお手柄だ。
教師たちが隅から隅まで調べたが、最初は毒らしき物は発見できなかったらしい。その毒がどういう物なのか、俺は分からないけど。
そして教師陣は頭を突き合わせてミーティングだ。どういうことだ? これだけ調べても何も出てこないのはどうしてだ? 何か見落としていないか? と考えた。
再度、王子が倒れた時のことを思い出し考える。もしや、教本か? と思いついた。そこで王子が使っていた教本を、1ページずつチェックしたらしい。気の遠くなる大変な作業だ。
「そこに塗ってあったんだ」
「あら、毒をですの? でしたら、経皮吸収かしら?」
「ああ、そのとおりだ。盲点だった」
毒といえば、どうしても経口摂取と思いがちだ。それが経皮吸収だった。皮膚を通して体内に吸収される。例えば、経皮毒とかもそうだ。
王子が使っていた教本に毒が塗布されていた。
毒自体は無色透明で、特別きつい匂いのする物ではなかったから気が付かなかった。それを触っているうちに、少しずつ体内に毒が取り込まれ蓄積し、とうとう今日吐血したということだ。
長い時間を掛けて、ゆっくりと少しずつ浸食していく。いつ教本に塗られたのか? 一体誰がどうやって? それが不明なままだ。
しかもその教本は教師陣だって触っている。そこで大人と子供の違いが出たんだ。
今度は医師たちが動いた。それなら教師たちもと検査したら、やはり毒が体内に蓄積されていることが判明した。
なら、その教師たちはどうするんだ? もうピーチリンは全部ミミとフェンが食べちゃったぞ。
「大丈夫だ。フェンが万が一のことを考えて、少し取っていてくれた」
おう、さすがフェンだ。ミミなんてなんにも考えないで食べていただろうな。
「みゃ……」
おっと、ウトウトしていてもこんな時は反応するのか。
「これから出入り業者や、教師たちが購入していた書店も捜査する」
気が遠くなるような捜査になるだろう。
「一つずつ確実に潰していく」
父の決意だ。王族にまで被害が出たんだ。こんなの最悪は、国同士の戦になってもおかしくはない。
いつもの感じで会議を進めているように見えるけど、父はいつもとは違っていた。ソワソワしているというか、悪くいうとちょっと浮ついている。
「あなた、落ち着かないと危険ですわよ」
「ああ、分かっている。しかしだな、今日はどうにも落ち着かん」
どうしてかというと、二度目の精霊界を体験したからだ。その話をしたくてウズウズしているんだ。
「アリシアは精霊界に行ってなんとも思わなかったのか? あのような幻想的な世界を」
「あら、そんなことないですわよ。ですけど、私が行った時はそれよりも切羽詰まっていましたから」
あなたを助け出そうと……と言葉を続けた。なんだか両親の間にハートが飛んでないか? 相変わらずラブラブだな。会議はもういいなら、俺は寝たい。眠いぞ。
「これからはラウが行く時は私も一緒に行こう」
俺に言われてもね、どうしようもない。
「ラウは何度も行っているのだろう?」
「あい、ちょくちょく」
「ちょくちょくなのか!? なら私もこれからは、ちょくちょく行くぞ!」
「ええー」
精霊女王がどう言うか分からないからね。それに精霊界に行く時は、大抵そこを経由して魔王に会いに行くからな。また魔王城へ一緒に行く?
父が一緒でも母は心配すると思うのだけど。次は、私も一緒に行くと言い出しかねない。さすがに魔王城へ母を連れて行くのは躊躇する。
それよりも、俺は今とっても眠い。瞼が勝手に閉じてきちゃうよ。
「あら、ラウはもうお眠ね」
「仕方ない、今日は疲れただろう」
「フク、ラウを寝かせてあげてちょうだい」
「はい、奥様」
俺はまだ3歳だからね、夜の会議は遠慮したい。
おフクに抱っこされて会議室を出たところまでは覚えている。だけど、気が付けば目の前に精霊女王が立っていた。ああ、また呼ばれたんだ。でも今日はお礼を言わないと。
「しぇいれいじょうおう、きょうは、ありがと」
「ふふふ、間に合って良かったわね」
「うん、どうなることかとおもっちゃった」
「死んでさえいなければ、ピーチリンで治らないものはないわよ」
死んでさえなんて物騒な。そんなことになってほしくない。前の時にこんなことがあったのだろうか? 俺は全然覚えていないのだけど。
「なかったわよ。前の時は、あの深紅の髪の女性が捕まっていなかったもの」
「あー、ちゅかまったから、せっぱつまったみたいな?」
「そうかも知れないわね」
でも、許せないわ。と精霊女王が怖い目をして言った。
俺だって許せない。人の命をなんだと思っているんだ? だけど、あの拘束されている人を見るとね。




