↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジャングルでジャングルふぁいやー!!~女性自衛官ジャングル大逃走劇~【再掲載】  作者: よしぞう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/10

第10話 ホーネット トラップ

 恵茉はインド軍の放置されたインド陸軍のトラックに近づくと、周囲を見回した。


 そして、一番近くにあった廃屋に駆け寄ると、長さが1.5mほどの角材を見つけて持ち出してきた。


 それをインド軍のトラックの影に立てかけ、次に、自分が着ていた日よけ用のジャケットを角材にかける。


 ゲリラたちが接近してくる方角から見れば、トラックの影に誰かが隠れているように見えるはずだ。


 Tシャツと半ズボン姿になった恵茉は、それを確認してから、少し離れた位置にある半壊した廃屋へと走り、身を潜めた。


 村中が背の高い雑草に覆われているため、射界は狭く、遠距離からの狙撃も難しい。


 そうこうするうちに、ゲリラの車列が村に入ってきた。


 待ち伏せなどされていないと高をくくっているのか、ジープを先頭に、団子状態で近づいてくる。


 もし対戦車地雷があれば、一つで数台の車両を同時に破壊できるかもしれない。


 もちろん、そのような物はどこにもないのだが。


 恵茉は崩れた廃屋の屋根に上り、そこで慎重にAK47を構えた。


 そこからは、間に葉の茂った木を挟んで、インド軍のトラックがかろうじて見える。


 別に車体全体が見える必要はない。彼女が狙うのは、その一部分だけなのだ。





 インド軍のトラックの手前で、ゲリラたちの車列が停車した。


 あの熊のようなリーダーが大声で何事か指示を出しているのが聞こえる。しかし、恵茉の位置からは、その姿を確認できなかった。


 その後、ゲリラたちが慎重に周囲を警戒しながら、インド軍のトラックに近づいていくのが見えた。


 どうやら、恵茉のダミートラップに引っかかったようだ。


 数人のゲリラが二組に分かれる。


 一組はトラックの影からわずかに見える恵茉のジャケットを調べ、もう一組は少し離れた位置から射撃支援を行うつもりらしい。


 そして、二人のゲリラがトラックの影から、前と後ろに分かれて近づき、同時に銃を構えて飛び出した。


 もし恵茉が本当にあそこに隠れていたら、どちらか一方にしか対応できず、もう一方に射殺されていただろう。


 しかし、そこに彼女はいない。


 二人のゲリラは、そこに標的がおらず、代わりに棒に上着が引っかけられているのを見て、初めは驚き、すぐに周囲を警戒し始めた。


 今だ!


 恵茉はAK47の引き金にかけた指に、ゆっくりと力を込めた。


 銃声は一発だけ。


 放たれた銃弾は、インド軍のトラックの燃料タンクに命中した。


 ガンッ!


