廃車回送
「――不名誉だよなぁ、たくっ」
一機の機関者がぼやきながら、機関庫を後にする。
腰部の連結器をガチャリ、と鳴らし、ゆっくりと前へ踏み出した。
「ま、仰せつかった仕事だからやりますよっと」
背後には、動かなくなった機関者たちを雑多に積み込んだ無蓋車が連なる。
かつて幾千もの列車を牽いてきた老兵たちは、静かに解体の刻を待つばかりだった。
その荷の中へ、また一人が積み込まれる。
ボサボサの銀髪。黒いコート。
「しかし……まさか、シグルさんが廃車になるなんてな」
見上げるほど高い無蓋車の縁に、その姿はもう見えない。
当然だった。彼の意識は、もうそこにはなかったからだ。
「――行くか」
機関者は静かに前へ踏み出す。
ホイッスルを吹くと、右脚を振り上げ、左脚で力強く枕木を蹴りあげた。
今日もまた、廃車回送が始まる。
長い間、ご愛読いただきありがとうございました。
執筆には実に2年もの時間を費やしました。その間、さまざまな出来事がありました。
主人公のモチーフとなった電気機関車「EF64-1030〜32」、通称“死神三兄弟”の引退。
そして、JR東日本が電気機関車およびディーゼル機関車を全廃するという衝撃的なニュースは、鉄道ファンにとっては受け止めるのがつらい現実でした。
それでは、ここまでお付き合いいただいた皆様、本当にありがとうございます。
本編はここで一旦終了となりますが、サイドストーリーはまだ少しだけ続きます。
今後も鉄道を題材にした作品を書きたいと考えていますので、よろしければまたお付き合いいただけますと幸いです。
香取 仙狐




