授業の評価
「そろそろ授業も終わりの時間だな」
「ああ」
適当に相槌を打つ。
「では、私はせんせ、ゴホン。教官殿に貴様の成績を報告しに行く」
言い直す必要あるのか?
「一応俺も一緒に行こう」
オリヴィエと一緒に先生の所まで行く。
「教官殿!報告に上がりました」
「教官は止めろ、教官は」
先生はもっともな発言をする。
「了解、それでは言い直します。クライン先生、報告に上がりました」
「ああ、報告を聞こう」
「はい、彼……素良天蓋ですが、特に申し分はないかと。ただし、魔道書を使用してでの話ですが」
「何?魔道書を使用したのか、必要ないと思っていたが」
やっぱりそういうものなのか。
「それで、他の奴はどうだった?」
「……?」
「なんだその呆けた顔は。他の奴だ」
「……いえ、誰にも、アドバイスをと、聞かれなかったので……皆、金翅鳥に教えを」
「そ、そうか。それは」
先生は言葉に困っているようだ。実際のところ俺も何と言ったらいいのかわからない。
「お、おい! カルラ! 早く報告に来い!」
無理やり話を変えた。これ以上続けても皆傷つくだけだが。
俺の言葉に、人だかりの中からカルラがよろよろと抜け出してくる。
「ほ、報告に来ました」
そういうと、他の生徒の魔法の特徴と評価などを細かく先生に伝えた。明らかに人数が炎属性に向いている奴の人数より多い気がするが。
カルラの報告が終わる前に授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。
そのため、先生はいったん生徒を集めて、授業の終わりを宣言。皆は次の授業の準備へと向かう。
カルラは続けて残りの分を報告する。先生のすぐ近くにいた連中はとりあえず移動せずにいた。
「どいうことだ。他の属性の奴は別の者が見るはずだろう」
「そこらへんの話がよくわからないんですが、どういうことなんです」
俺は先生に質問した。
「ああ、保健室まで運んで行ったから知らないだろうが、すでにお前以外の全員の魔法は実演してもらっていたのだ。その中から優秀な奴を教える側に回した。もっとも風属性が得意な奴はいなかったので私が直接教えていた。私の得意属性だったのが不幸中の幸いだったが」
「あの、先生が単に辛口の評価だっただけな気がするのですが」
「何を言っている。あの程度もできないようでは話にならん」
カルラは先生の発言に対し苦笑いを浮かべる。オリヴィエも似たような反応だ。
絶対一般生徒には出来ないレベルの領域だろ、それ。
「そんなことはどうでもいい。カルラ、なぜ必要以上の生徒にまで助言をしていた。他はどうした」
「そ、それが……その教える側の方たちから魔法の評価をたずねられてしまって」
先生が頭を抱える。
「あの馬鹿ども、自分の役割そっちのけで……」
「それで皆さんの魔法を見ることに」
「わかったわかった」
「わ、私だって本当は、お兄様の魔法を拝見したかったのですが皆様が私のことを離してくださらなかったのです」
その言葉にオリヴィエが露骨に怪訝な顔をする。
「離してくれなかった、だと? ふん、贅沢な不満だな。私なんて誰からも話しかけられなかったというのに」
「あ、貴女はお兄様と仲良くお話をなさっていらしたではありませんか! そちらのほうが私から言わせれば横暴な話です!」
「お前ら兄妹だったのか? 何にしてもずいぶんと慕われているな。こんなかわいい妹から慕われるとは兄冥利に尽きるだろう?」
突然の話に少し驚くが、冷静に発言する。
「まあ、否定はしませんが。論点がずれすぎでしょう。生徒が生徒を評価していることについては納得しましたが、実際できていないのですからそいつらを咎めるべきでは」
「ああ、言われなくともいずれあいつらの性根は叩き直す」
それはご愁傷様だな。
「とにかく、お前はこれから必要以上のことは断れ」
「はい、身にしみてそう思い知らされました」
カルラはじっとオリヴィエを見つめている。
「……? 私の顔に何かついているのか?」
「なぜ、貴女ばかりが美味しい思いを……。不平等すぎます。理不尽です」
「何が美味しい思いだ! 生徒代表の栄誉を私から奪い! 他の奴らの人望をも私からさらっておきながら!」
それは完全な逆恨みというものだろう。だがわからないでもないな。何せ俺にせよカルラにせよ完全に人外の類だからな。いかに人間に転生しているとはいっても、桁違いの戦闘能力は間違いなく保有しているはずだ。
特にこいつは天界でもほとんど最強に等しい。なにせあのインドラよりも具体的な比率として100倍強いからな。……間違いなく断言できることは、殺し合いならともかく単純な戦闘能力ならこの俺すらはるかに凌駕しているということだ。さすがに不動明王の背景の炎として描かれているだけの事はある。いずれ手合わせしたいものだ。
そういえば、こいつは転生しているのか? それともただ単に人間の姿に変身しているだけか? 聞いてみるか、後で。
「カルラ、あとで話があるが……空いてる時間はあるか?」
途端にカルラが目の色を変えて食いついてくる。
「はい! なんでしょう!? 今すぐにでもお話しましょう! それとも二人きりで話したいことでしょうか!? それでしたら私は授業を休んででもお時間を作りますが。で、ですがやはりそのような話は心の準備が必要ですので、やはりお時間をいただくことになるかも……。ああ、申し訳ありません! せっかくお兄様が私と二人きりで話がしたいとおっしゃっていただいているというのに。それにすぐさまお答えすることが出来ないなんて!」
カルラの言葉に俺を含めドン引きしている。最初に口火を切ったのは先生だ。
「今とんでもないことを口走ったぞ、お前。それから授業をサボってもとはどういう了見だ。それは暗に私たち教師を軽視しているということだぞ」
「申し訳ありません。あれはあくまでもものの例えでして、言葉の綾というものです。つまりそれぐらいの真摯な対応をしますということをお兄様にお伝えしたくて……」
「そ、そうか。よくわかった」
先生、さっきからタジタジじゃないですか。
「なあ、そもそも勝手に二人きりでの話しだと言ってるがそんなこと誰も言ってないよな」
確かに、オリヴィエの言う通り二人きりとは言ってない。もっとも二人でしかできない内容の話だが。
「あとで話がある。と言われたので、ここではできない話なのだと判断したまでです」
「まあ、二人で話がしたいからな」
「本当ですか!? や、やはり心の準備が」
「いや、たいした話じゃない。種族的に珍しいからな、ちゃんと生活できているのかとか、いろいろだ」
もし転生してないとしたらカルラは鳥人ということになる。となると文字通り羽を伸ばすことはできているのか。ということが心配になる。
「なるほど、異文化で生活する妹が心配なわけか。確かに他人が茶化すことではないな」
「お気遣い恐れ入ります」
「休み時間はまだ余裕があるが、そろそろ教室へ向かったらどうだ」
「そういえば長すぎませんか、休み時間」
「魔術科は授業の準備に時間がかかるからな、チャイムを統一している以上武術科は休み時間が長くなる」
そういうことか。まあ、これ以上長話する必要もないし、さっさと教室へ移動するか。




