祝い
「まだ帰してはくれないんですか?」
俺はクラウディア先輩に愚痴を零す。
誘拐犯達を全員捕らえることに成功し、人質も無事助け出し、やるべきことをやり終えたのでさっさとアレンさん達に挨拶しに向かうと、全力で抱きつかれた。余程嬉しかったのだろうな。他の人達とも互いの健闘に握手を交わす。
挨拶も終わり、後は帰るだけとなったがクラウディア先輩の厚意で今夜は王宮で泊まることになった。
脱ぎ捨てた制服を回収して執事に見せると、仕立て直すことも可能だと言われたので頼むことにした。この制服にはまだまだ現役でがんばってもらおうか。
風呂に入って、渡された服を着て、なんかものすごい高級なベッドで寝た。そういえば渡された修道服はいつ返せばいいんだ? すでに洗濯に出してしまったが、自動的に返還されるだろうか? まあ、どうでもいいか。後で考えよう。
そして翌日、朝起きて朝食を食べて、昼になり今に至る。ちなみに朝食はトーストが食べたいと言ったらルームサービスでホットミルクとトーストが運ばれてきた。王宮御用達とでも言うのか一般的なそれとは一線を画した逸品だった。
「陛下が是非貴方に礼をしたいと仰ってるのよ」
「……礼って、こんな格好で礼を受けろって言うんですか⁉」
現時点で制服はまだ修復されていないので、王宮の人から渡された礼服を着ている状態である。そのためかこの礼服は微妙にサイズが合っていない。
「とてもよく似合っていると思うわよ?」
「そういう問題じゃないでしょう⁉ 俺が所属していない組織の礼服を着て国王陛下に謁見するとか正気の沙汰じゃない!」
流石にこれは失礼どころの騒ぎではないだろう。そもそもサイズもあっていないのに。それ以前に学生が礼服を着ているって実際どうなんだ? 学校の制服を着たほうが自然なんじゃないのか。
「そういう細かいことは気にしなくてもいいわよ。陛下も貴方の着ていた服がボロボロなのは理解してるし」
「いや、そっちが良くてもこっちが困るんですが」
いくらなんでも気まずさと罪悪感がやばすぎる。仮にも仙人の息子がそんな礼を失するようなことをしていいのか? いや、だめだ。
「え、でもサイズの合う制服もないからそれを着る以外ないわよ?」
なんで無いんだよ。あの学校名門なんだから一着ぐらいは俺のサイズに合う奴が王宮にもあって然るべきだろ。
「じゃあ、礼は後日改めて」
「ダメよ。他の人たちはもう準備できてるのよ」
八方ふさがりかよ。
「わかりましたよ。それで? 俺はこれからどこへ移動すればいいんですか?」
「玉座の間へ移動してもらうわ。案内は私がしましょう」
「ありがとうございます。それからもうひとつ質問があるんですが」
「何かしら?」
「なんで貴女がすでにここにいるんです?」
そう、どういうわけかこの人は朝食を持ってきてくれた人と一緒に入ってきてそのまま部屋の中にいるのだ。そのため数時間同じ部屋で黙ったままの時間が続いた。
「ダメかしら、私がいたら」
「ダメじゃないですけど、さっきからずっと黙ったままでしたよね」
「貴方が何も言ってこないからよ」
「そんな! そっちがこの部屋に来たんだから先に話しかけるのはそっちでしょう」
「特に話すこともなかったし……それにずっと黙ったままって言うけどそれは貴方もよ?」
それはそうだがそういう話じゃないだろう。
「いや、そんな……」
「もうすぐ時間ね。早く部屋を出ましょう」
釈然としないが渋々部屋を出て玉座の間なる場所へと移動した。
玉座の間には昨日集まっていた騎士やらなんやらが集まっていた。
俺はその集まりの中から、ゲイルを発見し、合流した。
「よう、ヒーロー。昨日は大活躍だったらしいな」
「なんだ天蓋かよ。お前の方が活躍してじゃねーか」
「一番美味しいところ持って行きやがって。それは勝者の余裕か?」
「そんなんじゃねーよ、お前マジでとんでも無いことしたんだぞ?」
そうか、そうか。それはうれしい限りだ。
「まあ四人生け捕りだからな。昨日の最高記録だろ?」
「……なあ、お前知ってるよな? 俺が精霊魔法使えるの」
「それがどうした?」
「空気中のマナの比率を調べたら水のマナが完全に消滅してたんだよ。現実的に考えて有り得ない現象が発生してたんだ」
有り得ない? そうだったのか……それは少々面倒なことになるかもな。
「それで? なにがいいたい?」
「別に、お前が色々と規格外なのは分かり切ってるからな……だが、一種類とはいえ、マナを消滅させるなんて精霊魔法使いからしてみたら悪夢以外の何物でもない話だってことだ」
確かに、マナの比率操作が勝負の明暗をわける魔術師にしてみたらたまったものではないな。
「つまり、俺はお前に絶対勝てるってわけだな」
「ま、そんなところだ」
そうか、なるほど。俺は精霊魔法に対して絶対的なアドバンテージを持っているというわけだ。
しかし、そうなると気軽に枯渇させるのも考えものか? いや、別に気にしても仕方ないか。
「やあ、ここにいたのか」
「アレンさん! 昨日は人質解放に尽力していただきありがとうございます。この事件解決で、評判も鰻登りでしょうね」
改めて握手を交わした。
「いや、君の協力のおかげだよ」
「微力ながらお力添えできてなによりです。それから捕まえた人達ですが……」
「ああ、十二人全員護送できたみたいだよ。後は裁判を待つだけだね」
そうか、全員生きて捕らえることが出来たか。
「なあ、そいつ等ってこのあとどうなるんだ?」
ゲイルが聞いてきた。
「うーん、どうだろうね。異端審問があるから無事には済まないかもね」
まあ、そんなところか。
そんな話をしていると、明らかに偉そうな人達が続々と玉座の間に入ってきた。とうとう国王陛下の登場か。




