005 地図
「そういや、俺ら変なの引き当てたばっかだったな。
さっき貰ったのは何かの地図っぽい。
バツ印のところに行けってことだと思うんだけど。」
夜陰は爺さんからもらった紙を見せてくるが、俺にはこれが何なのかさっぱりわからない。
「僕たちの戦力で何とかなるものなのかな?
無理そうならあとからにしたほうがいいような気もするけれど。」
半径10m以内に配信AIがきたら分かるらしいが、万が一映った時の為に、軽く猫かぶりは再開だ。
「あ、俺らお互いのステータス、ほぼ知らないまんまじゃん。
パーティーを組めば、HPとMPは互いに見れるようになる。
こういうゲームだと、ステータスも全部見せあうってパーティーもあれば、内緒にしておくってパーティーもあるけど、どうする?」
見せあえば、裏切られた時に痛い目をみるってことか。
まあ、こいつは信用してもいいだろう。
「僕は全部見せても構わないよ。」
「おっけ、ええと、ステータス公開、対象紫月。」
なるほど、こうやってステータスを見せるのか。
「ステータス公開、対象夜陰。」
〇ステータス
名前:紫月
種族:人間
性別:男
職業:神官/杖使い
レベル:1
体力:200/200
魔力:150/150
攻撃:25(+5)(^1)
防御:15
知性:20
精神:10
俊敏:10
器用:5(+2)
幸運:0
ポイント:0
・スキル
神聖魔法(大) Lv1
回復魔法(小) Lv1
鑑定(小) Lv1new!
・称号
なし
・装備効果
認識阻害(中)常
神聖属性(小)常
神聖魔法強化(小)
蹴り(超)
〇ステータス
名前:夜陰
種族:人間
性別:男
職業:錬金術師/双剣使い
レベル:1
体力:150/150
魔力:100/100
攻撃:20
防御:10
知力:0(+10)
精神:0
俊敏:25(+10)
器用:30(+5)
幸運:10(+3)
ポイント:0
・スキル
錬金術 Lv1
鑑定(中) Lv1
・称号
なし
・装備効果
認識阻害(中)常
アイテムボックス拡張(小)常
「聞いてもいい?」
「……どうぞ。」
「攻撃のステータスの、あの数字ってどこからきてる?」
やっぱり聞かれるよなあ。
ぶっ壊れ性能だもんなぁ。
「レベルの数だけ攻撃値を掛け算するって意味だ。」
「蹴り(超)とは?」
やっぱりそれも聞かれるか。
(超)とか変だもんなぁ。
「黒い靴の装備効果。
どれくらい攻撃力があるのかは、実際にやってみないと分からないんじゃないかな。」
「それもそうだな、俺はざっと目を通したがお前のほうは?」
「僕も確認終わったよ。」
確認はしたが、そのステータスにどういう意図があるのかは理解できない。
正直、数字を見たくらいじゃ、俺には強さなんてさっぱり分からないのだ。
「じゃあとりあえず狩りに行ってレベル上げるか。
っていっても神官が魔物蹴り殺してたらまずいよなぁ。
だったらダンジョンのほうがいいか。
ダンジョン内だと他の人と遭遇しづらくなるらしい。」
なるほど、ダンジョンにはそんな効果があるのか。
この際前々からの疑問に思っていたことを聞いてしまおう。
「一体どこからそんな知識を得てくるの?」
プレイ初日のはずなのにやたらと詳しいから不思議に思っていたのだ。
返ってきたのは驚くべき答えだった。
「公式サイトの情報丸暗記してるだけだぜ。
攻略サイトとか見ると楽しめなくなるから嫌でさ。」
流石の記憶力……
俺には到底無理な話だ。
攻略サイトが存在しているのは知らなかった。
まあ、攻略サイトは見たら負けだ、と思うタイプの人間だから関係ないな。
「じゃあ、ダンジョンの場所とかは?」
「わからん!
公式サイトでダンジョンの場所教えちまうようなゲームはやらない。」
確かにそれもそうか。
「もしかしたら、さっき貰った地図、ダンジョンの場所だったりしない?
序盤に渡されるものだったら、強すぎて勝てないなんてことないだろうし、行ってみるのはどうかな?」
「もちろん賛成!
正直、レベリングなんかより、断然こっちのほうが気になってた!」
言わなかったが俺も同感だ。
「地図を見てみるか。」
これは俺にも意見を求めてくるやつですかね。
困ったな、俺は地図が読めない。
スマホのマップのような、常に現在地が表示されるものならまだしも、紙の地図なんて読めっこない。
「ここがさっき店があった場所だから、東門から出て、王都方面に向かえばいいと思うんだけど、どう?」
「僕もいいと思う。」
同意だけでいいとは、助かった。
方向音痴で、地図が全く読めないことが露見するのは、できれば避けたい。
「前衛の俺より、紫月が地図持ってたほうがいいだろうし、渡しておくぜ。」
あ、詰んだ。
周りの警戒をしながら地図を読むのはきついもんな。
そりゃあ、サポート職の俺に任せるよな。
先ほど誤魔化そうとして、変に同意してしまったことが悔やまれる。
しかし、ここでしっかり言わなければ、後々困るに決まっている。
「僕、方向音痴で、地図が読めないんだ。
だから、申し訳ないけれど地図は夜陰に任せたいかな。」
「もちろんいいけど、あれ、こないだ、第二校舎彷徨ってたのってもしかして……」
夜陰は笑いをこらえるように言ったあと、くの字に曲がって肩を振るわせていた。
あーあ、だから言いたく無かったんだよッ!
「ごめんごめん、俺が地図持つから行くとするか。」
よくも笑ってくれたな、という思いを込めてじっと睨んだ後、歩みを進めた。
道中、暇だったようで夜陰が聞いてくる。
「そういや、痛覚設定どうしてる?」
「100%(現実と同じ)のままにしてるよ。」
そう答えると夜陰は驚いたようで、目を開いて口をパクパクさせている。
何か変なこと言ったのだろうか。
「お、お前、やばいだろそれッ!
初期設定では100%だけど、そっから違和感が出ないところまで、できるだけ下げるのが普通なんだよ。
キャラメイクのときAIが説明してくれなかったか?」
「説明されたような、されてないような……」
あれ、何回かスキップしたような気がする。
多分、そこで説明があったんだろうな。
「というか魔物が出てきたらどうするつもりだったんだ!?」
どういう意味の質問なのかわからない。
「そのまま戦うつもりだったけど、それは駄目なことなのかな?」
「駄目なこと、じゃないけど、痛いだろ。」
何を言っているんだ?
痛覚設定って痛みを感じる為にあるんじゃないのか?
「痛みが無いと、動物は学習しないからね。
特に、僕みたいな人間は。」
痛みを避けるために行動するのが、動物の本能というものだ。
狙撃や毒にすぐに気づけるし、魔物と戦う時も同じ目線で戦えるからいいと思ったんだが。
「せめて50%くらいにしておけよ。
痛みで気絶とか話になんねぇぞ!」
確かにそれも一理ある。
「ちなみに夜陰は何%にしているのかな?」
「ええと…… 77%。
その、ラッキーセブン?」
おい、人に言えないだろ。
何がラッキーセブンだよ。
自分は高い設定にしているのに、人には下げろと言うなんて、実に自分勝手な話だ。
「それじゃあ僕もラッキーセブンにしておくよ。」
「まあ、100%じゃないだけマシか。」
不満そうだったが、納得してくれたようだ。




