やりたい事とやるべき事
「個人レベルで満足出来るならそれで良しとするか、それとも世界レベルで貢献する事を是とするか……人によって答えは変わってきそうだね」
「理想は両方を満たす事なんだが……そう上手くはいかないだろうな。自分のやりたい事とやるべき事が一致している人間なんてそうそうお目にかかれるものじゃない」
逆に言えば、もしもその二つが完全に一致している人間がいるとすれば、それは途轍もないエネルギーを生み出す事だろう。
「そりゃあ、世界的に賞賛されるような事をやりたいと思えるのは聖者様か何かくらいだろうね」
「万に一つその動機が承認欲求だったとしても、まあ長くは続かんだろうな」
周囲の人間からちやほやされるために滅私奉公すると言うのは、ある意味でかなりの自己矛盾を抱える事になるからな。世の中の役に立つ事を考えながら自分のやりたい事をやると言うのは……相当な賢人じゃなければまず成り立たないな。
「承認欲求を満たすために善行を積むって言うのは……矛盾しないけど矛盾するよね。変な言い方になっちゃうけど」
「精神的なものと物理的なものを繋げるのは簡単じゃないからな。そもそも承認欲求を満たすには他人からの行動が必要になる。それに対して善行は別に他人の行動とか関係無いからな……」
当たり前の話だが、承認欲求を満たすには他人から賞賛される必要がある。だが、善行に他人の存在は関係無い。利他的な行動を善行と捉える事も可能だが……じゃあ、無人島で善行は出来ないのか? と言われたらそれはそれで不自然な話だ。
「だけどまあ、結果として聖人君子は周囲の人達から尊敬を集めるよね」
「当然の結果だな」
しかし必ずしもそうとは限らない。どんな聖人君子だって無人島にいたら誰からも感謝されないし尊敬もされない。物理的に他人がいないんだからな。じゃあ、どんな聖人君子も無人島にいたら俗人に成り下がるのかと言ったら……それはそれでおかしな話だ。そもそも他人からの評価がそんな絶対的に信用出来るか? という話になるからな。




