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今世でまた会いましょう  作者: 温和湯屋
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1話 巳城伊澄という人間


 少女にはよく見る夢が有った。森の中にある開けた一帯にある湖。そして無邪気に話しかけて来る青年、そしてその周りには白蛇が決まって近くに居た。毎日見る訳では無いが、夢という物を意識できて見る時には決まった内容だった。


 そんな少女、もとい巳城伊澄(みしろいすみ)は東京から親の都合で引っ越しをして来た所で有る。微妙な発展途上中と言ったこの田舎とも言い切れないこの土地で最初に見た夢もまた似たような夢だった。

 またあの夢だった…と微妙な気持ちになりながらも起きて朝の支度を始める。まずぬるま湯での洗顔に順序の決まった朝のスキンケア、タオルでは皮膚を傷付けるので顔を拭くには必ずティッシュ。起床後起きてまず飲むのは常温の水、そして白湯。外見に気を遣う伊澄の決まったルーティーンである。


「おはよう伊澄、今日から新しい学校ね」

「…おはよう。別に頑張る程でも無いんじゃない?」

「伊澄は可愛いからすぐ友達もできそうだし、勉強もサボったりしないし、お母さん引っ越しして来てから近所の人に自慢しちゃおっかなぁ?」

「ちょっと…、恥ずかしいからやめてよね?」


 朝からご機嫌そうな母を横目に準備を進めて行く。父は既に職場へ向かう為に家を出たようだ。そう、伊澄は今日は引っ越し後、転校先の高校へ初めて登校する。周りは全員初めて会う人なのだし、と今日はいつも以上に外見を整えて行かなければいけない。濃すぎない程度の化粧、胸元まで伸びた髪はいつも毛先だけ軽く巻くのが伊澄のお気に入りスタイルだ。

 朝食も軽く済ませ、新しい制服に袖を通す。制服は前の高校の方が可愛かったな、と心の中で少し残念に思うが、校則がそこまで厳しくは無いのでこれからある程度は着崩せるであろう。


「じゃあ、行ってくるね」


 ニコニコの母の見送りを終えて家を出る。

 新しく通う高校、石清水高校へは伊澄の自宅からは徒歩15分程だ。学校への通学路を把握する為、数回歩いてはみたがこの時間に歩いてみるのは初めてで、新鮮な気持ちになり少しだけ高揚感を感じた。学校へ近づくに連れて同じ制服を着た生徒の姿もちらほら見かけるようになって来る。当たり前ではあるが、全員知らない人なので先程の高揚感に合わせて緊張のような気持ちも湧いてきた。


「うわ、ヘビいるじゃん!」

「えっ?ほんとだ、ちょっと怖いんだけど!」

「俺もヘビは無理…避けてさっさと行こう」



 また、蛇。


 歩道の端、すぐ側には草むらが有るのでそこから出て来てしまったのであろう1匹の蛇が居た。

 他の通行人は蛇をあからさまに避けて行くが伊澄はそこまで蛇という生き物に嫌悪感は抱かなかった。彼女は幼い頃から蛇に縁がある事が多かったのだ。

 夢の中で見かける白い蛇、そして東京というこの国一番の都会で生まれ育ったにも関わらず、度々蛇に出くわす事が有った。

 ある時は今のように通行路で、そして学校行事の遠足や宿泊学習で。出会う蛇は確かに見た目こそ怖いとは思ったが、伊澄がどれだけ近くに居ようと何もして来なかった。

 危ないから近づいちゃダメだよ、という一般論を受けて自分から進んで触れたりはしないが、「何もしないからそこまで嫌がらなくても良いのに」というのが伊澄に身に付いた蛇への印象だ。


「そんな所に居たら踏まれちゃうよ、あっち行ってな」


 誰にも聞こえないくらいの声で蛇に向かって言い、その場を離れた。蛇はその場から動かず、学校へ歩き始めた伊澄へずっと視線を向けていた。


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