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崩天蛇神の秩序維持  作者: てるてるぼうず
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遅刻しないように退出

 とうとうPVが一万を超えました。とても嬉しいです。

 これからも頑張ります。

「バッカ何やってんだ!? 味方同士で、しかもこいつはこれから試合があるんだぞ!?」

「少し静かにしてもらえないかしら。私はこの男と話がしたいのよ」

「なら刀を下ろせ! 万が一が起こったらどうするつもりだ!?」

「このままで構いませんよ」


 騒然とする会議室で俺は特に口調も変えずに返答した。この状況の方がかえって先輩の本音を聞き出せそうだ。


「返答次第では本当に貫くわよ」

「では、良く考えて答えましょう。それで話とは?」

「余りあの剣術を見くびらない方が良いわよ。このテーブルみたいになりたくなかったら」


 そう言いながら刀を鞘に納めると同時にテーブルはバラバラに崩れ落ちた。


「うわ! テーブルがバラバラに!?」

「い、いったいどうやったらテーブルがこんな風になるんだよ……?」


 余りにも速く鋭い剣戟によりテーブルを斬ることによって、崩れるまでに時間差が生じてしまったのだろう。俺にもよくわからんが。


「その技、なんと言う名前なんですか? 何故右から振りかかる演技をしたんです?」

「……! 今のを見切ったと?」

「……そろそろ時間ですね。オリヴィエ、会場に向かうぞ」


 薄暗い部屋の中、薄く蛍光している時計の針を確認し、オリヴィエに退出を促した。勿論時間にはまだまだ余裕があるが、これ以上会議を続けても今の技以上の収穫もなさそうなのでさっさと行くことにした。


「……あ! おい、止めなくていいのかよ!?」

「そ、そうだ! 勝手な事は」

「あの方から早期に退出することを認められているので、いつまでもここにいるつもりはありませんよ」

「だ、だとしてもだ! おい! お前も何か無いのか!?」


 先輩たちはあわただしく騒いでいる。


「待ちなさい! ……技の名前を聞かなくてもいいの?」

「ああ、言いたくなければ構いませんよ。それに三つも技を教えてもらったのですから、とても一度には覚え切れませんね」

「み、三つ? そんなにあったのか?」


 全員驚いているようだった。


「一つはテーブルを切り刻んだ抜刀術、もう一つは俺に対してのフェイント技、そして最後に一瞬で俺の眼前に移動して見せた歩法。どれもが生半可な代物ではありませんでした。貴重な見取り稽古になりましたよ。ありがとうございます」

「……幻月一刀流、朧鬼灯……貴方が知りたがっていた技の名前です」


 先輩は観念したかのように俺に技の名前を教えてくれた。


「ありがとうございます。きっと綾瀬君と戦うときに役立ちますよ」

「他の技については聞かないつもり?」

「その必要はありません。歩法や抜刀術に関しては自前のがあるので」


 まあ、名前なんて知らなくてもどういう攻撃なのかを把握しておけば、防ぐぶんには基本的に関係ないからな。とはいえ、もしかしたらさくらが知っている可能性があるから一応流派は聞いておいたが。


「ま、待て! まだ会議は終わっていないぞ」

「先ほども言ったように俺は退出許可は貰っています。それともあの方からの許可よりも重大な権限を誰かお持ちなんですか?」

「そ、それは……」


 会議室は静寂に包まれたが、それを打ち破ったのはこの中の人物ではなく、扉が開く音と、一人の足音だった。


「あら、まだ時間に余裕があるように思うのだけれどもう退出? それにテーブルが壊れているわね。議事録を持ってきなさい。すぐに確認するわ」

「部長……俺は単に早めに会場に移動したいだけですよ。そろそろ本選のトーナメント表が出されるころでしょう」

「ならご安心を、持ってきたわ。……貴方達どうしたの? 早く席に着きなさい」


 部長からの言葉に逆らえる者などいるはずも無く、床にばら撒かれているかつてテーブルだった残骸をそのままほったらかしにし、椅子に座った。……というか今更だが、議事録なんて記録してたんだな。


