表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/42

九月 特区(3)

 クラウンさんから降りたボクたちは、区長さんの後ろを歩いて、まずは消防署の方から先に見学させてもらうことになった。


「「「「地球の皆さん、ようこそお越しくださいました!」」」」


 正面の入口から消防署の中に入ると、人数は少ないものの連合の制服を着た消防隊員さんたちが、一列に並んで出迎えてくれた。

 こういうのは麗華さんは慣れているようなので、思わず驚いてしまったのは、ボク一人だけだったようだ。


「お勤めごくろうさま。どうぞ、楽にしてください。聞いてるとは思いますが、今日は地球の皆さんに、日頃貴方たちがどのような仕事をしているのか、施設を見学しながら、教えてもらうつもりです」

「はい! うかがっております!」


 区長さんの声に、整列している男女混合の隊員の中から、一人の男性がハキハキと答えを返して、前に進み出る。


「こちらへどうぞ! 施設を案内させていただきます!」


 それからボクたち五人は、案内の隊員さんの後ろを歩いて、消防署の中を見学させてもらった。パッと見た感じはコンクリート作りの普通の建物に見えるんだけどね。

 しかし、最初は何の気なしに見学していたボクと麗華さんは、この日のために準備していたと思われる、外の演習場での消防隊員たちの実地訓練が終わると、二人揃って表情を失ってしまった。

 特区全ての火災情報が秒刻みで収集及び処理される司令室は、まだ辛うじて地球にも、もしかしたらあるかも?…だからいいのだ。

 問題は何処にも接続していないのに、無尽蔵に水を吸い込み続ける消防ホース。炎だけではなく建物すら一瞬で吹き飛ばす程の水圧を、永続的に生み出す消防車。火の熱だけでなく、口から取り込む有毒物質を即座に浄化し、マグマの海に潜ってもスイスイ泳げる消防服等、明らかに連合の超技術が数多く配備されていた。


「以上が消防署の全容となります! 何か質問等はありますでしょうか!」


 一通り案内して消防署の入り口まで戻り、真面目な顔でこちらからの質問を期待する消防職員さんに対して、ボクと麗華さんはお互いの顔を見て頷き合うと、目の前の彼にニッコリと微笑みかけたあと、二人してフルフルと首を振った。

 これは突っ込んで聞いたらアカン案件なのだ。


「そうですか…では、私はこれで失礼します! また何かありましたら、お気軽に質問及び、消防署にお立ち寄りください! 本日はご見学、ありがとうございました!」


 一瞬明らかに残念そうな表情を浮かべたけど、気を取り直して、区長さんに向かってビシッと敬礼して、消防隊員の代表さんは後ろをむいて背筋を伸ばし、仲間の消防隊員の元へと帰っていった。


「お疲れ様。隣の警察署で最後だよ。こちらは私が案内するから、署内の皆の仕事ぶりをこっそりと見学させてもらおうか」


 連合の消防隊員は皆、趣味で働いているので、時間に融通がきく。利き過ぎると言ってもいい。

 つまり彼らは出動要請がない今、自主的に訓練を行う以外はすごく暇だったのだ。

 そんな彼に質問をせずに帰してしまったことに、若干の申し訳なさを感じつつ、気を取り直して区長さんの後に付いていく。


「「「「地球の皆さん! ようこそいらっしゃいました!」」」」

「ご苦労さま。皆、仕事に戻っていいよ」


 入り口をくぐると、受付の警察署員の皆さんが出迎えてくれた。見た目は地球の警察の制服に近く。一人の例外もなく皆の体格がいい以外は違和感はない。

 それを区長さんが丁寧に挨拶を返し、それじゃ行こうかと言われたので、五人は小さな施設の中を見回しながら、テクテクと後について歩いて行く。


「警察も消防も地球では仕事の一つかもしれないけど、連合では行う必要すらないから、趣味の一つだよ。それに二つの建物は繋がってるから、暇になったら互いに頻繁に遊びに行くんだよ」


