守る戦略
「一度でも枯渇したらって言うが、潤沢な時は際限無く増えるんだろ? わざわざ魔力の無い土地になんて攻め込んでもかえって損をするだけだな……」
「グレーナイト戦略だね。都市部に資源を集中させて地方は攻め込む魅力を微妙にするって言う、損得勘定で守る戦略だね。例えそこを取られても奪い返しやすいし」
「損得勘定か……」
「うん。良く言えば相手の理性を信じてる戦略って言われてるけど……悪く言えば敵国の欲望とか衝動を無視したお人好し戦略だね」
「まあ、長い目で見れば一番堅実だな」
相手にリスクを強いる戦略なんだからこれを徹底出来れば一番安全に発展出来る理屈になるな。……お互いが合理的思考に基づいて、最適な行動を取り続ける状況が十分繰り返される場合に限るがな。
「攻める側はハイリスクローリターンだからね。後はハイリスクハイリターンかローリスクローリターンの大きく分けて三つだね」
「ローリスクハイリターンは……攻め得だから守る側としては論外だな」
「そうだね。基本的には領地を栄えさせて難攻不落の要衝にするホワイトナイト戦略か今言ったグレーナイト戦略……それかいっそのことノーガードで招き入れちゃうブラックナイト戦略の三つだね」
「良いのか……? ノーガードで」
「まあ、最終的に敵を追い返せれば良いわけだし……ただ、騎士だとか領主だとかとしての責任放棄の悪徳戦略だけど」
焦土作戦上等の守り方だな……領民からしてみたら堪ったものじゃないだろ。かと言って、全ての領地に完璧な防御網を敷けるかと言われたら、そんな事が出来れば誰も苦労はしないという話になるから割り切るしか無いな。
「最後に勝てば良いとは言うが、完全な背任行為だよな? 罷免されんじゃないのか? というか、仮に勝てたとしても領地没収になるんじゃないのか?」
「まあ、本当にノーガードだとそうなるから、負けるの前提で足止めするのが基本だね。それで敵の侵攻ルートを誘導出来れば最高だね」
「……まあ、戦略的に考えれば絶対に必要な戦略だな」
必要なのはそうだが、納得は得られないだろうな。
「言うのは簡単だけど、実践するのはある意味一番難しいね。負けるの前提って言うのがまず騎士階級にあるまじき態度だし、他の領主に追い払って貰う事が戦略として組み込まれてるわけだから、とにかく敵味方から評価を下げられやすいよ」
「何気に味方から評価を下げられるのが一番キツイなそれは」
「どんなに作戦が上手く行っても他人に助けてもらう形になるから、周囲との力関係も歪になりやすいね」
それはそうだな。まず逆らえなくなるハズだ。