「ふーん、テーブルを壊したのは誰かわかったわ。貴方達、随分とはしゃいでいたようね。それで? この議事録通りの勢いはどこに行ってしまったわけ?」

「も、申し訳ありません。この私がついていながら」

「まあこの件についてはホテルの人に伝えておくとして……トーナメント表は確認できたかしら?」


 部長から手渡されたトーナメント表を確認すると、どうやら爽やかイケメンコンビとは決勝までぶつからないようだ。ということはつまり、必然的に綾瀬チームとは準決勝で潰し合いになる訳だ。


「出来ました」

「どう? 今日中にベスト四位まで一気に決定するけど」

「四連戦ですが、まあ何とかなると思いますよ」

「こちらも万全の対策は出来ています。必ずや勝ち進んで見せましょう」


 オリヴィエも一切喋っていないが、確認はちゃんとしているようだった。それにしても何で会議中一言も発言しなかったんだ?


「それは重畳。それでは本選出場者は退出しても構いません。残った貴方達は……この議事録に書かれている事での気になった部分の説明をしてもらいます。わかっていると思いますがあえて言わせて貰えば、ここ最近プライベートな理由で非常に不愉快な気分になっています……それを知った上で、ここまでふざけたものだと判断します」


 これはまずいな。早く退出しないと見たくないものが目に映る可能性が非常に高い。


「さっさと移動するぞ、遅刻はご免だ」


 オリヴィエは尚も黙ったまま椅子から立ち上がり会議室から退出した。


「俺達も急ぐぞ」

「ああ、そうだな。天蓋、お前もすぐに会場に向かうぞ」

「はい」


 俺達もさっさとこの部屋から退散することにした。


「あいつら相当なペナルティを受けるだろうな」

「こうなる事わかっているのに何で会議でふざけてたんでしょうね?」

「知らんな、なんにせよ自己責任だ。貴様が気にすることでもあるまい」

「俺から言わせればなんでお前が一言も喋らなかったのかも気になる事だがな」


 部屋から出た途端普通に喋り始めやがって。


「馬鹿だなお前、一言も話さない方がかっこいいだろ。すべてが謎に包まれている感じがして」

「そんなことはない! ああれは単に……」

「謎って誰に隠す必要があるんですか? そもそもどんな秘密が隠せるんですか普通に血筋とか全員に知れ渡っていますよ」

「とにかく! 次の試合ではどんな衣装で戦うか決めるぞ!」

「だから衣装ありきで決めようとするな!」


 どういう神経してたら武器より衣装の方が気にかかるんだ。

 今更そんなこと気にしても意味ないか。とにかくさっさと会場に移動した。


◆◆◆◆◆


 そして会場の控え室にはすでにウィル達がすでに待っている状態だった。


「あ! 天蓋おはよう!」

「おはよう」


 みんなに挨拶を済ませるとさっさとどの武器で戦うかの話し合いになった。


「そういえば聞いておきたいことがあるんだけど良い?」

「なんだ?」

「天蓋はどの武器が一番使いやすいの?」

「しいて言うならこの片手剣だな。純白の刀身を持つ剣だ」


 俺は片手剣を取り出しみんなに見せた。


「片手……? なんですかこれ?」

「いやでか過ぎでしょ。そもそも剣何本持ってんのよ、しかも全部サイズ違うし」

「当たり前だ、片手剣、野太刀、一刀流用の打ち刀、二刀流用の打ち刀、これらは全て片刃、他にも両刃の物がある。それぞれ武器としての性質が異なる以上用意しておかなくてはならないわけだ」


 まあ、そんな風に武器を用意するから大量になってしまうんだが。


「へー、それじゃあこの二本一対の奴はなんで他のより短いの?」

「当たり前ですよ! 両手用の刀を片手で扱える訳無いでしょう? だから二刀流用の刀は軽量化のために短くなっているんですよ」

「これってやっぱり二本の方が強いのか?」

「そればかりは一概には言えないな。一刀流にしても二刀流にしても達人の域に達すると甲乙つけがたい程になる。俺ではその答えは永劫出せないかもな」


まあ俺の場合最終的に武器使わない方が一番強いからな。そもそも蛇になったら武器もてないし。


「その、刀? 確かさくらも持ってたわよね? やっぱりこいつが使ってるのっていい奴だとかわかるの?」

「私は目利きについては素人ですけど、天蓋さんの持っている刀はどれも見たことの無いものばかりですしそれに一級品ばかりですよ!」


 確かにこれ全部向こうから持ってきたものだから見たこと無いだろうな。しかも全部地獄にいる刀鍛冶から仕事上渡されたものばかりだし。流石にこの世に存在しない金属は使われていないはずだが。

 流石に稽古中に見せたのはまずかったか?