そういうものらしい。何となく聞かされていたけど、地球の仕事は全て、公務員でさえも連合にとっては趣味の一つらしい。

よく見ると、先程消防署で整列していた人が、警察署の制服を着て、何人も混じっていた。その日の気分によって、どちらの仕事にするか決めているのかもしれない。


「地上部分は地球にあるものと、外観はそう変わらないよ」


 確かにこちらも、隣と同じくコンクリート作りの建物で、廊下の途中に各部屋の表札がかかっていた。刑事ドラマに出てくる場面と、それ程変わりはない。あくまでも見た目だけなのかもしれないけど。


「警察署を建てるときに、どうしても広い地下部分が欲しいという要望が多数ありましてね。本当は直通エレベーターや転送装置もあるのですけど、今回は階段で行きましょうか」


 確かに刑事ドラマでも、拳銃の試射とかやっていたから、試し撃ちのために広い場所が欲しくなったのだろう。元々の地上部分の面積は、隣と合わせてもかなり狭いため、上に作るのは不可能だったのだろう。それ以前に危険な火薬を管理するので、地下でないとマズイのかもしれない。


「着きましたよ。ここが地下部分の入り口です。部屋に入る前に皆さんは、専用のヘッドホンをつけてくださいね」


 区長さんに続いて地下への階段を降りて、廊下の一番手前の扉を開ける。

 遠くの的を目がけて確かに拳銃の試射を行っている警察署員が何人もいた。かなり広々とした射撃場に思える。

 それは、普通に撃つと肩が外れそうな拳銃を片手撃ちで連射したり、空中を高速で移動しながら二丁持ちで遠くの的に全弾命中させていたり、実弾ではなくビーム兵器を構えて、目標の的を消し炭にしていたりと、警察署員の皆さんがそれぞれやりたい放題していた。


「綾小路家の影響で、警察署員は連合の男性にもっとも人気があり、花形職業になっているんですよ」


 確かに綾小路家にあるアニメや映画では、警察組織を正義の味方として扱うものも多い。

 そしてこの国では、自衛用の軍の以外でそういった力を持てるのは、表向きはこの組織以外は存在しないと言っていいだろう。

 センコさんとディアナさんも、楽しそうな警察署員たちの様子を見て、すごく混ざりたそうにウズウズしているのが伝わってくる。


「さて、それでは次に行きましょうか」

「えっ? この部屋で地下施設は終わりじゃないんですか?」


 ボクは少し不思議に思いながらも、廊下に戻ってヘッドホンを外し、案内に従って少し歩いた先の一番奥の部屋にある、最後の扉を開ける。


「はああああっ!!! 変身! とうっ!」

「妖精さん! 私に力を貸して!!!」


 その部屋は何というか。色々と酷すぎた。そこは本物そっくりの怪人の処刑場であり、いつもの砕石所であった。地下なのに何故か天井があるはずの場所には青空が見えており、太陽も眩しく輝いていた。

 連合の人たちは変身ベルトや魔法少女の変身アイテムだけでなく、変身バンクも忠実に再現し、さらには大国のスーパーヒーローも勢揃いしており、コスチュームも限りなく原作に似せられていた。

 その決戦のバトルフィールドで、リアルな3D技術で無数の悪役たちを相手に、終わることのない戦いを繰り広げていた。怪人を必殺技で爆発四散させたときに、固有の勝利ポーズも行う程の凝りようである。


「あれは戦闘訓練ですね。3Dモデルから実際に攻撃を受けても殆ど痛みはありませんが、直接触れることも出来、少しの時間痺れるように調整されています。何度も攻撃判定を受けた警察署員はやがて戦闘不能と判断され、怪人の人質役となります」


 区長さんが指を指した方角を見てみると、多くの怪人たちが集まっている丘の上に、十字架に磔にされていたり、巨大なカプセルの中に閉じ込められている、連合の皆さんの姿があった。

 訓練所の壁沿いに設置された大型リアル3Dモニターでは、華麗に戦う姿や、悲壮な表情で助けを求める姿が鮮明に映し出されているようだ。


「戦闘不能なった警察署員は全く動けず、捕らえられていない人が、十字架やカプセルに触れない限り、復帰することは出来ないのです。もしよろしければ、皆さんも参加されますか? あちらのパネルに手をかざせば、彼らと同じ戦闘訓練が開始されますよ」