 思ったよりも小さな金属音が響き、タンクの側面に小さな穴が開いた。


 驚いたゲリラたちは、慌てて姿勢を低くし、穴の開いた燃料タンクに目を向けた。


「よし!!」


 そう叫びながら、恵茉は屋根の陰に身を隠した。


 彼女の予想では、大爆発が発生し、インド軍のトラックのそばにいたゲリラたちは火だるまになり、周囲が炎に包まれ、ゲリラの車列は先に進めなくなるはずだった。


 しかし、現実にはゲリラたちが、


「撃ってきた!!」


「どこからだ?!」


 と叫びながら、その場で小銃を構えたまま、キョロキョロと周囲を見回している。


「あれ? もしかして、残りの燃料が少なかったのかな?」


 恵茉はそう考え、もう一度屋根の上から狙いをつけた。今度は燃料タンクの下の方を狙う。


 距離にして100mもない。


 普段の射撃訓練では300m先の標的を狙っているため、これはかなり近い。


 再び引き金を引くと、銃弾は燃料タンクの中央より少し低い位置に命中し、穴を開けた。


 今度は、そこから燃料が漏れ出し、地面に染みが広がっていく。


「ええっ! 嘘ッ、何で?」


 彼女は知らなかった。


 自衛隊もそうだが、軍用車両の多くは、ガソリンではなく軽油を燃料としている。


 そして、軽油はガソリンに比べて引火しにくく、銃撃ぐらいでは発火しないのだ。


「いたぞ、あそこだ!!」


 今度は見つかってしまった。


 ゲリラたちが一斉にライフルを構え、恵茉が隠れている廃屋に向けて射撃を開始した。


 廃屋の周囲で次々と土煙が上がり、さらに、それがどんどん彼女の方へと近づいてくる。


「キャアアアアア!!」


 たまらず恵茉は屋根から滑り落ち、そのまま草むらに着地した。


 あとは、ひたすら走って逃げるしかない。


「逃がすな、回り込め!!」


 ゲリラたちも次々と草むらの中に飛び込み、恵茉を追いかけ始めた。


 ただし、草の背が高いため、いったん中に入ると、相手の姿を直接見ることはできない。


 頼りになるのは、草をかき分けて走る音だけだった。


「やばい、マジでやばすぎる」


 恵茉からはゲリラの姿が見えない。そして、それはゲリラたちも同じだった。


 しかし、草をかき分ける音も、草を踏みつけて折った跡も、完全には消せない。


「こっちだ、この先にいるぞ!!」


「殺せ!!」


 背後に迫るゲリラたちの声が、どんどん増えていく。


「クソッ、どこだ?!」


「そこか!!」


 銃声が響いた。


 しかし、それは恵茉を狙ったものではない。いや、恵茉を狙ったつもりではあったのだが、見当違いの方向だった。


「うわっ、撃ってきたぞ!!」


「止めろ、味方だ!! 仲間を撃っている!!」


 どうやら、バラバラに草むらへ飛び込んだため、仲間がどこにいるのか分からず、同士討ちを始めたらしい。


 こういう場合は、きちんと横隊に展開し、その隊形を維持したまま、山狩りの要領で慎重に進んでいかなければならない。


「前に見える空き家を目指せ! 女はあの方向に逃げている!!」


 一人のゲリラがそう叫ぶと、何とか同士討ちは収まった。


「空き家? 何それ?」


 身長の低い恵茉には、周囲の草が高すぎて、自分がどこを目指して進んでいるのか分からない。


 そもそも、まっすぐ逃げているかどうかさえ分からないのだ。


 最悪の場合、走り回っているうちにぐるりと回り、元の位置に戻っている可能性すらある。


 それでも、かき分ける草の先に、半壊した民家の屋根が見え始めた。


「なるほど、ゲリラにはこの廃屋の屋根が見えているわけね」


 それなら、あの家に近づかなければいいはずだ。


 そう考えたとき、不気味な複数の羽音が聞こえてきた。


「そう言えば……ソム・チャイが……この村には、大きな蜂の巣がいくつもあるって……」


 村に入る前に聞いた情報を思い出し、これを使わない手はないと考えた。


 そして、廃屋に近づきすぎないよう注意しながら、回り込むように進んでいった。


「あった!」


 それは、すぐに見つかった。


 崩れかけた屋根の軒下に、大きな蜂の巣が見える。


 それは、日本でも時々ニュースで騒がれているスズメバチの巣だった。


 正確にはヒメオオスズメバチという種類で、東南アジアにも生息している。


 見た目は日本に生息しているスズメバチとよく似ており、体長は2~2.5cmほど。日本のオオスズメバチよりは少し小柄だ。


 しかし、天敵がおらず、好き放題に巨大化した巣の周囲は、飛び回るスズメバチたちによって、まるで靄がかかっているように見えた。


 恵茉から巣までの距離は、約50m。


 的は小さいが、狙えない距離ではない。


 右肩にAK47の銃床を当て、呼吸を整えながら狙いをつける。


 ゆっくりと引き金を引き、発砲した。


 一発目は巣に当たらず、廃屋の腐った柱に命中した。


 驚いたスズメバチたちの動きが活発になる。


 続いて二発目を撃つ。


 それは巣の下の方に命中したが、柔らかいために貫通しただけで、巣を落とすところまではいかなかった。


 銃声に気づいたゲリラたちが騒ぎ出した。


 恵茉がどこにいるのかは分からないが、とりあえず目印の廃屋に向かって撃ちまくり始めた。


 どうやら彼らは、恵茉が自分たちに向かって反撃してきたと勘違いしたようだ。


 そして、そのうちの一発が廃屋の軒下に命中し、すでに腐って弱くなっていた梁にとどめを刺した。


 バキバキッ!!


 音を立てて梁が折れ、スズメバチの巣が地面に落ちた。


 ドサッという音を聞いたゲリラたちは、それを恵茉が倒れた音だと勘違いし、歓声を上げた。


「やった、当たった!!」


 しかし、彼らが廃屋に到着したとき、そこに待ち受けていたのは、巣を破壊されて怒り狂ったヒメオオスズメバチの大群だった……。


「うわぁあああああ!!」


「ぎゃああああああ!!」


 悲鳴を上げながら逃げ回るゲリラたち。


 その悲鳴を背中で聞きながら、恵茉はさらに草むらを走り続けた。





 予期せぬヒメオオスズメバチとの戦闘のおかげで、ゲリラたちは混乱し、いったん後退した。


 そして、そこで激怒していたリーダーに尻を蹴り上げられる。


「この役立たずどもが!!」


 蜂に刺され、ヒィヒィと痛がっている手下たちに向かって、ゲリラのリーダーが怒鳴り散らす。


「あの女に逃げられたら、お前ら全員銃殺だぞ!!」


 熊のような外見にふさわしい、人間とは思えない形相と怒声に怯える手下たち。


 彼らは慌てて回れ右をすると、先ほどのヒメオオスズメバチの巣を避けるように大きく迂回し、再び草むらへと入っていった。


「くそっ、まずいな」


 リーダーは焦っていた。


 このまま恵茉に逃げられでもしたら、彼の面子は丸つぶれだ。


「おい、後ろから順番に3台、車を下がらせろ!!」


「ど、どこに行かせるんですか?」


「さっきの分かれ道を左に行かせるんだよ!!」


 彼がそう命令すると、その指示はすぐに伝えられていった。


「あと、残っている奴らは車に乗れ!!」


 ゲリラのうち、恵茉を追いかけているのは半数ほどで、残りは車列にとどまり、周囲を警戒していた。


「えっ?! 俺たちはどこに行くんですか?」


「村の出口を塞ぐに決まっているだろうが!!」


「は、はい!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。