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崩天蛇神の秩序維持  作者: てるてるぼうず
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強欲

記念すべき五十話なのに短い。


「とうとう国王陛下のお出ましのようだな」


 奥の扉が開くと見るからに王様な感じの服装をした男性があらわれ、玉座に座った。

 それと同時に部屋の中にいた人達全員が敬礼をするので俺もそれにあわせた。


「畏まらなくともよい。……といって楽にする者もいないか。よろしい、このまま話を続けよう。余の愛する娘、ミリアを無事助け出してくれたこと、深く感謝する。ここにいる者全員に何か褒美をとらせよう。何でも好きな物を望むがよい」

「少々お待ちを陛下」


 王様の言葉に杖をついた老人が待ったをかける。老人の頭は完全に白髪となっていた。


「どうしたと言うのだ?」

「この玉座の間には相当の人数がおります。その全員の望みを一つ一つ聞くことは非合理的……そこで我々が陛下の代わりに彼等に褒美をとらせましょう」


 確かに、ここにいる全員の言葉を聞いていたらいつまで時間がかかるか見当もつかない。ならば相応の報酬を与えてある程度、王様から褒美を賜れる者を篩にかけた方が合理的だな。


「だが、ここにいる全員が余にとっての恩人なのだぞ? 恩ある者にそのような振る舞いは」

「いえ、陛下の憂鬱を取り除いたという事実、それこそが我々にとっての至上の喜び。それ以外になにが要りましょうか」

「その通りでございます。ミリア様の救出に力添え出来たという事実、それこそが我々にとってこの上ない名誉なのです」


 部屋の中にいた騎士達の中でも特に豪華な宝飾品に彩られた甲冑を身につけた騎士が堂々と宣言する。


「褒美は要らぬと申すか。しかしそれでは余の気が澄まぬのだ。何か礼をさせてはくれぬか」

「御意。それではミリア様救出の際の功労者を数名選出し、その者に褒美を与える。というのはいかがでしょうか?」

「ふむ、功労者とな?」

「はい、すでにその選出は終わっております」


 そう言いながら何らかの合図をすると、途端に俺の周りにいた騎士達が離れていった。


「この者達が?」

「はい、この三人こそが功労者と呼ぶに相応しい働きをした者達です」


 あ、俺達のことか。そうか、俺達が王様から直々に褒美を貰えるわけだな。


「ミリア様をその手で直接救い出したゲイル・イモータル・アレクサンドリア・ヌル・ネイバー・アレクサンドロス。彼を筆頭に、粘り強い交渉を続け全員生存を果たすことに多大な貢献をもたらしたアレン・ローレンス。そして、ミリア様を攫った異端者、十二星将(ゼネラル・ゾディアック)を単独で戦意喪失せしめ、そのうちの四名を捕縛した素良天蓋。この三人こそが功労者と呼ぶべきでしょう」


 ゼネラル・ゾディアックってあいつらそんな名前の集団だったのか。確かに十二人いたが。天部の護法善神十二神将みたいなものか? 確かに何人か集まったらそういう名前付けたくなるよな。俺の天龍八部衆みたいに。俺のって言っても俺がリーダーな訳ではないが。


「ほう、この三人が」


 王様が俺達の顔を見つめる。

 そんなわけで俺達三人が王様から直々に褒美を貰うことになった。

 ゲイルは精霊魔法に関する重要な魔導書を望んだ。なんでもそれがあればより強力な精霊と契約出来るのだそうだ。王様は二つ返事で快諾し、配下の者が古ぼけた本を持ってきた。

 アレンさんは自分のことをとにかく新聞にのせてもらうように嘆願していた。確かに交渉人として有名になることが彼にとっては一番の報酬になるだろうな。この願いに対して王様はなんと王宮の金で本を出版してやると言ってきた。金持ちの考えることは一々スケールが違うものだ。これにはアレンさんも目を点にしていた。

 しかし、この流れは……。二人とも本に関する褒美を与えられている。これは俺も本に関する物を望むべきだろうか? いや、この流れに惑わされてはならない。しかし、いざこうしてみると特にほしいものもない。


「では、最後に天蓋よ、何か望みを言うのだ」

「……」


 全く思いつかない。どうしよう。


「どうしたと言うのだ? 何故何も答えない」


 ……ふむ、これは、もう適当な物を頼むか。いい加減この空気が重苦しくなってきた。


「陛下、実は望みが二つあるのですがよろしいでしょうか?」


 ここは強欲に二つ頼んでみよう。

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