 これは遊びの一つである警泥? 確かに警察組織として相応しい娯楽である。

 連合の警察署員さんたちの、俺の必殺技が効かない!? ちくしょう! 右に避けるべきだった! 愛の力は無敵よ! 誰か助けてぇ! さっ…サンダー! と言った、怒号が飛び交う戦闘訓練を、黙って見学していた。

 そのとき、隣の二人がとうとう我慢出来なくなったのか、区長さんが教えてくれたパネルへと駆け寄っていき、すぐさま訓練参加登録を完了する。

 センコさんには特区に来る前に、もし戦うなら実力を隠して目立たないよう、なるべく連合さんたちの強さに押さえてね…と、よく言い含めているので、巨大なクレーターをポコジャガ量産する事態にはならないはずだ。


「見てられんな。貴様らに本当の戦いを教えてやろう! さあ、教育してやるのじゃ!」

「私が来たからには、もう安心よ! ディアナ調査員! 行っきまーす!」


 突然の乱入者に連合の警察官の皆さんから注目が集まるなか、堂々とした名乗りを済ませると、二人は怪人の群れに真正面から突っ込んでいく。

 そんな中、区長さんからボクにも声がかかった。


「幸子ちゃんもやりませんか?」

「えっ? ボクが? 何で? ボクは皆さんのように戦うのは苦手だから、参戦してもすぐに捕まっちゃいますよ」

「ええ、それでいいのです。今回の訓練に人質役として参加してもらい、警察の皆さんに、救出作戦により発破をかけてもらえたらと思いまして」


 迷ったものの、戦闘要員として参加せずに見てるだけなら、少しぐらい協力してあげてもいいかなと、区長さんの頼みを了承した。


「では、訓練の終了条件を変更しましょうか。ええと…現在の設定では、どちらかが全滅すれば終了となっていますね。これを幸子ちゃんを助け出すか、味方が全滅したら終了…こんなところでしょうか」


 区長さんが近くの警察署員さんの偉い人と一緒に、相談しながらパネルを操作する。そして入力が完了したのか。

 全ての怪人の3D映像を消して、戦闘訓練を一時的に中断する。


「えー、コホン。訓練を突然中断してしまい申し訳ありませんでした。私は特区区長です。そしてこちらにいる地球人のお二人は、幸子ちゃんと麗華さんです。これから、戦闘訓練の勝利条件を少しだけ変更させていただきました。詳しくはパネルに表示されていますので、そちらを御覧ください」


 指示されたパネルの勝利条件に大きく表示されている、幸子という名前を見つけて、警察署員の皆さんがザワザワとどよめいた。

 そこで区長の隣でパネルの操作を行っていた、偉そうな警察官の人が大声をあげる。


「今から行う戦闘訓練は、特区、母艦、そして連合本星、その他惑星系にも完全生中継される! そして敗北条件は俺たちの全滅! 勝利条件は、幸子ちゃんの救出の一点のみ! ただし今回に限り、攻撃を受けた者は人質ではなく、フィールド外に転送されて復活は出来ない!」


 今までとは違う厳しい戦闘条件に、警察署員の皆さんのざわつきがますます大きくなっていく。

 でも生中継とか聞いてないんだけど。この訓練が終わったらボクは、超銀河庶民幸子とかなってしまうのだろうか。


「しかし、皆が一丸となれば、必ずや幸子ちゃんを助けられると信じている! たがそれでも、任務達成が困難であることには変わりはない! 自信のない者は辞退しても責めはしない!」


 彼の言葉に誰も背を向けようとはせずに、黙って次の言葉を待っている。全惑星規模の生中継で失敗したくはないだろうし、ボクも辞退していいですか? 駄目?


