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004 儚げ神官と犬系錬金術師


「な、なあ、今のってなんだと思う?」


 夜陰は幽霊でも見たような顔をして聞いてくる。



「僕に聞かれても…… 夜陰のほうが詳しいでしょ、こういうの。」


 何度も言うが、俺はゲームについて詳しくない。



「俺はッ! お前が起こす異常現象に耐性が無いんだよッ!」



 ん?


 俺は異常現象を起こした記憶はない、というか起こせるはずがない。


 あれ、そもそもこれは異常現象だったのか。


「僕には異常現象を起こす力なんてないし、これはゲームの仕様だろ、でしょう?」


 あ、口調をミスった。


 バレてる気配がする相手だからか、どうも気が緩んでしまうみたいだ。


「あるだろッ、むしろなんでそれで、ないとか言っちゃうわけ?

あと、ゲーム内でくらい、その紳士ロールプレイ辞めたらいいと思う。

なんかこう、メッキが剥がれてる感あるぞ、それ。」



 しんしろーるぷれい……



 そんな風に思われてたのか。



 ものすごく恥ずかしい。




 バレてない相手に猫かぶるのはいいんだが、全部バレてる相手にやるのは、なぜか恥ずかしい。



 ところで重要な問題なんだが…… 俺、現実でもメッキ剥がれてんの!?



 というか、いつから気づいてたの!?



 恥ずかしいし、焦るし、で逃げ出したくなったが、とりあえず疑問を解消すべく、質問をしてみる。




「メッキ……剥がれてる?」



 どうしてそんな質問になった!?


 もっとあるだろう、マシな質問の仕方が。



「最近ボロが出るなって思ってただけだって。

ちょっ、そんな深刻な顔しないでってば。」



 前から知ってた風じゃん。



 「自分で言うのもアレだけどさ、俺さ、結構うまくやれてたと思うんだ。

いつから紳士ロールプレイとか思ってたの? 恥ずかしくて死んじゃうまぢ無理。」


 口調が定まらず、お前誰だよって話し方になっている自覚はある。


 とりあえず、この羞恥心をどうにかしたい。



「人の根本的な性格ってそうそう変わんねーだろ。

やんちゃしてた時を知ってるからさぁ、変だなっては思ってたけど、俺的にはどっちでも良かったしスルーしてた。

でも、掃除押し付けられたとき、裏で舌打ちしたの見ちゃって流石に気づいちゃった。」


 夜陰はにやにやしながらこっちを見てくる。



「気づかれるの地雷なんだー?

そんなに恥ずかしがるとは思わなかったぁー。」



 明らかに煽っている。


 羞恥心?


 どうでもよくなってきた。


 それより、今はこいつがムカつく。


「別に良いだろ、猫かぶってたって。

こちとら、何もしなかったら残念イケメンなんだよッ!

ハイスペックイケメンは黙ってろ。」



 今度は目を見開いてから、笑顔になる。



「こっちの壱月が、俺の知ってる壱月だ。」



 いや知らねぇよ。


 怖えよ、俺の何を知ってるんだよ。


 そんなに俺のことを知らないと思うのだが、どうも弱みを握られている気がしてならない。



 でもまあ、素の俺に笑顔を向けてくるのは、悪い気はしない。


 むしろ、ちょっとあったかい気持ちになる。

 

 が、それとこれとは別の話だ。



「俺はこの、紳士ロールプレイ…… を、好きでやってるんだ。ムカつくことがあっても怒鳴れないのはしんどいけど、何気に楽しんでんの。

だからこれを辞める気はない。」



 そうこれは譲れないのだ。


 役者になりたい訳じゃないけれど、演じることは大好きだ。


 朝陽が、昔の悪ガキ壱月でいることを望んだとしても、俺は何かを演じてる自分が好きだ。




「せめてゲームの中でだけでm「断る!ゲームの中では儚げ神官ロールプレイをするつもりなんだッ!」」


 堂々と恥ずかしいことを言っている自覚はあるが、もうこいつ相手にはどうでもいいや。




「そのロールプレイする相手って俺も含まれるわけ?」


 妙な事を聞いてくる奴だな。


「いや、お前に対して演じるのは、恥ずかしすぎて無理だ。にやにやしてるお前の面が頭に浮かぶ。」


 何やら考え込む素振りをみせる夜陰。



「ってことは、俺以外の人に対してロールプレイするってことだな?

ってことは、他の人にバレなきゃロールプレイから外れたことしちまっても大丈夫ってわけで。

ってことは、一緒に遊べるな!?」


 今度は早口でまくし立てる夜陰。


 こいつの思考回路は一体どうなってるんだ。



ロールプレイをする=一緒に遊ばない



 こんな式があいつの頭んなかにあったってことだよな。



 勘違いされているような気がする。


「そもそも一緒に遊ぶって約束だろ? それを違えるつもりはない。

もちろんロールプレイ上都合が悪いことは周りにバレたくねぇが、そこは上手くやるつもりだ。」


 またしても考え込む素振りをみせる夜陰。



 なに、俺って平気で約束破る人間に見えてんの?


「じゃあさ、俺も混ぜてよ。

そのロールプレイとやらに。」



 は?


 こいつはどうしてこうも斜め上の事ばかり言うのだろうか。




 べつに断る理由もないが、一緒にやるからにはどんな役を演じるつもりか、気になるところではある。


「さっきも言ったが、俺は儚げ美形神官を目指すつもり。

夜陰は何をやるつもりなんだ?」


「うーん、皆に優しい犬系錬金術師?」


「演じるもなにも、そのまんまじゃねーか!」


 思わずつっこんでしまった。


「ふーん、俺のことそんなふうに思ってたんだ。」


 え、違うのか?



「俺が学校で友達と一緒にいるところ、見たことある?」


 あれ、言われて見ればほとんど無いような。



「俺は気に入った奴としか仲良くしたくねーの。

だから優しくすんのは気に入った奴だけ。

うちの学校だったら、一年の青峰、物理の北条センセー、教頭、あとはもちろん壱月くん。」


 俺、気に入られてたんだ。


「当たり障りなく仲良くしてそうな印象だったんだけど、違うのか?」


「必要最低限しか話さなかったりするし、仲良くはしてない。

にこにこはしてるけどな。」


 何それ、知らないよ。


 人懐っこくて憎めない奴ってイメージだったんだが……


「細かいことは気にしないことにする。

ロールプレイやりながら、ゲームしよう。」


 これ以上話すと俺の中での夜陰のイメージが崩れてしまいそうだったため、無理やり話を終わらせた。



 それに、こんな雑談ではなく、普通にゲームをやりたい。


 誰かと一緒にやるゲームは初めてであるため、不本意ながら、楽しみではあるのだ。




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― 新着の感想 ―
紳士だけど親友の前では残念になるイケメンと無口だけど親友の前ではワンコになるイケメンかこれは腐海にいるお姉様方が歓喜するね
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