~ 償い ~
定吉 は 早速 遣いを出し
黒い童子を 退治してくれる者を探した
二日後 …
定吉の出した 遣いは
美しい女を 連れて戻った …
名 は 水蓮 …
彼女は そう言った …
正吉 が
若者達から聞いた 話しを
水 蓮 に 告げると …
彼女 は 正吉に こう聞いた …
「その 幼子が … 鬼にならねばならない理由は ?」
正吉 は
水蓮 の 顔を見ていられず 俯いた …
水蓮 は
「因果応報 … 必ず報いは 受けるものですよ 正吉さん …」
と そう言った …
水蓮 は 必要な物を 定吉に告げた …
定吉 は 直ぐに
食べ物 ・ 炬 ・ 酒 ・ 塩 と
水蓮 の 指示通りに 揃えた …
早速 村 の 男達 と 定吉
そして 嫌がる 正吉 も 連れ
山の奥へと向かった …
童子の住む 家の前には …
両足 の 無い 若者の 亡骸が
必至に 戸口を 囲い押さえていたのか …
腐り ブ~ ン ブ~ ン と 蝿が集っていた …
水蓮 は 亡骸に 手を合わせると
男達に 亡骸を避けさせ
何やら ブツブツと
経のような文言を唱え 塩と酒を撒いた…
「ウキャッキャッ! 正 ~ 吉 ~ ! 正~吉~!!」
地の底から 響くような 低い声が 響いた…
正吉 は ガタガタ と 躰を震わせ 踞った…
水蓮 は 男達 に
亡骸が 押さえていた 囲いを外させた …
水蓮 は 再び ブツブツ と 文言を唱え
「その 塩の線から 此方へ来てはいけません !! 」
と そう言うと
ガラガラッ! と 引き戸を開けた …
「ウキャ ッ ! ウケケッ! 女 … 正吉 ハドウシタ? 」
童子 は 斧を 構えて
真っ赤な口を開け ニヤリと笑った …
水蓮 は 腰袋から
水晶を取り出すと
童子に向かい投げつけた
「ギィギィイイ … 女 … ナッ 何ヲ !」
童子 は 金縛りに掛かったかのように
動けなくなり 苦しそうに 悶え始めた …
「童子 … 人間が 憎いですか… そんな姿になる程に … 」
水蓮 の 言葉に 童子は
悶えながらも 頷き …
「アァ … 憎 イ … ヤッ … 八ツ裂キニシテモ … タ リ ナ イ … 」
と 応えた …
「では… 童子 … 父にも 母にも 二度と巡り会えず … そなたの 後ろに立つ その鬼と伴に 無限の時を 呪い 憎み 続けると言うか!」
水 蓮 は
気を吐きだすように 声 を 荒げた
「オッ … 女 … オ前ニ 何ガ 解ル ー !正吉ヲ ヨコセ ! グワァアァー!!」
童子 の 躰は 力 を 放つように
黒い影が 巨大に 膨らんだ …
まるで 燃え盛る
真っ黒な 炎のように 伸びる影
水蓮 は 童子を見つめたまま
「今です ! 火を放ちなさい!!」
と 外で 震えながら 待つ 男達に叫んだ
ビクッ!と躰を揺らし
あわわあわわ と
男達は 慌てながら火を放った …
炎 は 見る間に
メラメラと 立ち上がった …
「グオォオ ァァオ !!」
雄叫びのような 悲鳴を上げ
童子 は 炎 の 立ち上る家から 飛び抜けた…
「逃がす訳にはいきません … 天 ・ 道・ 縛 !!」
水蓮 は 再び 腰袋に手を入れ
小さな水晶玉を
童子に向かい投げつけた
バツン ッ! バツンッ!
と 数個の 水晶玉が 童子にあたり
童子は
空中で動けなくなり
森の大樹に
叩きつけれ 貼り付いた
水蓮 は 直ぐに 大樹の 元に 移動し
童子の 貼り付けられた
大樹の前で 読経を始めた …
水蓮 の 脳裏に
家族と伴に …
楽しかった頃の 童子の姿が 映る …
何の疑いも … 何の不安も無く
笑っている 童子の笑顔が …
水蓮 の 目から
ポツリ ポツリ と 涙が 零れた …
大樹に貼り付けられ
身動き出来ずに 悶え苦しむ
赤い目の 哀れな 童子 …
再び 水蓮 の 脳裏に
此の姿に成り果てる迄の
童子の 哀しみと 憎みが 映る …
水蓮 は ギュッ と 瞼をきつく瞑り
「童子よ ! いえ … 一太 … 戻りなさい!優しき姿に ! さすれば 私が 天への道を必ず開く! 一太 戻りなさい ! 優しき心に !!」
声を枯らし 力強く 叫んだ …
「無駄ダ … 女 … 一太 ハ 我ト 共ニアル… 無限ニ 我ト 共 ニ … フッハッハ ! ウワッハッハ !!」
ガクンっ と
水蓮 は 肩を 落とし
大樹に張り付く 黒い影を見上げた …
赤い瞳から 流れる …
一筋の 赤い 涙 …
「一太 … 」
水蓮 は ポツリと 呟くと …
「大樹に 火を … 」
と 力なく そう言った …
炎が上がり
大樹は ゴオゴオと 音を上げ
焼け崩れた …
「ギィヤアアアァ !!」
一太 なのか 影 からなのか
断末魔が 山奥に 木霊した …
大樹が 燃え尽き 灰となる迄
水蓮は その場を去ろうとはしなかった…
灰を布袋に入れ
定吉 と 正吉 親子に こう告げた …
「貴方達は 罪を犯したのです … 代々 心を込めて 此の灰を奉り続けなければ なりません …其が 一太と 家族に 対する償いです」
定吉 と 正吉 は
「はい … 」
と 涙を流し
大樹 の 灰を 受け取った …