「ふんっ、どうやらこの部隊には命がいらん大馬鹿者しかいないようだな! よしお前たち! 連合と地球の架け橋となった、幸子ちゃんを捕らえた卑劣な怪人共を、一匹残らず地獄に送ってやろうぜ!」

「「「「おおーーーっ!!!」」」」


 そして偉い警察の人が、今から十分後に幸子ちゃん救出ミッションを開始する! と宣言して、この場は解散となった。しかし何ぶん短い時間なので、ボクにはこの時間に何が出来るかは思い浮かばない。そこで訓練所に集まった人たちの様子をぼんやりと観察していた。

 皆さんは自分の装備のチェックに余念がないようだ。それと、演説が終わってから、ひっきりなしに訓練所に、連合の人が次から次へとやって来ている。既に最初からこの場にいた人の、数倍の規模に増えている。

 そんなボクの疑問を、区長さんが答えてくれた。


「幸子ちゃんを助けるために、転送可能距離にいる連合の仲間が駆けつけてくれたようだね。ようやく、自分たちの力を存分に振るう機会が訪れたんだ。しかもそれが、同盟関係である地球の姫の救出とくれば、重病人でもない限り這ってでも参戦するよ」


 地球の姫なら、ボクの隣の麗華さんが相応しいと思うんだけど、駄目なのかな? 結局十分を過ぎても際限なく人数が増え続けたため、途中参戦も自由という条件を新たに付け加えて、何とか戦闘訓練にこぎつけた。


 そして警察署員の偉い人が訓練開始と宣言してパネルを操作すると、ボクの視界が白く染まり、次に目の前が晴れたときには、いつもの砕石所の崖の上で、大きなカプセルの中に閉じ込められていた。

 ちなみに普通に呼吸も出来るし、中の温度は暑くもなく寒くもなく、とても快適であった。

 しかし周りを見ると、多種多様な怪人さんたちが、ボクのほうを見てはいないものの、大勢集まっていたため、見た目的なインパクトは抜群である。心臓が弱い人ならあっという間に気を失いそうだけど、ここ最近で多少は鍛えられていたボクは、少し引いてしまう程度で収まり、辛うじて平静を保てていた。


「崖の下は…警察署員さんと、新しく参戦した人たちと、センコさんとディアナさんがいるね。まだ遠くて、何を喋ってるかはわからないけど」


 どうやら戦闘がはじまったようで、皆それぞれの自慢の装備を使い、怪人をバッタバッタと倒していた。多分、主ー!とか、幸子ー!とか叫んでいるだろうと、適当に当たりをつける。


「誰が助けてくれるのかな? でも勝利条件は厳しかったようだし、まさかの全滅エンドもあるかも」


 ふと気づくと、カプセルの下部に、緑色のレーザー光のような細い線が横向きに表示されていることに気づいた。


「何これ? さっきはなかったはずだけど…え? 別に触れても感触はないけど、緑ラインの下のところが…透けてる? あっ…でも、透明なだけで靴はちゃんと履いてる。って…そういう問題じゃないよ!?」


 このままだとマズイ事態になるのは想像に難しくない。おそらくこれまでの人生の中でも、最大のピンチである。


「マズイ! マズイ! マズイ! これ時間制限あるやつだ! 下から登ってくるのは服の透過光線みたいなやつだ!」


 ボクは女性としての魅力は皆無だけど、自分から女を捨てるつもりはないのだ。

 万が一にも緑のラインが天井まで昇りきったときには、羞恥のあまり死んでしまうかもしれない。

 気づけば大型3Dモニターにも、ボクが色んな意味で絶望している姿が、これでもかとアップで映し出されていた。


「お願いします! 誰でもいいから、パンツが見えないうちに助けにきてください!」


 まだ靴下が消えただけなので、時間的に余裕があると言えばそうだけど、実際に閉じ込められている本人には、余裕などこれっぽっちもなかった。

 靴下は透過してないことから、流石に上一枚で、下着までは許してくれるようだけど、そういう問題ではない。恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。


「まっまだ膝だからセーフ! でも、はっ…早く! 早く…見えちゃうからぁ!」


 連合の人たちは、部隊ごとの連携や必殺技などを使って、怪人の群れを吹き飛ばしてはいるものの、やはり数が多いためか、センコさんやディアナさんも頑張ってはいるものの、なかなか前に進めずにいる。

 そうこうしているうちに、緑のラインはとうとうボクの腰まで届いてしまった


「ぐぬぬ…まだ! まだ耐えるんだ……あっ」


 せめてもの抵抗とばかりに、カプセルに体をもたせかけながら、プルプルと震えて爪先立ちをすることで、到達時間を遅らせようとしたものの、やがて時間切れになってしまった。

 透過ラインが腰の位置を完全に越えた今、青の線が入った可愛らしい縞パンが、訓練所のに設置されている大型3Dモニターに、これでもかと映し出されてしまう。


「あっあぁ…! マモレナカッタ…」


 瞬間、うおおおおおお!!! やったぞおおおお!!! という、連合の皆さんの大歓喜の声が訓練所を震わせることになった。

 何故か麗華さんとセンコさんとディアナさんも、手を握りあって一緒に喜びを分かち合っていたんだけど。

 何でボクのような地味系小娘のパンツを見てそんなに嬉しがるの! 色々とおかしいよね!