「見たこと無いのに一級品とかわかるんだ?」

「俺も良くわからんがそういうものなんじゃないのか?」

「あんたもわかんないの!? 流石に知ってなさいよ!」

「後で調べておくよ」


 こういう武器って結局修羅場になったら乱暴に扱ったりするからな。そういえば何本か折った時はあいつらガチ泣きしてたからな……やっぱり凄く良いものだったんだろうな。


「それはそうとこの中ではどれが一番強い武器なの?」

「私も気になる」

「確か槍は貴重な物だとか言っていたな? やはりこれが一番強いのか」

「いや、一番強い武器は流石に肌身離さず持っている。なくしたら大変なことになるからな」


 そう言いなが制服の内ポケットに手を入れ手持ちの中で最強の武器を取り出した。


「えっと、何その……紐? 帯?」

「まあ、帯だな。スリング、簡単に言うと投石器だ」

「投石器って石投げるためのあれ?」

「そうだ。詳しいな」


 エリーの言葉に普通に答えた。


「最強の武器それかよ……滅茶苦茶がっかりするな」

「これ相当凄い武器だからな? どっかの王子様は巨人だって一撃で倒したことあるんだぞ。いや別にこれはその実物ではないし全然関係ないけど」

「そんなに凄いなら試合で使うの?」

「ああそれは無理だ。強力すぎるからな、完全に大会のレギュレーション違反になるから使うことは多分無いな」


流石にこれを使うのは駄目だな。知り合いから貰った神話級の兵器だし。まあそれは片手剣もそうなんだがあれはそんなに強力な武器ではないし加護もない。


「本題に戻りましょ、私はこの服に一ポイント投票するわね」

「ポイント制!?」

「私は何でもお似合いになると思いますよお兄様! でもですよ? あえて何を着て欲しいかと言われたらですね!?」

「だからお前ら服のセンスで決めるなって言ってんだろ!」


 余りにも本題からかけ離れた話し合いになってしまったので全員を一喝した。


「わ、わかったわよ、……じゃ、じゃあこの亀の甲羅と短い槍っぽいのが良さそうね」

「なるほどな」

「ティンベーとローチンですか。相変わらず珍しい武器を使いますね」

「……! ……上杉先輩、おはようございます」

「うん、おはよう。それにしても珍しいね、玄武の甲羅とは……」


 流石に一発で見抜くか。


「玄武って確か亀さんですよね?」

「君が使うと主体が逆転するね」

「亀と蛇の間に主体なんてものは存在しませんし、主従の関係もないでしょう」


 それから主体が逆転するとか言うなよ。


「それもそうだね」


 基本的に他の奴らがわからない内容で話をされてもこいつらがついて行けないからな。


「……そういえばさくら、聞いておきたいことがあったんだ」

「はい? 何でしょう?」

「幻月一刀流って聞いたことあるか?」

「確か……綾瀬の剣術だったよな?」


 あれ? もしかしてこいつら全員知ってるのか? あの流派そんなに有名なのか?


「知ってるのか」

「本人から聞いたからな」


 ああ、そういうことね。


「他にどんな事を聞いたんだ? 何でも良いから教えてくれ」

「何でもっていわれてもな」

「確か人を探しているらしいわよ?」

「人を? どういう人なんだ?」

「お姉さんだって、自分の剣術は全部お姉さんに教えてくれたって言ってたわよ。もの凄く強いらしいわね」


 お姉さんって……あの人もしかして綾瀬の姉なのか? 名字が違うと言うことは複雑な事情がありそうだな。


「そうか、ありがとう。まあさっさと着替えるぞ」

「そうだな」

「興味本位で聞くが、お前何を着るつもりだ?」


 俺に用意された衣装は琉球の民族衣装によく似たものだった。相変わらずの真っ黒な染料で染められていたが、なんでこいつがこの服を把握しているんだ?


「やはり気になるか? しかしこればかりは見てからのお楽しみだな」


 そこまでは気にならないが、まあ何も言うまい。滅茶苦茶楽しそうだし。

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