「って、このままだとマズイよ! 早く助けてえーっ!!!」


 腰を通過した透過光線は、既におヘソを越えて上へ、上へと昇ってきている。

 連合の人たちもやられて人数が減ったものの、それを上回る速度で次から次へと参戦者が現れて、次第に怪人たちを押し込みつつある。

 交戦ラインも最初の位置よりも半分以上踏破しており、もう少し耐えれば救出完了になるはずである。


「皆、頑張って…頑張って…!」


 カプセルの中で、ひたすら皆に祈りを捧げるボク。今は救出されるのか、それとも先に、申し訳程度の小山を隠すために着用している、子供サイズの薄水色のブラジャーが暴かれるかどうかの瀬戸際なのだ。それより問題なのは、ボクの正確なスリーサイズが、全惑星に知れ渡ってしまうことだ。

 やがて怪人たちを蹴散らす先頭集団の中から、センコさんとディアナさんが突出し、目的のカプセルに迫る。


「よかった! 間に合った! ……あっ!」


 またもカプセルに体を預けて爪先立ちを行い、これならギリギリで救出が間に合うと気が緩んだせいか、少しだけ下半身から力が抜けてバランスを失い、思いっきり転倒してしまう。


「あっ…主」

「さっ…幸子」


 カプセルの中で転んだために、ボクの全身は緑のラインよりも、完全に下になってしまった。

 つまり、皆には下着以外は何も着ていない、すっぽんぽんの状態に見えるのだ。

 残った連合の人たちも、ようやく怪人たちを駆逐し終わったのか、ボクの側にぞろぞろと集まってきた。

 珍しく硬直するセンコさんが、やがて重々しく口を開く。


「あー…主、その下着も似合っておるぞ」

「フォローはいいから、早く助けて…」


 当然大型3Dモニターには、ほぼ全裸で頬を朱色に染め、半泣きになっているボクの痴態が、様々な角度からこれでもかと映し出されており、連合の人たちの歓喜の雄叫びと好奇の視線を集めていた。

 だからこんな平凡な小娘の肢体を見て、皆は何がそんなに嬉しいの!? うぅ…恥ずかしい。

 この日、今まで必死に隠してきた…と思っているボクのスリーサイズが、全惑星規模で白日のもとに暴かれてしまったのだった。


 結局、最後の最後に大恥をかいてしまった。区長さんや警察署員や参戦してくれた人たちは、おかげでいい思い出が出来ましたとホクホク顔で大喜びだったけど、ボクは恥ずかしかったよ!






 こうして、ボクたちの特区訪問は終わった。

 連合の人たちは帰り際に、ぜひまた来てくださいと言ってくれたけど、ボクの心の傷が癒えるまでは、当分行けないと思うよ。


 しかし味方だと思っていた麗華さん、センコさん、ディアナさんまで、連合の人たちと一緒に大喜びするとは思わなかった。

 これは重い罰が必要だと考えて、三人に一回ずつ食事を奢ってもらうことに決定する。

 今回はハンバーガー単品じゃなくて、ポテトとドリンクもつけるからね! そうじゃないと許さないよ!

 我ながら酷すぎる罰だと思っていたけど、何故か喜んで了承する三人。ボクは思わぬ奢りが増えて嬉しくなり、気分が上向きになったせいか。

 帰りの山道を車に揺られながら、これなら心の傷もあっという間に癒えそうだよと、能天気にそんなことを思ったのだった。


今後の展望が不鮮明で学園生活編で当初の予定では完結となっております。なので申し訳ありませんが、今回もこのお話で完結とさせていただきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